パワードスーツに乗るカミュルイアン
カミュルイアンは、アンジュリーンの示した先にウィルリーンが、しゃがみ込んでと言うより、四つん這いになって、可能な限り肩を低くして、パワードスーツの隙間を覗くように見ていた。
そんな格好をしているので、スカートが捲れ上がって、裾が、肩甲骨の辺りにきていることも構わずにいるのだ。
自分の姿には、気にせずに、お尻を丸出しの状態でパワードスーツの足の隙間を見ようとしているのだ。
カミュルイアンは、その様子を見て、恐る恐る、ウィルリーンの元に行く。
カミュルイアンとしたら、そんな格好は、一糸まとわぬ状態のウィルリーンを、何度も見た事は有るのだが、流石に人前で、そんな格好はして欲しいとは思って無いのだ。
「あのー、ウィル。 ちょっと、その格好は、まずいんじゃないの? 」
カミュルイアンに気がついたウィルリーンは、膝をついて頭を地面につけるようにして覗き込んでいたのだが、カミュルイアンの声に気がつくと、頭を上げて、地面に女の子座りをする。
「ああ、カミュー。」
カミュルイアンは、恥ずかしそうに少し顔を赤くしていた。
だが、ウィルリーンは、カミュルイアンに呼ばれて、頭を上げて、女の子座りをしてしまったので、背中に捲れ上がったスカートも、今は、地面に広がっているだけになってしまったので、ウィルリーン自身は、自分がどんな格好でいたのかは、分からなくなってしまったのだ。
ウィルリーンは、そのカミュルイアンの仕草を見て、カミュルイアンの全身を確認すると、体にフィットした薄手のツヤツヤした、まるで全身水着のようなスーツに、短めのホットパンツに、胸筋を隠す程度のベストといった格好が恥ずかしいのかと思ったようだ。
「それが本来の姿なのね。 裸の時も良かったけど、その格好も素敵よ。」
ウィルリーンは、今まで、下着が丸出しの格好でいた事に、全く気がついてないで、カミュルイアンの姿をほめた。
「あっ、ありがとう。」
(って、裸の時の話は、よしてくれよ。)
カミュルイアンは、視線をウィルリーンから逸らすと、自分のパワードスーツを見る。
(とりあえず、お尻丸出しの格好ではなくなったから、それでいいか。)
そう思いつつ、自分のパワードスーツの横に行く。
それを追うようにして、ウィルリーンも立ち上がって、カミュルイアンを追う。
カミュルイアンが、パワードスーツの横に立つと、その横からウィルリーンは、ニコニコしながら覗き込んでいる。
ウィルリーンとしたら、カミュルイアンが乗り込むところを確認できると思うと、嬉しくてたまらないのだ。
「ちょっと、後ろに下がってもらえるかな。」
そう言うと、ウィルリーンは、一歩後ろに下がる。
それを確認したカミュルイアンが、パワードスーツの背中に手を当てる。
パワードスーツは、腰と背骨のジョイントが外れて、腰の部分が開きながら、体がくの字に曲がると、背中が背骨に沿って開く。
腕に持っていた盾が、つっかえ棒のようにパワードスーツの少し手前の地面に着くと、ふくらはぎの第二装甲が、上に開くように上がって、地面と水平になる。
ウィルリーンは、パワードスーツの中が気になったので、カミュルイアンの後ろを回って、パワードスーツの後ろに回ると、背中の中に顔を突っ込むようにして覗き込む。
「まあ、中は何もないのね。」
ウィルリーンは思わず感想を述べた。
(ああ、カミューの匂いだわ。 何かを着ていても匂いは残ってしまうのね。)
ウィルリーンは、パワードスーツの中に残ったカミュルイアンの匂いを、芳しく思ったようだが、カミュルイアンには、そんなウィルリーンの気持ちなど分からずに答えた。
「だって、オイラがこの中に入るんだから、何も無いのは当たり前だよ。 何かあったら、オイラが入れないじゃないか。」
「そうよね。 でも、どうやって動くのかしら。 多分魔法を使っているとは思うのだけど、どんな魔法なのかしら。」
ウィルリーンは、興味津々で、外から見えなかったところを確認するように、内部を覗き込んでいた。
それを見て、少し恥ずかしそうにしているカミュルイアンが答える。
「詳しい事は、シュレとジュネスしかわからないよ。 オイラはこれに乗るだけなんだよ。」
「ああ、そうよね。」
(機体の設計はジュネスで、魔法はシュレって事なのね。 2人の合作なのか。)
ウィルリーンは、納得したような顔をする。
「ねえ、開いたのは魔法で開くの? 」
「ああ、オイラの魔力を流すんだ。 そうすれば、開くけど、オイラ以外には、開く事も動かす事もできないんだって。」
「へー、そうなの。」
ウィルリーンは、不思議そうに答えた。
「何でも、魔力には、人それぞれの波長とか周期があるとかで、それが合わないと何もできないっていってたよ。」
(何? 魔法の波長? 周期? 何なのかしら。)
ウィルリーンは、パワードスーツの中を覗き込んだまま、何か考えているようだ。
「ねえ、オイラも少し動かしてみたいから、乗ってもいいかな。」
「えっ! ああ、そうね。 開けたんだから、乗らないといけないわね。」
ウィルリーンが答えると、カミュルイアンは、ふくらはぎの第二装甲に足をかけて登る。
足を上げて、パワードスーツの腰の中に足を入れると、パワードスーツの腰に腰掛けるようにする。
両手で背中に手をかけると腰を上げて、パワードスーツの中に足を入れると、腰までパワードスーツの中に入った。
すると、両手を胸の脇にある穴の中に入れ、パワードスーツの内側に胸を合わせる。
両手を左右に振るように開きながら体を起こすと、背骨の中央から観音開きに開いていた背中が閉まると、背中が下に下がり、背骨と腰のジョイントが固定される金属音がする。
体が完全にパワードスーツに隠れてしまうと、ふくらはぎの第二装甲が元の位置に戻る。
空気の入る音がすると、カミュルイアンは、パワードスーツの手足を軽く動かし始めた。
その姿を食い入るようにウィルリーンは一部始終を見ていた。
「ウィル、じゃあ、レオン達と合流してくるから、また後でね。」
パワードスーツの外部スピーカーを使ってカミュルイアンは、ウィルリーンに話しかけた。
スピーカーからカミュルイアンの声がしたので、少し、いつもの声とは違ってウィルリーンには聞こえたように思えたようだ。
何だろうとウィルリーンが感じている間にカミュルイアンは、逃げるようにして、足に付けたホバークラフトを使って、レィオーンパード達の方に行ってしまった。
その姿を惚けたような顔でウィルリーンは見送っていた。
ただ、ウィルリーンは、カミュルイアンの出すホバークラフトの風でスカートが捲れるのを手で押さえていた。
そんなウィルリーンを、周りに居た人達は、なんで、さっきは、スカートが捲れ上がっていても気が付かなかったのか疑問に思ったようだった。




