秘密の依頼とルーミラの魔法
ギルドからジューネスティーン達への依頼として、東の森の先の調査が有る。
その為には、大ツ・バール帝国に認めさせて、帝国から東の森へ入る許可が必要となる。
帝国としても、強力な魔物の済む東の森の調査は必要な事なのだから、東の森のを調査可能な冒険者は、喉から手が出る程欲しい存在なのだ。
ならば、パワードスーツも全部揃った事も有るので、帝国に認めさせる必要がある。
そうなると、実力を見てもらう為にも監視者に確認されないのでは、評価も信憑性が欠けてくる。
結果として、今の監視役を引き連れて、戦闘を見させる必要があるのだ。
だが、その東の森の調査をギルドから秘密裏に受けている事を、ジューネスティーン達は、ユーリカリアもだが、アメルーミラにも話すことは出来ないのだ。
帝国軍の監視の目的は、ジューネスティーン達が、東の森の調査に耐えうるかを見極める事にあるのだから、その目的を果たす為の監視という事は、ジューネスティーン達には分かっているのだが、今、ここで話す事はできないのだ。
ただ、ユーリカリア達は、亜人だけのパーティーなので、帝国軍に勧誘されたとしても、正規軍に編入される可能性は、低いだろうと思ったようだ。
勧誘されたとしても、どんな立場になるのか、不安が残ったようだ。
帝国軍の監視の目的の話については、ユーリカリア達にも教えるわけにはいかないので、アンジュリーンの指摘に対する答えも、詳しい答えにはならなかった。
「明日は、キャンプを片付けたら、出発だ。 夕方までに中間点のツカディアの宿場町で停泊しよう。 明後日の朝に出れば、昼過ぎにはツカ辺境伯領に入れるだろう。 それに、このスピードなら、監視役の人達も、ギリギリで追いつけると思う。」
「お前達は、敵にも気を使うのか? 」
驚いたようにユーリカリアが言うが、ジューネスティーンは、当たり前のように答える。
「監視されているから、敵とは限りませんよ。 俺達に敵対するような行動は取っていませんし、今は、敵でも味方でもありません。 できれば友好的な関係を続けたいと思ってます。 それにわざわざ敵を作って、自分の身を危険に晒すこともないでしょ。」
「なるほど、それもそうだな。」
ユーリカリアは、納得する。
ジューネスティーン達は、帝都に入った時から監視されていた。
帝国軍からの監視は、翌日から監視されていたのだが、その間になんら、危害を加えられることもなく、ただ、監視されていただけだ。
アメルーミラが、潜入調査としてメンバーに加わらせらしいのだが、敵対する様子は見受けられないので、特にジューネスティーン達が何かを仕掛ける事も無い。
なんらかの形で妨害をされたとしたら、本気で対抗していただろう。
ただ、帝国軍の監視は、監視するだけで、それ以上の事は行なって来なかったので、邪魔だからといって、まいてしまうことはあっても、排除することは無かった。
その方針は、未だに変更は無い。
ユーリカリア達が、食事を終わらせると、寝てしまったので、アメルーミラが中心となって片付け終わると、残ったジューネスティーン達7人がテーブルでくつろぐことにした。
「ルーミラ、水魔法を使える用になったみたいだけど、調子はどう? 」
ジューネスティーンは、アメルーミラに水魔法が使えるようになったことを聞いてきた。
ヴィラレットに教えられた時は、ジューネスティーンは御者台にシュレイノリアとユーリカリアの3人が居たので、知られてないのかと思っていた。
その後も魔法の話はせず、料理の準備の時や片付けの時に使っていた程度だったので、ジューネスティーンは、魔法を使えるとは知らないとアメルーミラは思っていたのだ。
だが、ストレートに水魔法が使えるようになったと聞かれてアメルーミラは驚いていた。
「どうして、それを知っているんですか? 」
「魔法を使っていれば、私がわかる。 1人だけで、片付けをしているときに魔法を感知した。 ルーミラ1人しか居なかったのだ。 水魔法を使ったのは、ルーミラだと直ぐに分かった。」
シュレイノリアが、魔法が使えるようになった事を感じてジューネスティーンに話していたのだ。
「すみません。 ヴィラが教わった内容を聞いていたら、使えるようになってしまったんです。」
アメルーミラは、まずいことになったのかと思って謝ってしまった。
「ああ、怒っているわけじゃないんだ。 いずれ、魔法は覚えてもらおうと思っていたから、丁度良かったよ。」
それを聞いて、アメルーミラはホッとする。
「今回のツノネズミリスの討伐には、大量の魔法を使うことになるんだ。 今回の討伐には、冒険者になったばかりのルーミラは、途中で魔力切れになる可能性が高いので、今回の討伐メンバーからは外しているが、これから、徐々に魔法は覚えてもらうし、それにもう少し強い魔物とも戦ってもらうつもりだ。 ただ、今回のような数が多い魔物には、経験が物を言うので、留守番を頼むよ。 それと、討伐が終わったら、帰り道の時に少しずつ魔法を教えていくから、そのつもりでいて欲しい。」
アメルーミラに対してジューネスティーンは気を遣ってくれた。
ただ、最初に使えた時にアンジュリーンに言われていた事と、ユーリカリア達を見ていて、自分にあんな事ができるかと考えると、無理だと自分自身でも思ったことから、直ぐに納得できたのだ。
「はい、焦らずに覚えるようにします。」
ジューネスティーンもホッとしたようだ。
ただ、アンジュリーンとアリアリーシャは、アメルーミラが魔法を使えた時のことが有るので、微妙な顔をしていた。
しかし、アメルーミラは、ジューネスティーンに魔法を教えてもらえると聞けたので、嬉しそうにしていた。
(もっと、色々な魔法が使えるようになるかもしれない。 私もヴィラのように火魔法を使えるようになったら、冒険者として、もっと、楽に魔物を狩ることもできるようになるわ。)
アメルーミラには、新たな道が開けたと思うと、それが顔に出てしまっていた。
そんなアメルーミラをレィオーンパードは、自分の事のように嬉しく思っていた様子で、表情に嬉しさが出て、ニヤけていた。
だが、レィオーンパード自身が、そんな顔をメンバーに見られたら、何を言われるか分からないと思ったのだろう、慌てて表情を元に戻していた。




