ユーリカリア達の魔法
レィオーンパードは、ユーリカリア達の魔法の目標になって、パワードスーツで移動し、その後ろをジューネスティーンが火魔法を放って、炎がレィオーンパードを追いかける様に発生させた。
その時の自分の動きについて、レィオーンパードは、ジューネスティーンに確認した。
次は、アリアリーシャが、走り出そうとしているので、ジューネスティーンが順番をユーリカリア達に聞く。
「じゃあ、ちゃっちゃと始めましょうか。 それで、誰が行きますか? 」
今のジューネスティーンの魔法を見て、どうも気が引けているみたいだったのだが、それをフィルルカーシャが、ヴィラレットのお尻を押して前に出す。
「フミュア! 」
ヴィラレットは、変な声を出して前にでると、フィルルカーシャがヴィラレットに言う。
「こうう言うときは、若い方からに決まっている。」
周りが動こうとしてないので、こんな時は、若かったり、年数が低い方からになる。
ただ、危険度が高い場合は、ユーリカリアとウィルリーンが前に出るのだが、訓練となるなら、若い方から先に始めさせるのだ。
ヴィラレットは、ちょっと嫌そうな顔をするが、仕方なさそうに魔法を放つ準備を始めるので、ジューネスティーンは、アリアリーシャに合図を送る。
アリアリーシャは、その合図と同時に一気にレィオーンパードと同じ程度まで速度を上げる。
「えっ! 」
ヴィラレットは、慌てて魔法を放つ。
ただ、後ろではなく、アリアリーシャの横に放ってしまった。
「ああ、気にしないで、狙った場所じゃなかったとしても、焦らないで、次の魔法は、狙ったところに落とすと思って、魔法を放ってくださいね。 最初から上手くいくわけは無いですから、失敗しても気にせず、どんどん魔法を放ってください。」
ジューネスティーンは、気にさせない様にヴィラレットにいう。
だが、次の魔法も後ろではなく、アリアリーシャの向こう側に放たれ、なかなか、後ろには放たれず、アリアリーシャの通った後を左右にジグザグに放たれていた。
ヴィラレットは、突然言われて訓練に入った事もあり、狙った場所に火魔法を放てずにいる。
「結構、狙った場所に放つのは難しいでしょ。 これをしばらく繰り返して、パワードスーツが通った後に一直線に炎が残るように練習します。 じゃあ、自分達は、順番に走りますから、そちらも順番に放ってください。 それと、これは、数を撃って、練習するしかないので、何度も繰り返して、コツを掴む様にしてください。」
「ああ。」
ユーリカリアが、答える。
ジューネスティーンの、何度も繰り返してコツを掴むという言葉に、ユーリカリア達は救われた様子を見せた。
最初から上手くはいかない。
何度も練習することで、徐々に上手くなるのだから、最初から上手にできるのではないと思う事で、気が楽になった様だ。
ユーリカリア達の緊張が解けてきたと、ジューネスティーンは思った様なので、自身もパワードスーツに乗って、その場にいたパワードスーツを連れて、走り出すスタート地点まで移動した。
スタート地点に5人が移動すると、アリアリーシャも、大回りして、5台のパワードスーツの方に移動する。
順番にホバーボードとホバークラフトを使って走り出す。
その後ろに、ユーリカリア達が、火魔法を順番に放っていく。
最初は、ヴィラレットが行なったように狙いが定まらず、パワードスーツの通った後に炎を作れず、前後左右にズレて、放たれ、また、放つ間隔も長かったので、炎が繋がる事も無かった。
時々、ジューネスティーンが、状況説明のためにユーリカリア達の元に来ては、アドバイスをしていると、徐々に放つ間隔も短くなり、狙った通りにパワードスーツの走った後を綺麗に描くように炎を出せるようになる。
何度も同じ事を行う事で、コツを掴んできたのだ。
反復練習によって、精度を上げて、放つ速度も上げる。
