ヲンムンの情報と観察したパワードスーツの考察
ヲンムン達は、ラウンジの個室とは反対側の窓際の席に通されていた。
女子2人が並んで座ったので、ヲンムンは、反対側に座ったのだ。
ちょうど、ヲンムンが個室側を向く席だったので、ジューネスティーン達が個室から出てきたところを目撃することができたのだ。
何事もなく、ジューネスティーン達が、レストランから出て行くと、ヲンムンは姿勢を元に戻す。
その姿を見て、コリンもメイミンも、ジューネスティーン達が、レストランから出て行ったと判断すると、緊張を解いた。
「1人、メンバー達とは、別の女が居ました。 あれは確か、金糸雀亭を使っているルイネレーヌだ。 あの女も、こっちにきているのか。」
コリンとメイミンは、初めて聞く名前だと判断すると、コリンがヲンムンに聞く。
「そのルイネレーヌとは、何者だ。」
ヲンムンは、顔を少し顰めるが、聞かれたことには答える。
「一応、冒険者となっていますが、それは表向きかと思います。 お二方は、ファールイという奴隷商が逮捕された話をご存知ですか? 」
コリンとメイミンは、お互いの顔を見る。
2人とも詳しい話は知らないようだと、ヲンムンは判断すると、ファールイの話をすることにしたようだ。
「少し前の事ですが、ジューネスティーンのパーティーから3人がギルドに行った時の話です。 自分は、二手に分かれた時は、ジューネスティーンを監視する様に言われてましたから、エルフの男女2人と魔法職の女の行動は、追わずに、金糸雀亭に残ったジューネスティーンの動向を追っていたのです。」
以前の記憶を思い出す様にヲンムンは話し始めた。
「その3人がギルドに向かった時に、ファールイの実行部隊が、エルフの男女と魔法職の女の3人を誘拐しようとしていたのですが、その時、それを阻止した4人が居たのです。 丁度、ギルドから金糸雀亭に向かっていた時でしたので、その一部始終を見させてもらえました。」
そう言うと、ヲンムンは、その時の手口を、コリンとメイミンに話をする。
一瞬で、誘拐用の馬車の中に2人が入ると、直ぐに出てきた。
中に居たのは、3人だったのだが、2人の刺客だけで、一瞬のうちに殺して直ぐに出てきた事になる。
かなりの手練れの仕業でなければ、そんな短時間で3人を殺すことはできない。
その話をヲンムンは、コリンとメイミンに話した。
「後から報告を確認したところ、そのルイネレーヌのメンバーが、ジューネスティーン達のメンバーの誘拐を、阻止したらしいとありました。」
コリンも、今のヲンムンの話を聞いて、相当な手練れだと分かると、顔を顰めて質問する。
「では、そのルイネレーヌとは、暗殺が本業なのか? 」
ヲンムンは、微妙な表情をする。
ルイネレーヌについては、ヲンムンの調査対象から外れるので、時々、情報部に行った時に確認した報告書の内容程度しか知らなかったのだ。
「そうとは言い切れないと思います。 何らかの情報機関の可能性もありそうなのですが、情報部の方でも詳しい情報は掴んでないようです。」
「少尉、私たちは、そんな秘密の多い連中を追いかけているのですか。」
メイミンは、不安そうにコリンに尋ねる。
「ああ、そうらしいな。 それにメイミン、お前を私たちに付ける程のパーティーなのだからな。 こんな依頼に大袈裟だと思ったが、上層部もかなり本腰を入れて、あのパーティーを調べている様だな。」
アンミンとメイミンは、双子の姉妹であり、2人は遠話が可能な、魔導士部隊でも貴重な存在である。
通常任務の様な、パーティーの監視に通信士を付けるなんて事は有り得ない話なのだ。
「貴重な通信士を、あのパーティーの監視に付けたのだから、上層部も必死なのかもしれない。」
「そうですね。 昨日のフルメタルアーマーは、地面を滑るように走ってましたし、それに、一度降りるところを見ましたが、あれ程簡単に外したり付けたりする事ができる装備なんて始めて見ました。」
メイミンは、昨日のパワードスーツの事を思い出して話した。
「ああ、それに、降りた後でもあのフルメタルアーマーは、立った状態でいた。 どんな構造になっているのか検討もつかない。」
コリンもその時の様子を思い出して口に出した。
「あのフルメタルアーマーについてが、自分の一番の調査対象になります。」
ヲンムンが2人の話に割り込んできた。
今までなら、2人は嫌そうな顔で、話に入るなといった顔をするのだが、今回は、そんな事もなくヲンムンの話に興味を示した。
「自分が、彼らの監視に入るときに言われたのが、リーダーであるジューネスティーンのフルメタルアーマーについて調査をすること、それが第一目標でした。 次が、彼らの魔法能力について、後は、個々の能力の査定を行うことでした。」
「なるほど、ファールイの逮捕の時に動かなかったのは、フルメタルアーマーの事があったからなのか。」
コリンは、さっきの話が繋がった事を声に出していた。
「だが、変だな。 昨日、フルメタルアーマーは6人全員が使っていた。」
「その通りです。 6人とも外観は違いましたが、同じ様に地面を滑る様に走ってましたし、脱ぐ時には、どれも、背中から出ていましたから、基本構造や一般性能は、ほぼ同じと言って良いでしょう。」
3人は、ジューネスティーン達の訓練を観察していた時のことを、お互いに話し出した。




