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剣 〜柄(つか) 2〜


 ジューネスティーンは、シュレイノリアが使う時の紐の本数を聞いてきたことで考えだしたが、直ぐに壁にぶつかったのか、また、面白くなさそうな表情になった。


「なあ、本数を増やしたからって、1本切れたら、その紐は解けてしまうだろう。だから、外れるのを遅らせるだけじゃないのか?」


 シュレイノリアは、ジューネスティーンが、まだ、理解できてないのかといった表情をした。


「ああ、ただ、巻くだけだったら、そうなるだろうな。だが、巻き方によっては、巻きつけた紐は1本切れても完全に解けることはないはずだ」


 シュレイノリアは、更にヒントを出したのだが、ジューネスティーンは、まだ、どんな方法なのか理解できずにいるようだ。


 考えてはいるのだが、巻き方について思い当たるものが無い、その様子を見て、シュレイノリアは手に持っていたものを作業台に置いた。


 それは、糸を編み込んだ、直径2ミリ程の長い紐だった。


 そして、その紐は、1本だけでなく、数本用意されていた。


 ジューネスティーンは、作業台の上に置かれた紐を見て何か閃いたような表情をすると、シュレイノリアはホッとした。


「なんだ、もう、ほとんど理解できているんじゃん」


 そして、シュレイノリアは黒板の方行くので、その後を追うように視線だけ向けた。


 黒板では、シュレイノリアが、何本もの線を描いていた。


 それは、上に刀身と思える縦の線を3本描くと、その下にハバキと鍔と思える絵を描き、その下に細い線を横に描いていたことから、持ってきた紐を使って柄を巻く方法を描いていると直ぐに理解できた。


 剣を鎬側から描いている事も分かる。


 そして、紐は8本を並べて巻いて目釘や目貫の上の辺りで、ひっくり返すようにして、180度のねじれを入れた。


 シュレイノリアが目貫の辺りを描き出すと、ジューネスティーンは真剣な表情になり、その絵を見て少し悔しそうな表情をした。


「シュレ。もう分かった。お前の考えている方法で巻いてみる」


 そこまで言うとシュレイノリアは、黒板に柄に紐を巻いている絵を途中で止めた。


 目的は、柄の上を巻く紐の様子を理解させるだけなので理解できたのなら、それ以上、描く必要は無くなった事を意味する。


 シュレイノリアは、安心した表情をジューネスティーンに向けた。


「なら、用意した紐を使ってくれ。多分上手くいくと思う」


 そう言うと、作業台の上に置いた細い紐を指差した。


 ジューネスティーンは、自分の座っている作業台の脇に置いてある紐を見て、やっぱりそうだったかというような表情をすると、また、シュレイノリアを見た。


「ありがとう、シュレ。シュレの言うとおりにさせてもらうよ」


 その表情には、目貫の固定が紐によって出来ると確信したようだった。


 シュレイノリアも、ジューネスティーンに自分の考えている事が伝わったので嬉しそうにした。




 ジューネスティーンは、柄を剣から外し、柄に紐を巻く準備を始め、紐を巻くためのに最初の固定箇所の加工を柄に施そうと思ったようだ。


 ジューネスティーンは8本の紐を結ぶと、その結び目を柄の中にしまい込む方法を考えだした。


 柄に紐の結び目を当て紐の固定をどうするか考え始めるが、直ぐに方法は思い付いた様子で加工に入った。


 紐は、柄から綺麗に出せるように、端の方に加工を施し始め結び目が柄の中で固定できるように施し、結んだ8本の紐は柄と鍔の隙間から出るようにした。


 そして、加工した柄を剣の茎に当て目釘と目貫で固定すると紐を柄に巻き始めた。


 紐は、締め付けるように巻いて目貫の上にくると、ぐるりと半回転させて、また、締め付けるように巻いた。


 それを繰り返して柄尻までくると、柄尻に開けてある穴に4本の紐を通し残りの4本は半周させてから穴に通すと柄尻の上で4本ずつの紐を縛った。


 柄尻から柄に巻いた紐が僅かに垂れ下がるようになったのを見て、ジューネスティーンは握り具合を確認した。


「うん。いい感じだよ。なんだか、手に馴染むようだ」


 感想を述べるのだが、そこにシュレイノリアは居なかった。


 ジューネスティーンが作業に集中している間にシュレイノリアは、鍛治工房を出て行ってしまっていた。


 ジューネスティーンは、作業に集中していた事もあり、その事に気が付かなかった。




 シュレイノリアに、感想を伝え損ねたが、柄が出来上がれば、剣として使う事は可能だ。


 しかし、剣は鞘に入って始めて剣となる。


 鞘無くして剣とは言い難い。


 抜き身の剣を持ち歩く訳にはいかないので鞘が必要になる。


 ジューネスティーンは、剣をおさめる鞘の製作に入る事にした。




 鞘を作るための板を2枚用意しておいたので、ジューネスティーンは、完成した剣を板の上に置き剣の外側に白墨で剣の輪郭を描くと、その輪郭に沿って剣を引き抜いた時の動きをし、鞘から抜く時の事を考えつつ内側の形を決めていった。


 削る位置を決める際、ジューネスティーンは、少し力を入れて剣を抑えていたので板に鎬の跡が残った。


「ああ、この鎬の痕を一番深くなるように彫ればいいのか」


 掘る位置が決まったので溝を彫り始めた。


 鎬の位置を中心に削ぐように削っていき、印の部分まで削ると剣を当てて確認を行い、深さの足りない部分を少し削っては剣を当てて確認し、そして、全体の深さを均等になるようにすると鍔周りの加工をしようと彫刻刀を当てようとして手が止まった。


「ここは、鞘を勘合した後に最終的な調整を兼ねて加工した方がいいのか」


 そう呟くと、加工した板と加工前の板を手に取って見比べた。


「内側の形を揃えるのはどうしようか」


 鞘は2枚の板を合わせて作っていたので、形が合っているか嵌合させた後は確認することが出来ない。


 鞘にしてしまったら、薄い剣が入る内側は見る事ができないとはいえ揃えておきたいと考えたようだ。


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