決してぶっつけ本番の様な事にならないため、本番に備えてユーリカリア達のパーティーの魔法の練度を上げていくのだ。
直線的に動いて、炎が繋がる様に放たれるようになったところで、ジューネスティーンは、直線的に走るのではなく、パワードスーツを左右に動かさせる様にさせて、その軌跡に沿って魔法を放てる様に訓練方法を変えていく。
ユーリカリア達からしたら、手前、奥に移動しながら、右に走っていくパワードスーツに最初は戸惑っていたが、何度か繰り返すと、それにも対応できる様になってきたので、パワードスーツの速度を上げさせ、左右への舵きりもランダムに走らせる。
そんなランダムな動きにも、慣れてくると、スタート地点を離れたところに移動する。
今度は、ユーリカリア達に向かって走らせ、30m先の辺りで、90°舵を切らせて、V字になる様に移動させる。
同じ程度の距離を移動すると、また、90°舵を切ってと、それを繰り返して、移動を四角形になる様に走らせる。
そうなると、移動距離が長くなったので、一辺の移動を1人として、4人が同時に訓練できる様にした。
魔法を放つ側も、4人が魔法の訓練となって、2人が休憩ののち、一人一人連続で魔法を放ち、休息と魔法を放つのを繰り返しながら、訓練を進めた。
ジューネスティーンは、ユーリカリア達の魔法の放つ数を確認しつつ、何度も繰り返し行うと、流石に疲れてきたのか、ユーリカリア達の魔法を放つ間隔が伸び出してきた。
すると、軽く休憩をする事にする。
ジューネスティーンがインターバルに入った時にユーリカリア達の方に移動する。
パワードスーツから、降りるとユーリカリア達に話しかける。
「そろそろ、休憩にしましょう。 だいぶ慣れてきたのですけど、長時間の魔法は流石に疲れるでしょうから、休憩を挟んで、また、始めましょう。」
しかし、ユーリカリア達は、げっそりしていた。
「なあ、今日は、昨日までより楽になるんじゃなかったのか? 」
「ええ、一度に放つ回数は少なくて済んでいると思います。 休む時間もありますから、今回の方が、楽だと思いますよ。」
ユーリカリア達は、ただ、魔法を放つだけではなく、狙いをつけて放つ事で、思考をフル回転させて、前を走るパワードスーツの動きを見つつ、パワードスーツには当ててはいけないと考えつつ、行っていたのだ。
その負担が精神的に、ユーリカリア達にはキツかった様だ。
「いや、一度に放つ数は少なかったけど、精度を求められたら、かなり神経をすり減らした。 それに、一度に放った数は、少なかったが、放った魔法の数は、今まで以上に多かったんじゃないか? 」
ジューネスティーンは、少し考えてみる様子をすると、すぐに答えた。
「ああ、そうですね。 昨日より魔法を放った回数は、少し多いかもしれませんね。」
それを聞いて、ユーリカリア達は、どうも精神的にキツイと思っていた疑問が晴れた様な感じで、疲れた顔が更に疲れた表情じなる。
(この人、笑顔でとんでもない事言う。)
(ウィルリーンさんは、顔を引き攣らせてたけど、この人、あっさり、笑顔で言うって、ウィルリーンさんよりスパルタなのかもしれない。)
ユーリカリア達は、口に出さなかったが、ジューネスティーン達の訓練がかなりスパルタだったと実感していた様だ。
「でも、みんな、かなり、攻撃間隔も精度も上がったわよ。 旅に出る前の魔法と比べたら、雲泥の差だわ。 こんな短期間で、ここまで魔法力を上げられるなんて、私は聞いた事がないわ。」
ウィルリーンも、かなり、ヘトヘトになっていたが、自分が感想を述べる事で、メンバー達を勇気づけると思ったのだろう、自分の感想を話してくれた。
それぞれが、ジューネスティーンの訓練についてきたのだが、何気に引っ張られてしまって、自分たちの限界を超えた訓練をさせていた事に気がついたのだ。
