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ルイネレーヌの情報


 ユーリカリア達は、いつもの冒険者風の服ではなく、全員が、ドレスを着ていた。


 ただ、着慣れないドレスを着て、ユーリカリア達は落ち着かない様子で、歩きながらドレスの裾を気にしていた。


 ユーリカリア達の衣装を心配していたアンジュリーンが、ユーリカリア達を見て、唖然としていると、ユーリカリアが声をかけてきた。


「遅くなってすまなっかった。」


 だが、ユーリカリア達は、エルフの2人以外、どうも、着慣れない装いに、違和感を感じている様に思えた。


 初めて見るユーリカリア達のドレス姿に、アンジュリーンは、呆然として見ているだけになっている。


 それは、アンジュリーンだけではなく、アメルーミラ以外、全員が、何とも言えない顔でユーリカリア達を見ていた。


 そんなアンジュリーンや他のメンバーの表情に気がつく事もなく、ユーリカリアは、ドレスを煩わしそうに摘んで、裾を上げる様にしながら、話を続けた。


「着替えにちょっと手間取ってな。 それにこれだと、階段を上がるとき具合が悪いな。 さっき、スカートの裾を踏んでしまったよ。」


 慣れないドレスに困ったとユーリカリアが言い訳の様に言う。


「階段だけじゃなかったじゃないですか。 部屋の中でだって思いっきり転んでたじゃないですか。」


 また、フェイルカミラに突っ込まれているユーリカリアが、そこまで言うなといった様子でフェイルカミラをみる。


 フェイルカミラは慌ててそっぽを向くと、ユーリカリアは、ジューネスティーンに話し始める。


「さっき、メイドが来て、着替える様に言われたんだ。 それで、全員この格好をさせられた。」


「そうだったんですか。」


 ジューネスティーンは、それを聞いて、さっき、メイドが部屋を訪ねたのは、気を利かせて着る物を確認して、必要ならば用意してくれたと理解した。


 高級な宿なので、そういった事もしっかり対応してくれているようだ。


「それじゃあ、食事にしましょう。」


 そう言って、全員でレストランに入っていく。




 入り口でボーイが挨拶すると話しかけてきた。


「お連れ様のところに、ご案内いたしますので、こちらへどうぞ。」


 そう言って、全員を奥の個室に案内する。


 途中、テーブルに座って食事をしている人をみると、やはり、身なりも良く、マナーもしっかりしている。


 ジューネスティーン達も静かに歩いていたのだが、ユーリカリア達は、慣れない服と靴に悪戦苦闘をしているらしく、時々、コケそうになって、メンバーに支えられていた。


 アメルーミラも、田舎暮らしだと聞いたので、この様な場所には不慣れかと思ったのだが、ぎこちない歩き方ではあるが、何とかついてきていた。




 通された個室には、ルイネレーヌが、ワインを飲みながら待っていた。


「ちゃんと、着る物も、用意できていたな。」


 ジューネスティーン達の服を見て、そう言ってきた。


 すると、ボーイに食事を頼む。


「適当に座って欲しいと言いたいのだが、ジュネスとシュレはセットだから、それと、ユーリカリアさんは、誰か1人付けて、私のテーブルにきて欲しい。 後は、適当に座ってくれ。 料理も直ぐに運ばれる。 それに個室だから、マナーも気にせずに食べてくれ。 全額、ジュエルイアン商会が持つことになっている。」


 ユーリカリアは、食事だけなのかと少し残念そうにするが、その表情の変化は、ほんの僅かに表情を動かした程度だったのだが、ルイネレーヌには、見抜かれていた。


「大丈夫、少しなら、アルコールも出してもらえるから、安心してくれ。」


 それを聞いてユーリカリアの体から、僅かに力が抜けた様子をした。


「それより、誰をこっちに呼ぶんだ? 」


 ユーリカリアが、酒が出るのか気になっていたので、人選を忘れていたのを指摘された。


「ウィルリーン、こっちだ。」


 言われて、ウィルリーンが嫌そうな顔をする。


 その横には、カミュルイアンが居るので、今日は、楽しませて欲しいと訴えていた。


「ああ、そうか。 じゃあ、フェイルカミラ、こっちだ。」


 フェイルカミラは、言われるがまま、ユーリカリアの方に来る。


「じゃあ、説明する。」


 そう言って、ルイネレーヌは、4人をテーブルに座るように促す。




 テーブルに座ると、直ぐに、食前酒と前菜が運ばれてきた。


 配り終わるのを待って、ルイネレーヌが話し始める。


「ツノネズミリスなんだが、辺境伯領の西の山に出ていた。 それが日に日に増えているので、昨日辺りは、4万に膨れ上がっているらしい。 帝国の駐留軍でも対応はしているが、数を減らすまでには至ってない。 それと、どうも、2・3日前から数が異様に増えている可能性が高い。 ジュネス達が、戦い始めるのは、明後日あたりだろうが、その時には6万は考えておいた方がいいだろう。」


