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駐留軍との接触

 

 向かってきた騎馬は、ジューネスティーン達の元にくると、騎馬から降りて挨拶をしてきた。


 先頭の高級士官らしき兵士が、ジューネスティーン達の前に出ると、後ろに2人の兵士が並び、残りの兵士が、馬の手綱を両手で持って控えていた。


 何事かとユーリカリアとジューネスティーンは、その軍人に対峙した。


「私は、ツカ辺境伯領駐留軍のツカ大隊、隊長のツカ・ベンミン・モンレムン少佐だ。 この度は、ツノネズミリスの討伐の為に、帝都から遠征してもらい感謝する。」


 ジューネスティーンとユーリカリアは、顔を見合わせる。


 まさか、隊長が出向いて来るとは思わなかったので、慌てて、ユーリカリアが、返事をする。


「隊長自らお越しいただき、恐縮いたします。 私は、ユーリカリア。 帝都で活動している冒険者パーティーのリーダーをしてます。 隣が、今回、合同で狩をする事になったパーティーリーダーのジューネスティーンです。」


 すると、ツカ少佐は、笑顔を向ける。


「今回は、ツノネズミリスの討伐に参加してくれて、ありがとう。」


 ツカ少佐は、2人に感謝を述べる。


 その表情には、笑顔があったので、ジューネスティーンとユーリカリアはホッとしたような表情をする。


 そんな2人の様子を見ながら、ツカ少佐は、状況を話し出した。


「それで、当方の駐留軍でも対応しているのだが、今回は数が多いのでな、魔法部隊の居ない我が、ツカ大隊程度の戦力では、大した効果が出せてないのが現状だ。 だが、被害が広がるのを、何とかギリギリで食い止めてはいるのだが、そろそろ限界に来ている。 いつ防衛ラインを食い破られて、麓になだれ込まれてもおかしく無い状況なのだよ。」


 ジューネスティーンは、随分と不利な状況を、あっさりと説明する人だと思ったようだ。


「それで、ギルドからの報告では、君達が、範囲攻撃魔法を使って、ツノネズミリスを一網打尽にするというので、我が軍も協力体制を取らせてもらおうと思って、こちらに来たのだよ。」


 ジューネスティーンは、帝国軍の指揮下に組み込まれるかと思っていたのだが、協力と言われて、少し驚いている。


(帝国軍は、何で、そんな低姿勢で接してくるの? ・・・。 もう、プライドとか言っている場合じゃない程に、追い込まれているのか? )


 ジューネスティーンは、少し警戒しており、口をつぐんでいるので、ユーリカリアがツカ少佐に答える。


「それは、わざわざ、ありがとうございます。」


 ユーリカリアは、警戒しつつもツカ少佐に答えた。


「すみません。 ツカ少佐は、こちらの領主様でしょうか? 」


 ジューネスティーンが、ツカ少佐に聞くと、ツカ少佐は、やっぱり聞かれるのかといった表情をすると、気さくに答えてくれた。


「いや、辺境伯は、私の父だ。 この土地は、昔から、領主の子供が駐留軍を任されている。 だが、実情は、東の森の魔物に対処するから、こっちは、こっちでなんとかしろって事だ。 意外に帝国軍は、外から見るより火の車なのでな、領主が兼任とか、その家族の誰かが、任されるなんて事は、よくある事さ。」


「そうでしたか。」


 ツカ少佐の話から、帝国軍も内情は大変なのだと聞くと、どことなくではあるが、親近感を感じている様子を、ジューネスティーンもユーリカリアも思ったようだ。


「駐留軍と言っても大隊だからな。 大した兵力じゃ無いんだ。 だから、ここの駐留軍だけだと、流石に、ツノネズミリスの大群には、対処に苦慮しているのだ。 我々だけの軍では、被害を拡大しないようにするだけで精一杯なのでな。 諸君らのような魔法が使える軍人は、中央の魔導士団に持っていかれるので、剣や弓の腕が良くても、大した戦果は出せてないのだよ。」


 ツカ大隊の、大凡の状況をツカ少佐が話してくれた。


「それで、殲滅には君達が頼りになる。 それで、我が軍の方で、連携を取る必要があるのなら、手伝わせてもらおうと思って、軍との連絡要員を連れて来たのだよ。」


 ジューネスティーンは、駐留軍からは、むしろ煙たがれるのかと思っていたので、ツカ少佐の対応に内心ホッとしている。


「そうでしたか、それは助かります。」


 ユーリカリアにしても、ジューネスティーンにしても、協力を得られるのなら、それに越した事はない。


 だが、ジューネスティーンは、さっきの駐留軍に魔法を使える軍人が居ないということで、今回の討伐には、軍の力を借りることはできないと考えていた。


「自分達は、ツノネズミリスについて正確な情報を持っていないので、数とか生息している範囲とかを教えてもらえないでしょうか? 」


「ああ、構わない。 できれば、その前に、君達はどのような作戦で討伐を考えているのだろうか。 差し支えなければ、教えてもらえないだろうか? 」


 ユーリカリアの問いかけに、ツカ少佐が質問で返したので、少し困ってしまったユーリカリアは、ツカ少佐の問いに、どうしたものかと思って、ジューネスティーンの顔を覗き込む。


 ツカ少佐は、そのユーリカリアの態度を見て、ジューネスティーンが、この作戦を考えていると判断したようだ。


 ジューネスティーンは、ユーリカリアの視線を受けてしまったので、作戦について、ツカ少佐に説明しようと思ったようだ。


「わかりました。 それじゃあ、こちらへ。」


 ジューネスティーンは、地面に作った模型をツカ少佐に見えるように動くと、その模型のところを指し示す。


(こいつら、こんなものを作って作戦を立てていたのか。 地図より立体的に作られているなら、作戦の立案も楽になるが、普通は地図でやるだろ。)


 ツカ少佐は、模型を見て顔を硬らせていた。




 ツカ少佐は、ジューネスティーンの指し示す方を見ると、山の模型を覗き込む。


 そこにツカ少佐が寄って来ると後ろに居た2人も後に続いて、その模型を覗き込む。


「ああ、すみません。 説明の前にメンバー達に作業に入らせてもよろしいでしょうか? 」


「ああ、構わない。」


(だが、これだけ大掛かりだと、かなり時間がかかりそうだな。 少しでも作業を進めておいて、日数を稼ぎたいってことか。)


 ツカ少佐の了解を得ると、ジューネスティーンとユーリカリアは、メンバー達に作業を始めるように指示を出す。


(この陣地を作る方法か。 本部から着た連中の為にも、作業の内容を見させておくか。)


「ああ、すまない。 うちの連中に作業の様子を見せてはもらえないだろうか? 」


「ええ、構いませんよ。 でも、馬は、どうしますか? 」


 残った3人が2頭ずつ馬の手綱を持っているのを見てジューネスティーンが尋ねる。


「ああ、馬止めが有ればありがたいな。」


「ちょっと待ってくださいね。」


 そう言うとジューネスティーンは、馬の近くに行くと、アメルーミラの居る馬車の傍に馬と手綱を持つ兵士を誘導するのだった。


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