ルーミラの知っていた魔法の話
アメルーミラが、アトラクトを知っているような話を、口走ったのは、思わぬところで反応があった。
いや、魔法について貪欲に覚えようとしているウィルリーンが、今のシュレイノリアとジューネスティーンの話の中に入ってこなかった事自体が、異常な事だったのだ。
ウィルリーンは、スーッと動いて、アメルーミラのそばに移動した。
「ルーミラ、今のアトラクトと言う魔法を見た事があるのか? 」
ウィルリーンが、アメルーミラに声をかける。
アメルーミラは、しまったとお思った様子で、ウィルリーンを見ると、ウィルリーンは、真剣な表情で、アメルーミラをみていた。
(これ、絶対に逃げられないパターンよね。)
ウィルリーンの表情から、アメルーミラは、その時の様子を、一部始終、話さなければならないと感じたようだ。
アメルーミラの一言が、ウィルリーンに聞こえてしまった事によって、自分の選択肢は無くなったと思ったようだ。
ウィルリーンは、アメルーミラの腕を掴んで、ジューネスティーン達の輪から離れる。
少し移動すると、ウィルリーンは、アメルーミラに向き合うようにして、真剣な表情をアメルーミラに向けた。
ウィルリーンもアトラクトの魔法がどんなものか知りたかったのだが、それを、あの輪の中で、ジューネスティーンやシュレイノリアに聞く雰囲気では無かった。
ウィルリーンは、アメルーミラが知っているのなら、今回の戦闘に関係のないアメルーミラならので、あの輪の中で話を切り出せずに居たのだ。
そんな時にアメルーミラの発言だったので、彼女になら、聞いても良いかと思って、輪から外してしまったのだ。
「すまないが、そのアトラクトという魔法はどんなものなのか教えてはもらえないだろうか? 」
そのウィルリーンの真剣な表情を見ると、アメルーミラは断れそうも無いと思うと話し始めた。
「あれは、魔物を誘き寄せる魔法だと思います。 魔物が突然シュレさんに向かって走り出すんです。」
そう言って、自分が、アトラクトをシュレイノリアが使った時のことをウィルリーンに話し始めた。
自分が、剣の使い方をレィオーンパードに教えてもらう時に、シュレイノリアが、アトラクとを使って誘き寄せたこと、それをレィオーンパードが、剣を使って倒したことを、アメルーミラは、ウィルリーンに話した。
その話をウィルリーンは、真剣に聞いていた。
「その時は、どの位の距離の魔物だったのだ。」
「うーん、100mも無っかったと思います。」
アメルーミラは、その時の事を思い出しつつ答える。
「ああ、そう言えば、その時は、メンバーの皆さんは、全方位を警戒してましたよ。 どこまで反応するのか分からないとかで、帝都の堀の前だったから、三方向に警戒をしていました。 後、1匹だけを引っ張れるかとかを練習してました。」
ウィルリーンは、アメルーミラの話から、魔物を誘き寄せる魔法をシュレイノリアが持っている事を知ると、顔を顰めている。
それは、ウィルリーンには、知らない魔法なのだ。
「魔物を誘き寄せる魔法というわけか。 だが、今の話だと、一個体だけを引き寄せようとしても、上手くいかなかったが、練習を繰り返し行った。 そんなところなのか。 それでどうなったんだ。」
ウィルリーンは、今の話を聞いて、自分の思考をフル回転して話の状況を把握しているのだ。
「その後は、私、レオンさんと2人で、私の剣の訓練をしていたので、シュレさん達とは別行動をしていたんです。 あの後、1匹の魔物だけを引けるようになったかは、よく分からないのです。」
(シュレの習得力の高さは、計り知れないものがある。 あれだけの魔法を簡単に作り出せてしまうなら、もう、習得していてもおかしくはないのかもしれないな。)
ウィルリーンは、アメルーミラの話を聞きつつ、シュレイノリアを見る。
「ああ、ルーミラ。 ありがとう。 大変参考になったよ。 ただ、その魔物を誘き寄せる魔法は、今の説明だけでは使えそうも無い、この機会にシュレに教えてもらう事にするよ。」
ウィルリーンは、アトラクトをアメルーミラから聞き出して、自分もできるようになったなんて事になったら、アメルーミラがジューネスティーンやシュレイノリアに悪い事をしたように思っては申し訳ないと思ったのだろう。
そんなアメルーミラに気を遣った。
「ええ、お役に立てて良かったです。」
アメルーミラは、笑顔を見せた。