 そう言われて、ジューネスティーンは、考えていたが、その様子には不安な様子は見受けられない。


(なるほど、6万匹か。 1人、5000匹がノルマなら、まあ、想定していた数程度だな。 問題は、戦う場所になるか。 可能な限り密集させて、1回の魔法でどれだけ多く倒せるか。)


 ジューネスティーンの表情を見ていたルイネレーヌは、情報から、直ぐに何かを考えだした事を快く思っている。


 戦闘において状況の変化というのは、当たり前の事なのだから、即応性が求められる。


 僅かな情報でもそれを解析できる頭脳というのは、見ていて安心感を周りに植え付けるのだ。


「やっぱり、ジュネスにとっては、数の暴力も戦略的に対応できそうだな。」


 ルイネレーヌは、ジューネスティーンの表情から、もう、対応策ができていると判断したようだ。


「そうですね。 対人戦闘ではありませんから、仕掛けができれば、後は、実行するだけです。」


「そうか、お前は、戦う前にしっかり戦略を立てるから、失敗することは無いな。 大体、戦闘なんて不確定要素が多いから、その都度戦術を変える様になるはずなのに、それを上手く使って想定の範囲で留めてしまうからな。」


 ルイネレーヌは、感心したように言う。


「いえ、そんな事はありませんよ。 想定を外した事だってありますよ。」


「だが、そうだとしても、被害が無いように戦術を組み替えて対応しているだろ。 お前の仕事は、安心して見てられるから、助かるよ。」


 ユーリカリアとフェイルカミラは、その話を聞いて、今までの訓練もジューネスティーンが、考えがあってのことだと思っていたが、ルイネレーヌの話を聞いて、かなり高度な戦略を組んでツノネズミリスに対処しようとしているのだと感じていた。


 ただ、シュレイノリアは、いつものようにジューネスティーンを誘惑する様な発言が無いことが気がかりのようだ。


 料理に集中しているように見えるのだが、しっかりと聞き耳をたてており、何かあれば直ぐに反論するように身構えていたのだ。


 そんなシュレイノリアの様子など、ルイネレーヌは気にすることなく、話を続ける。


「それで、戦い方はどうするんだ? 」


 ジューネスティーンは、ルイネレーヌの質問に、やっぱり聞かれるのかと思った様子で答える。


「範囲魔法で一網打尽にする予定です。」


「じゃあ、シュレの出番なのか? 」


 ルイネレーヌは、知っていて聞いてきた。


 ジューネスティーン達の行動は、自分のメンバーに逐一報告させているので、ユーリカリア達が魔法を使えて、そのレベルも、かなり高いことも知っているのだが、ルイネレーヌは、あえて、ジューネスティーンに聞く。


「いえ、魔法は、メイン攻撃となる、火魔法を使える者が10人居ますから、出来れば包囲殲滅がありがたいのです。」


「やっぱり、そうなるのか。 それで一度に殲滅する数はどの程度を狙っている? 」


「うーん。 最低でも200は、一回の攻撃で倒したいので、3・400匹を集められる場所が欲しいです。」


 そう言って、少し考えると、直ぐに話し始める。


「直径10m程度の平地か。 31mの円周なら、2mずつの配置で24m、2.5m程度か。 だったら、もっと広い場所で、もっと多くの集めてからの攻撃でもいいのか。」


 ジューネスティーンは、つぶやくのだが、それが全員に聞かれている。


「なあ、ジュネスよ。 発生したツノネズミリスの北側に10m程の崖になっているところがあるんだ。 2km程有るが、北側にある山が、丁度、崖になって聳え立つ様になっている。 ただ、ツノネズミリスなので、その崖を登る可能性が有るが、お前なら、登れない様に崖の表面を平らにしてしまう事も可能だろう。」


「ああ、そんな場所を探そうと思ってたんです。 じゃあ、戦場は、直ぐに設定できそうですね。」


 ルイネレーヌは、やっぱり食い付いてきたと思ったのだろう、表情が僅かだが変わった。


「多分、そこなら、他に被害も出ないだろう。 辺境伯の許可も直ぐに出るだろうな。」


 ジューネスティーンは、納得したような顔をする。


「ユーリカリアさん、予定が決まりました。 戦場は、発生したツノネズミリスを北側に誘き寄せて倒します。 なので、明日、場所の確認と、明後日は、戦場の準備になります。 実際の戦闘は、その翌日ってことになりそうです。」


 そう言われて、ユーリカリアとフェイルカミラは、分かったのか分からなかったのか、曖昧な表情をする。


「上手くしたら、殲滅戦だけで終わるかもしれませんよ。」


 ジューネスティーンは、安心した表情をユーリカリア達に向ける。


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