そして、自分達が信頼している魔法職であるウィルリーンに、そう言われて、安心している様子を見せた。
ジューネスティーンは、パワードスーツの5人を呼んで、休憩に入る。
キャンプに行くと、アメルーミラが、お茶と簡単な軽食を用意しておいてくれた。
用意するものは、予め、ジューネスティーンから、糖分を多めになる様にと言われているので、簡単に作れるパンケーキの様なお菓子を作っておいた。
また、お茶についても、甘味のある茶葉を用意しておいた。
休憩に戻ってくるのは、流石にパワードスーツの機動性の良さから、ジューネスティーン達の方が早いのだが、キャンプに近づくと、ホバー機能を止めて、歩いて移動させていた。
「お帰りなさい。 おやつの準備はできてますから、皆さん、席についてください。」
アメルーミラが、伝えると、ジューネスティーン達は、テーブルとテントの間にパワードスーツを一列に並ばせてた。
並び終わると、それぞれのパワードスーツが開いて、全員が顔を出す。
ジューネスティーンは、いつもの様に腕だけで足を引き抜いて、倒立する様にしてから地面に飛び降りると、シュレイノリアが抜け出せずにいるのを手伝いに行く。
レィオーンパードとカミュルイアンも、パワードスーツの腰のあたりに手を突いて、なんとかお尻を上に上げて、パワードスーツの開いた腰の上に、自分の腰を乗せようともがいていた。
ただ、アンジュリーンとアリアリーシャは、抜け出そうと足掻くのだが、腰が上がってくる様子は無い。
ジューネスティーンは、シュレイノリアを見る。
シュレイノリアと目が合うと、シュレイノリアは、顎をしゃくる。
それ、ジューネスティーンに手伝えと言葉ではなく、態度で示したのだ。
ジューネスティーンは、アリアリーシャの方が近かったこともあり、アリアリーシャの元に行く。
「姉さん。 手伝おうか? 」
「ああ、ジュネス。 お願い。 私の力だと、抜け出せないのよ。」
ジューネスティーンは、アリアリーシャのパワードスーツのふくらはぎの第二装甲の上に乗る。
「じゃあ、姉さん。 脇に手を入れるよ。」
そう言うと、ジューネスティーンは、アリアリーシャの両脇に両手を入れる。
アリアリーシャは、そのジューネスティーンの手の感触に顔を少し赤くする。
それは、小柄なアリアリーシャと大柄なジューネスティーンなので、ジューネスティーンの指の先が、アリアリーシャの大きな胸の膨らみに指が僅かに掛かってしまったからだ。
アリアリーシャは、その感覚を味わいつつ、変な声が出ない様に必死で堪えていたのだ。
ジューネスティーんは、アリアリーシャのそんな思いも気にせずに、アリアリーシャをパワードスーツから引き出して、アリアリーシャの腰をパワードスーツの腰の縁に置く。
アリアリーシャは、両手を開いた背骨にかけると、後ろにいるジューネスティーンに声をかけた。
「ありがとう。」
「うん。」
ジューネスティーンは、アリアリーシャのお礼を聞いて、ふくらはぎの第二装甲から降りる。
アリアリーシャが、片足の膝を抜いて、パワードスーツの腰にかけて、残りの足を引き抜くと、後ろのふくらはぎの第二装甲に足を下ろし、パワードスーツの腰に乗せていた足を第二装甲に下ろす。
「ちょっと、私の方もお願いよぉ。」
隣に居たアンジュリーンが、ジューネスティーンに、少し拗ねた様な口調で声をかけてきた。
ジューネスティーンは、アンジュリーンを見ると、少しムッとした様な顔でジューネスティーんを見ていた。
「ああ、今、姉さんが外に出るから、シュレと姉さんに手伝ってもらって。」
すると、アンジュリーンは、ムッとした顔をする。
「なんで、私だけ差別するの! シュレにもアリーシャにも補助してあげたのに、私はしてくれないの! 」
それを聞いてジューネスティーンは、唖然とする。
「さっ! 私をここから出して。」
