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アメルーミラの魔法


 アメルーミラが、放り投げたカップの水が、前の席に座っていたレィオーンパードに掛かってしまった。


「うわ、冷てぇ! 」


 放り投げてしまったカップは、ヴィラレットが慌ててそのコップを空中で受け取る。


 アメルーミラは、自分のズボンが濡れた事もだが、前に座っていたレィオーンパードに、水をかけてしまった事に申し訳なさが勝った。


「レオンさん、ごめんなさい。」


 慌ててレィオーンパードに謝る。


「ああ、大丈夫だよ。 ちょっとびっくりしただけだから。」


「ヴィラレット、何があったんだ? 」


 気になったのか、一番前に座っていた、ウィルリーンが聞いてきた。


「え、ええっと、ジュネスさんに教えてもらた魔法の話を、話していたんです。」


 ヴィラレットは、アメルーミラに魔法を教えたとは、後ろめたさがあって、ウィルリーンに言えなかったようである。


 それを聞いてウィルリーンは、眉を顰めていた。


「ヴィラレット。 それは、アメルーミラさんに、魔法を教えていたという事じゃないの? 」


 ウィルリーンの指摘に、ヴィラレットは、バツの悪そうな顔をする。


「はい。 そうとも言います。」


 ヴィラレットは、申し訳なさそうに答える。


 ジト目で、ウィルリーンは、ヴィラレットを見る。


「それで、どうだったの? 」


 ヴィラレットは、申し訳なさそうにしながら、あまり、話したがらない。


「ねえ、ヴィラレット。」


 もう一度、今度は声の調子が強くなって、聞かれてしまったので、ヴィラレットは、仕方なく答える。


「はい、イメージと魔素が結びついて魔法になることから、空気中に水分があるのは、湯気や寒い時の息が白くなる事を話していたら、ルーミラの持っているカップから水が溢れてしまって、ズボンを濡らしてしまったら、ルーミラが驚いてカップを放り投げたら、レオンさんに中の水がかかってしまって、私が空中に飛んだカップを受け取りました。」


 ウィルリーンは、ヴィラレットの言い回しにイラッとした様子をする。


「なるほど、あの時、お前達が魔法が使えるようになった時の話をしたら、魔法を使えなかったアメルーミラが使えるようになったって事なのですね。」


 ウィルリーンが、ヴィラレットの話を要約した。




 今の、一連の話に納得したウィルリーンは、イラついた表情をする。


「何で。」


 ヴィラレットは、まずい事になったと思ったようだ。


 たとえ、アメルーミラが、ジューネスティーン達のパーティーだったからといって、魔法を教えては不味かったのかと思ったのだ。


「何で、私の前で、それをやらないのよ。 魔法が使えない人が使えるようになる瞬間を、また、見れなかったじゃないの。」


 ウィルリーンの表情が、気になっていたフェイルカミラが、ウィルリーンの話を聞いて、少しがっかりしたような表情をした。


「やっぱり、そっちでしたか。」


 自分の知識欲が、異常に高まったウィルリーンは、何かにつけて魔法に関する事に貪欲だったりする。


 そんなことから、アメルーミラが魔法を覚える瞬間に立ち会えなかった事にがっかりしていたのだ。




 今のヴィラレット達の話を聞いていたアンジュリーンと、アリアリーシャが、やっぱりなといった顔で、お互いを見ると、話の中に入ってきた。


「やっぱり、ルーミラは、覚えるのが早かったわね。」


「ですね。 思った通りでしたぁ。」


 それを聞いたレィオーンパードが、面白くなさそうに聞き返した。


「だったら、何で、ルーミラに魔法を教えなかったんだよ。」


 アンジュリーンは、少し考えるような顔をする。


「うーん。 タイミング? かな。」


「そうですぅ。 今回のツノネズミリスの討伐が無ければ、ルーミラにも魔法をって話になったと思いますぅ。」


「何で? オイラは、戦力が増えるなら、ルーミラにも魔法を教えた方がいいと思うけどなぁ。」


 アリアリーシャは、そんなカミュルイアンの発言に、ジド目で睨むと、直ぐに視線を別の方に向ける。


「ルーミラにも教えても良かったけど、ルーミラは、魔物との対戦数が圧倒的に少ないのよ。 その経験の差が、今回の討伐には、負担になってしまうわ。」


 カミュルイアンが、分かってないと思って、アンジュリーンは、アメルーミラに足りてないものを話した。


「いつもジュネスが言ってるでしょ。 魔物を倒しても怪我をしたら、その依頼は失敗だ。 そういうことなのよ。」


 アリアリーシャが、アンジュリーンの話に同意するように言うのだが、いつもの語尾を伸ばす口調ではなかった。


「ああ、それにルーミラの基礎体力だと、今回の戦闘は無理かもしれないわね。 どれだけの回数の魔法を使わなければならないと思っているの! 一度の魔法で倒せる数がどれだけだと思っているのよ。 数万匹ってことは、10万匹は考えなければいけないのよ。 1回の魔法攻撃で50匹倒せたとしても2000回の攻撃が必要になるのよ。 12人で167回も撃ち続けるのよ。 つい最近、冒険者になったルーミラにそんな危険な仕事を任せるなんて、パーティーとして有ってはならないのよ。」


 そこまで言われると、レィオーンパードもカミュルイアンも黙ってしまった。




 アメルーミラの話を聞いていたヴィラレットが、自分自身の事を考えてしまった。


「あのー。 私も今のパーティーに入ってから、それ程長くは無いのですけど。」


 ちょっと不安そうに言うと、アンジュリーンは、ケロッとした表情で応えた。


「ああ、ヴィラレットって、冒険者になる前から、剣とか習ってたでしょ。 あんたは別格よ。 その基礎体力とか、何年も前から訓練してたでしょ。 そういった基礎的な部分って最後の最後で、後もう一撃とか、そういった部分で効いてくるのよ。 ギリギリの所でね。」


「それに、3日間の訓練がありますから、その時に安全率が低いと判断したら、ルーミラと一緒に居残りになるわね。」


 アンジュリーンは、冷静な判断でヴィラレットを見ていたようだが、アリアリーシャは、現実的な話をした。


 ユーリカリア達は、冒険者として経験が長い。


 基礎的な部分で、命のやり取りを行なっていた経験の長さは、力になる。


 また、経験の高さ、技術の高さは、少し見ればわかる事なのだ。


 それが、アメルーミラには、才能が有ったとしても、経験は少ない。


 その経験の差が、大量に魔法を放つとなった場合、大きな壁になると、アンジュリーンもアリアリーシャも思っていたのだ。


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