アンジュリーンのパワードスーツ
ジューネスティーンは、自分のメンバーの方を向く。
「レオン。 姉さん。 今日は、パワードスーツとホバーボードを使って、最後の仕上げを行う。」
レィオーンパードが、それを聞いて、不思議そうな顔をする。
「にいちゃん、パワードスーツまで必要なの? 」
レィオーンパードは、疑問をジューネスティーンにぶつける。
「今日は、実戦の時の装備で頼むよ。 お前達のパワードスーツが完成してから、本格的な戦いは、これが初めてになる。 特に囮りは危険だからな。 確実にしておきたい。」
「ふーん。 わかった。」
そんなレィオーンパードをアリアリーシャが、カップを両手で持って、食後のお茶を飲みながらジト目で見る。
(全く、レオンたら、ちょっと考えればわかるでしょ。 私もあんたも、パワードスーツでの実戦なんて数えるほどしか無いじゃない。 全く、レオンたら、本当にお子ちゃまなんだから。)
そんな2人を気にせずになのか、ジューネスティーンは、シュレイノリアに話しかける。
「今日は、2人のパワードスーツを使う。 ホバーボードと一緒に出しておいてくれ。」
「わかった。」
そういうと、テーブルの後ろに魔法紋を展開して、収納魔法から、レィオーンパードとアリアリーシャの装備を出す。
2人は、その中から、インナースーツを持つと、テントの方に消えていった。
前回は、夜だった事もあり、パワードスーツを見ることができなかったので、ユーリカリア達は、パワードスーツの周りに集まって見ていた。
「ねえ、ジュネス。 監視が昨日からついているのに、パワードスーツなんて見せてもいいの? 」
アンジュリーンが、聞いてきた。
「いずれにしても、ツノネズミリスと戦う時は、パワードスーツを使う必要がある。 その時には、監視している連中に見せることになるのだから、今日、見せても問題無いだろう。」
アンジュリーンは、ジューネスティーンに言われて、もっともな事だと思ったようだ。
「それもそうね。」
アンジュリーンが、アリアリーシャとレィオーンパードのパワードスーツを横目で見つつ、食後のお茶を飲んでいる。
その姿をジューネスティーんは、ジーッと眺めてから声をかけた。
「それと、実際の戦闘になったら、全員、パワードスーツで出ることになる。 何なら、アンジュもパワードスーツで、今日も訓練に参加するか? 長時間の戦闘に慣れるためにも、その方がいいかもしれないぞ。」
ジューネスティーンは、少し何かを含んだような顔でアンジュリーンに話した。
ジューネスティーンは、アリアリーシャとレィオーンパードを囮りになってもらう時の事を考えていた。
アリアリーシャとレィオーンパードが囮となった場合、2人の後ろを追いかけるツノネズミリスに、魔法で攻撃する事も考えられる。
残りのパワードスーツは、ユーリカリア達と一緒に行動し、撃ち漏らした魔物に対しての防御と、魔法攻撃として対応する可能性が高い。
防御力の高いパワードスーツなら、ツノネズミリスの大群であったとしても、攻撃を受けたとしても中にいる人に攻撃が及ぶ事は、ユーリカリア達のメンバーより可能性は、かなり低い。
基本的にジューネスティーン達は、パワードスーツを装備したら、防御力が高く、傷を負う可能性が低いので、最悪、接近戦が必要になった場合は、6人で対応して、生身のユーリカリア達を逃す事も考えているのだ。
魔物を全滅させるまでの時間を考えると、数の多さから長時間の戦闘となる事が考えられるなら、パワードスーツを持っている6人には、慣れておいても良いのかと思ったのだ。
「私は、やめておくわ。 今日一日で、完全に慣れるとは思えないから。」
アンジュリーンは、パワードスーツを今日は使わないことにした。
「ああ、ジュネス。 オイラは、使ってみるから、着替えるよ。」
ジューネスティーンは、カミュルイアンの性格から、さっきの長時間戦闘になるから、慣れておいた方がいいと、聞いたら不安になって、パワードスーツを使うと言いだすと思っていたのだろう、ジューネスティーンは、カミュルイアンの話を聞いて、僅かに口の端が上がったように見えた。
「わかった。」
ジューネスティーンは、答えると、シュレイノリアに指示を出す。
「じゃあ、アンジュはいいから、残り3台は表に出して。」
それを聞いて、アンジュリーンが、どう言う事といった顔でジューネスティーンに尋ねる。
「ねえ、私以外は、全員、パワードスーツに乗るの? 」
ジューネスティーンは、なんでそんな事を聞くのかといった顔をする。
「ん? だって、向こうに着いたら、直ぐに実戦に入るだろ。 今のうちに調子を確認しておこうと思ってたんだ。」
「私は、ホバークラフトにもう少し慣れておきたい。」
ジューネスティーンの後に、直ぐ、シュレイノリアも話し出した。
(えっ! 私だけ? )
アンジュリーンは、少し焦った表情をする。
「ちょっと、そう言うことなら、私も今日のうちに試運転しておくわよ。 何で私だけ別行動になるのよ。」
アンジュリーンは、拗ねて、頬を膨らませる。
それを見て、 ジューネスティーンとシュレイノリア、そして、カミュルイアンの3人が笑いを堪えるようにしていた。