ジューネスティーンは、困った様な顔をするが、言われるがまま、アンジュリーンのパワードスーツの後ろに行き、アリアリーシャやシュレイノリアにした様に、第二装甲に乗ると、アンジュリーンの両脇に自分の両手を入れる。
アンジュリーンもアリアリーシャと同じ様に顔を少し赤くするが、アリアリーシャの様にジューネスティーンの指が、胸の膨らみにかかる事は無かった。
アンジュリーンの腰がパワードスーツの腰に掛かると、アンジュリーンは、パワードスーツの背骨に手をかけて、歯に噛んだような顔で、後ろを振り返る。
「ありがと。」
「いえ。」
その歯に噛んだ顔が、ジューネスティーンには、新鮮に写った様だ。
少し、ドキッっとした様な様子をするが、直ぐに、ふくらはぎの第二装甲から降りて、場所をアンジュリーンに譲る。
アンジュリーンは、片足を引き抜くと、もう片方の足を引き抜いて、両足でパワードスーツの腰の上に乗り、腰を曲げて体をくの字にして、パワードスーツのふくらはぎの第二装甲に足をかける。
その間、ジューネスティーンは、補助の為に後ろに控えているのだが、目の前にアンジュリーンの腰の位置がくる。
インナースーツとはいえ、体に完全にフィットする全身水着のスーツに、腰が隠れる程度のミニスカートを履いているだけなので、くの字に曲げたお尻が、ミニスカートから出てしまっているのを見るのは、ジューネスティーンにとっては、非常に眩しい光景だった様だ。
それが、ジューネスティーンの表情に出ていた。
パワードスーツの6台から降りた6人は、深呼吸しながら、テーブルに着こうするのだが、その後から来たユーリカリア達は、少しゲッソリした様な表情でキャンプに来た。
それを見たアメルーミラは何があったのか気になった。
「ねえ、ヴィラ。 どうかしたの? 」
アメルーミラは、ヴィラレットに声をかけると、引き攣った様な笑顔だけで答えると、テーブルにどっかりと腰を下ろした。
「ごめん、ルーミラ。 悪いけど水を先に頂戴。」
アメルーミラは、慌てて、カップの中に水魔法で水を貯めると、ヴィラレットは、息をつく間もない勢いでその水を飲み干した。
「ありがとう。 やっと、一息ついたわ。」
そのヴィラレットの様子を見て、アメルーミラは、訓練が大変だったのだろうと思うと、用意しておいたお茶を、ユーリカリア達に出す。
出てきたと同時に、お茶を飲み出したので、アメルーミラは、慌てて軽食を出すと、ユーリカリア達は、慌てて食べ始めた。
軽い食事は、訓練の前にジューネスティーンから指示されたものだった。
特に、甘い物を中心に用意させているので、女子6人ということもあり、好物の甘いスイーツを貪るのかと思ったのだが、貪るように食べ始めた。
お茶も少し甘味のある茶葉を使っていたので、それもユーリカリア達には好評だった。
しばらく、そんな様子だったので、アメルーミラは、ユーリカリア達が食べ終わったり飲み終わったりするのを見て、慌てて給仕をしていた。
ある程度食べたり飲んだりすると、流石に女子が多い為か、飲み食いを楽しみだした。
お腹が落ち着いたところで、味を楽しむ事ができた様で、食べ物の感想をお互いに話し出していた。
このおやつは、アメルーミラが、ジューネスティーンに言われた通りに準備をしておいたのだ。
(ユーリカリアさん達、とても美味しそうに食べていると言うより、貪る様に食べているわ。 これを飲んだり食べたりしたいと体か勝手に動いているみたい。 ジュネスさんは、こうなる事を予想して、私に、甘い物を用意する様に言ったのかしら。)
なんで、昼食前に、そんなに食べるものが必要になるのかと思っていたのだが、ユーリカリア達の様子を見ていたら、納得できた様だ。
アメルーミラは、落ち着き出したユーリカリア達に、お代わりが必要かどうか聞いたり、空になったカップにお茶を注いだりしつつ、ユーリカリア達の世話をしていった。




