アメルーミラの役目
今回の依頼は、ツノネズミリスの討伐なので、剣や弓のような攻撃では、話にならない。
範囲攻撃ができる魔法が必要なのだ。
そう考えると、1人でも魔法が使える人が多い方が良い。
ジューネスティーン達6人とユーリカリア達6人の12人しかいないのなら、1人でも減ったら、他の人への負担がお大きくなるのは必然。
そんな不安が、ユーリカリア達のメンバーの心に浮かんだ。
「でも、1人でも減ったら、1人当たりの負担が多くなるわよね。」
1人減った時の不安を、フィルルカーシャが、ぽろりと言う。
「ああ、その時は、シュレが、カバーするでしょ。」
「そうですぅ。 あの子なら、自分以外に2・3人分はカバーするでしょうし、ジュネスも同じ位は魔法が使えるでしょうから、あまり気にすることはないですぅ。」
それを聞いていた、ウィルリーン達は、ジューネスティーンとシュレイノリアの2人だけでも、この依頼を達成できるのではないかと思ったようだ。
そんな表情を見て、アンジュリーンは、少し言いすぎたと思ったようだ。
「でも、あの2人に任せておいたら、ツノネズミリスなら、魔法一発で終わるでしょうね。 でも・・・。」
そう言うと、アンジュリーンは、アリアリーシャを見る。
「あの2人に任せておいたらぁ、地図の書き換えが必要になりますぅ。」
それを聞いて、レィオーンパードとカミュルイアンは、納得したような顔をするのだが、他は、どう言う事だというようにお互いの顔を見る。
「強力すぎて、魔物以外にも被害が出るかもしれないのよ。 あの2人の本気の魔法を使ったら、山の一つ位無くなっておかしくは無いわ。」
通常なら、否定的な意見が出るところだが、ウィルリーン達は黙ってしまった。
ジューネスティーンのメンバーからそんな事を言われてしまったので、どう答えて良いのか応えに困ってしまった。
そんな中、ウィルリーンが冷静な判断をしていた。
「あの2人だけに任せるような状況に、なってはいけないのですね。」
ボソリと呟くと、その顔をシェルリーン達が見る。
その視線にウィルリーンが気がつくと、メンバー達に話だす。
「これは、私達が、ちゃんと魔法を使えるようにならないと、ツノネズミリスを全滅させても、その後には何も残らないかもしれない。 そんな事態にならない為に、私達にも戦闘に参加させようとしたのかもしれないわね。」
「そんなぁ。」
ウィルリーンの話にシェルリーンが、不安そうな声を出すと、フィルルカーシャも不安になったようだ。
「私達に、そんなレベルで魔法が使えるのかしら。」
アンジュリーンは、ユーリカリア達のメンバーに不安を煽ってしまった事を後悔した。
「ああ、でも、大丈夫だと思うわ。 シュレが、魔法の訓練に3日間取ったから、その間で何とかするつもりなんじゃない。」
「そうですぅ。 ヴィラレットさんの剣技なんて、見ていて惚れ惚れしましたぁ。 あの戦い方もですけど、皆さんの闘いは見させてもらってますぅ。 かなり、戦い慣れているのですからぁ、ちょっと訓練すれば、直ぐに、魔法のレベルは上がりますぅ。」
そう言われて、ウィルリーンも思うところがあったようだ。
「そう言えば、あの後、詠唱なしで魔法が使えるようになった。」
ボソリと言っただけだが、その一言が、4人には希望の光のように聞こえた。
「私もだが、魔法が使えるようになった皆んなも、周りのベテラン魔法士位の腕にはなっているなぁ。」
ウィルリーンのぼやくような、その言葉を聞いて、周りのユーリカリアのメンバー達は、更に安心した様子になる。
それを聞いた、アンジュリーンとアリアリーシャは、ホッとしたようだ。
自分達の話で、ユーリカリアのパーティーから、やる気を削いでしまったと思ったのだが、ウィルリーンの言葉で、やる気が戻ってくれたので助かったと思ったようだ。
ただ、1人だけ、アメルーミラは、少しがっかりしていたようだ。
今の話から、自分は最初から戦力外と言われたのだから、分かっていた事だが、ショックはあるようだ。
それにレィオーンパードが気がつく。
「なぁ、ルーミラ。 戦闘は戦闘だけで終わるものじゃ無いんだ。 人は、食べなければ死んでしまうだろ。 だから、後方で支援してくれる人が居て初めて戦えるんだよ。」
「そうだよ。 今回のように長期戦になった時って、途中で交代しながら補給とかってことになるんだけど、後方でその補給を手伝ってくれる人が居なかったら、自分達ですることになるんだ。 そうなると、補給に時間がかかりすぎてしまうだろ。 そんな時に大掛かりな攻撃を受けたら、大変な事になってしまうんだ。」
カミュルイアンも気が付いて、レィオーンパードのフォローを助けてくれた。
「多分、ルーミラが居なかったら、支援用に人を雇うことになったと思うんだ。」
「でも、知らない人にそんな大事な事は任せたくは無いんだよ。」
「だから、ルーミラが居ると思えば、安心して戦えるんだよ。」
「オイラも、そう思うよ。 きっと、終わった後に、後ろでルーミラが居てくれた事に皆んな感謝するよ。」
2人は、ルーミラをフォローする。
「そうなんですか。 今までは、数匹の魔物しか一度に相手にする事は無かったですものね。 私は、10匹の魔物だって見た事が有りませんから、今回は、裏方に回らせてもらいます。」
そう言って、アメルーミラは自分を納得させるのだった。
アメルーミラは、道中での話を気にしていたのだが、実際に2日間の魔法の訓練を見て、圧倒されたのだ。
あの中に自分も混ざって同じ事ができただろうかと思うと、任された仕事をきっちりとこなさなければならないのだと、痛感したのだった。
だが、水魔法を覚えられた事で、水を確保する必要な無くなったので、水汲みに行く必要が無くなった事は助かったと実感していた。
道中で、水の量の調整も教えてもらえた事で、鍋や桶にはる水を魔法で賄えたことは助かったと実感したのだ。
(今は、これだけでいい。)
アメルーミラは、自分の仕事も戦闘には大事な事なのだと、自分に言い聞かせていた。
(機会があれば、私も他の魔法を教えてもらえるかもしれないのだから、今は、与えられた仕事を、しっかりこなして、みんなには、安心して戦闘をしてもらうの。)
水魔法を使えるようになった事だけでも満足したのだ。
ユーリーカリア達も、魔法が使えなかったのに、何種類もの魔法が使えるようになった事もあり、もう少し待てば、自分にも魔法を教えてもらえるかもしれないと、アメルーミラは、自分に言い聞かせつつ、後方支援としての自分の仕事をこなしていた。




