表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1224/1356

アトラクト

 

 ジューネスティーンは、この仕掛けで5千匹のツノネズミリスとなら、勝負になると考えていた。


 だが、最悪の場合を想定した場合、間違って6万匹全部や3万匹のツノネズミリスが囮に反応してしまった場合の事を考える。


 囮を使って誘き寄せるのだから、2kmを走る間に魔物の先頭から、最後尾までの距離は引き伸ばされる事は考えられる。


 ただ、2kmとなったとしても、走っている時間を考えれれば、4分ほどの全力疾走をツノネズミリスに強いるのだから、個体差によっては、途中で脱落するツノネズミリスも出てくるだろう。


 途中で脱落したツノネズミリスが、どのような行動を取るのか気がかりになる。


 1回目に脱落したツノネズミリスが、その場に残っていた場合は、その残ったツノネズミリスの場所を2回目の囮が同じルートを辿るのは、問題が有る。


 残ったツノネズミリスが、2回目の囮に気が付き、前方から襲われる可能性を考えると、囮のリスクが高い。


 組織的な場合なら、脱落しても後を追うか、元の場所に戻るかするだろうが、ツノネズミリスは、個が集まっただけで、個がそれぞれ本能で動いているのだ。


 脱落したツノネズミリスの動きがどうなるか不安が残る。




 できれば、一度に全部のツノネズミリスを引き寄せて殲滅し、その後に散らばった魔物を個々に倒していくのが理想なのだが、数が多いツノネズミリスに対して、次の狩の為に進路上のツノネズミリスを掃討して、囮の進路を確保するというのは、作戦の活動時間を延ばす事になってしまう。


 それは、日に日に増えるツノネズミリスと対峙している今の状況では、良い方法とは言えない。




 そうなると、一度に誘き寄せて、罠を使って、半数以上を罠にはめて倒してしまう事が理想となる。


(ちゃんと計算して魔法を使う回数を少なくした方が良さそうだな。)


「ちょっと計算してみるから、少し待ってくれないか。」


「計算って、どういう事なの? 」


 アンジュリーンが聞く。


「ああ、この落とし穴にどれだけの魔物が落とせるかなんだ。 それで、堀の幅もある程度決められるはずだから、簡単に計算させてくれないか。」


「わかったわ。」


 ジューネスティーンは、断りを入れると計算に入る。




 ジューネスティーンは、模型を見ながら険しい顔をすると何やら呟き出す。


「防衛ラインとしての堀を三重に敷くと、一度に落とせる魔物の数はどうなるか。」


 ジューネスティーンは、おおよその計算をする。


「魔物の大きさが、60cm四方と考えれば、0.36㎡になるとして、1㎡の中に3匹の魔物になるのか。 両サイドからの塀が、200mとすると、円周率を3として考えれば、1200mの4分の1で扇の円周は300m位だから、そのラインの前後に同じ堀を掘ったら、平均は、その300mになるって事。 堀の幅が5mだから、1500㎡になって、4500匹を一度に葬れるが、利用率を7割と考えると、・・・。」


(4500を5000として考えると、3500だから、更にそこから150を引くのか。)


「3150匹って事か。 それが三重に敷かれているから、約9000匹になるのか。 結構、一度に落とせる魔物の数が多いな。 6万匹のうちの15%をこの溝で落とすことができれば、残り5万1千匹になるのか。 それだと2万匹程度を引き寄せても倒せる可能性が出てきたって事? 」


 ジューネスティーンは、思った以上に溝に落とせるツノネズミリスの数が多い事で、少し欲が出てきたようだ。


「これ、一度の引きで全部引っ張ってきて、この罠で一網打尽にできないかな。」


 ジューネスティーンは、とんでもない事を言い出してきた。


「にいちゃん。 6万匹の魔物を引っ張るのかよ。」


 ジューネスティーンの言葉にレィオーンパードが反応した。


 6万匹を一度に引っ張るのは、レィオーンパードどアリアリーシャの仕事になる。


 6万匹ともなれば、流石に恐ろしいものがあるのだろう、ちょっと引っかかるような言い方をレィオーンパードが言う。


「そうですぅ。 私もそんな多い魔物となったら、ちょっと、怖いですぅ。 回り込まれて前に出られたら嫌ですぅ。」


 アリアリーシャも、乗り気では無いようだ。


「そうなんだよな。 1㎡辺り3匹居たとしても2万平方mなら、密集してても500m×400mだからな。 最低でも1km四方、いや2km四方の範囲に居ると考えた方が良いのか。」


 すると、シュレイノリアが声をかけてきた。


「アトラクトを使ってみてはどうだ。」


 そのシュレイノリアの話を聞いて、ユーリカリア達は、何の話なのかと聞いていたのだが、ジューネスティーン達は、それぞれの思いがあり、人によって、違う反応をしていた。




 アトラクとと聞いて、レィオーンパードは、納得したような顔をするのだが、ジューネスティーンとアンジュリーン、それにアリアリーシャは、ゾッとした顔をする。


 以前、帝都周辺でシュレイノリアが、先走って使った時に、四方から集まってきた魔物のことを思い出したようだ。


「ああ、アトラクトでここに引っ張るのか。 だったら、囮は要らないね。」


 レィオーンパードが呑気にシュレイノリアに答えるのだが、ジューネスティーンは、真剣な顔でシュレイノリアに聞く。


「シュレ、アトラクとの有効範囲はどの位になる? 最近は、指向性も良くなったし、限定的に引っ張ることもできたはずだから、指向性は、いいとしても、2km先、最後尾となれば、3・4km先になると思うけど、それをまとめて引っ張れるのかなぁ。」


 シュレイノリアは、ジューネスティーンに指摘されて、どこまでアトラクトが届くのか検証してなかったことに気がついた。


「そう言えば、どこまで届くか、試して無かった。 だが、前に試した時は、1kmは反応が有った。」


 それを聞いて、ジューネスティーンは、少しがっかりする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