落とし穴の中の仕掛け
ハッキリと決まってないのなら、話をする事でシュレイノリアの思考が回ってくることを、ジューネスティーンは、知っているのだ。
何か、新しい事を行おうとする際は、その内容の話をやり取りする事で、徐々に構築されて、完成したときのイメージが出来やすい。
自分では完璧だと思っていても、思考の中でイメージした物は、誰かに話してみると、思わぬ欠陥が有ったりするので、ジューネスティーンは、シュレイノリアの反応を見つつ、目的の魔法紋について話を進めていたのだ。
「遅延式と言ってたが、そのトリガーになる要素はなんだ? 」
シュレイノリアは、一瞬、言葉に詰まったようだが、すぐに、話だす。
「トリガーは何でも良い。 地面にかかる重さでも、魔素の量でも、魔物がある程度落ちたところで発動するように設定するだけだ。」
落とし穴の中の仕掛けのトリガーについても、シュレイノリアは、考えていないのだろうから、何種類ものトリガーを言ってきたのだ。
その案を言葉にすることで、シュレイノリアの思考の整理を、ジューネスティーンはさせているのだ。
「爆発が発生したら、魔物は、その爆発を避けるよね。」
一瞬、シュレイノリアは、言葉に詰まった。
ジューネスティーンの指摘を、どうやって掻い潜って正解に導くのか、相手に表情を読み取られないようにシュレイノリアは答える。
「アトラクトでの誘き寄せなら、それは考えなくて良い。 ただ、囮を使うなら、そうなる可能性が高い。 だが、囮を使ったとしても、半円状に配置してある溝の何処かに落ちるだけだ。」
シュレイノリアがいう通りだとジューネスティーンも思う。
半円状に5m四方の落とし穴を設置して、その半円は、何本もあるなら、1箇所避けたとしても、次の落とし穴に向かう事になる。
誘き寄せた時の問題点は、ほぼ、クリアーできるとジューネスティーンは考えると、次の問題点を指摘する。
「なあ、シュレ、魔法紋が一度発動したら、その後は、どうなる? 」
シュレイノリアは、やっぱり聞いてきたなと、いった表情をする。
「発動したら、終わりだと、言わせたいのか? 」
ジューネスティーンの質問に、シュレイノリアは、自信ありげに、質問で答えた。
そんなシュレイノリアにジューネスティーンは、正論を貫くことで、シュレイノリアの考えをまとめさせているのだ。
「一度、爆発系の魔法を発動させたら、爆発した時に飛び散った破片とかで、次の魔法紋も損傷を受けるだろう。 損傷を受けた魔法紋がもう一度発動するのか? 」
魔法紋による魔法は、魔法紋が有効であれば発動するが、魔法紋に損傷をきたしてしまえば発動できなくなる。
爆発のような魔法を使った際は、その爆発の影響で、魔法紋が損傷してしまう可能性が高い。
風を送るとか、水を集めるような魔法紋なら、魔法紋表面に傷が付いたりはしないので、長期間使う事が可能だが、爆発、炎、雷のような魔法となると、魔法紋の紋ように影響を及ぼす事が多いので、このような魔法を使う魔法紋は、大半が使い捨てになってしまうものなのだ。
魔法属性の違いから、そのような影響がある事をジューネスティーンが指摘した。
「ああ、言われた通り、一度で終わりだ。」
ジューネスティーンは、シュレイノリアの答えにガッカリする。
何か、対策を施して、何度も爆発を発生させる手段を見つけたのかと思っていたのだが、シュレイノリアの答えは、そうでは無かった。
「おい、それじゃあ、同じ魔法紋から何度も魔法が放てないって事じゃないか。」
そう言うとシュレイノリアは、右手を前に出して、人差し指を立てると、その人差し指を左右に振る。
「一つの魔法紋は、1回の魔法で終わるなら、幾つもの魔法紋を仕込んでおけば良い。 遅延式に働く魔法紋に順番を持たせて、魔法発動が終わった後、また、罠にハマった魔物の数を検知して発動させる。 魔法紋の上に石板を敷いて、発動前の魔法紋をガードするとか考えておけば、描いた魔法紋の数だけ爆発を起こせる。」
ジューネスティーンは、シュレイノリアに言われて、シュレイノリアの作る魔法紋を考える。
彼女は、魔法を使って魔法紋を描くので、魔法紋を描く時間が圧倒的に早く、通常のように人の手で描くのでは無いので、サイズも極端に小さなものを描くことができる。
それなら、魔法紋をいくつも描いたとしても時間が掛からない。
それに魔法紋のガードの為に石板を魔法紋の上に敷くなら、爆発で跳ね上げられるだけではなく石板が破壊されて四方に飛び散る事になるので、爆発の威力は倍増する。
「爆発の魔法紋に魔力を流す為に、魔物の検知用の魔法紋を描いておく。 その魔法紋が、爆発の魔法紋を発動させる。 爆発の魔法紋は、単純な魔法紋で構わない。 制御プログラムの魔法紋が重要な役目をする。」
今の話を聞いてジューネスティーンは、シュレイノリアの考えが見えてきたようだ。
ただ、周りは、2人の話についていける様子は無く、ただ、2人が話すのを聞いていた。




