魔法の原理
ヴィラレットが、魔法を覚えた時の事を、アメルーミラに教えようかと言ってくれたことで、アメルーミラは喜んだ。
アメルーミラは、思わず首を前後しただけで答えてしまった。
「お願いします。 ぜひ、その時の方法を、私にも教えてください。」
アメルーミラは、チャンスだと思ったようだ。
そして、積極的にヴィラレットにお願いしたのだ。
ヴィラレットは、自分にも教えられるのか疑問があったのだが、あの時の事を思い出して同じ事をするだけなら構わないかと思ったようだ。
「じゃあ、あの時にジュネスさんに教わった通りの事を教えるけど、もし、それで、あんたに魔法が使えなかったとしても、私のせいにしないでよ。」
「はい。 もちろんです。」
アメルーミラは、目を輝かせて返事をした。
(これでダメでも、ジュネスさんに教えてもらえたら、魔法が使えるようになるって教えてもらえたのだから、このメンバーの中に居るなら、チャンスはあるはずよ。 ダメ元で、今、教えてもらえて、私にも魔法が使えるようになったら儲けものよ。)
アメルーミラは、誰にも見せないような笑顔をヴィラレットに向けている。
ヴィラレットは、何の気無し言ってしまった事で、アメルーミラに希望を持たせ過ぎてしまったように思ったのだ。
自分自身が魔法を教えられるのか、覚えた時の話をすると言った後に疑問が浮かび上がってきたようだ。
「じゃあ、あの時に教わった内容だから、本当に上手くいくとは限らないからね。」
ヴィラレットは、自信無さげにアメルーミラに言うが、アメルーミラは、そんな事は気にしてない様子で、うんうんと頷いている。
ヴィラレットは、ダメだった時の落胆を考えると、教えても良いのかと思ったのだが、アメルーミラの希望に満ちた顔を見ると教えないわけにはいかないと思ったのだ。
「じゃあ、カップに水を貯める魔法をやってみようか。」
今見せた魔法を教えることにした。
ヴィラレットは、アメルーミラにも自分のカップを持たせてから、説明を始める。
「じゃあ、魔法は、誰にでも使えるものらしいの。 自分の持つイメージを、この周りに有る魔素と結合させると魔法が発動するってことだって言ってたわ。」
「魔素? 」
ヴィラレットは、アメルーミラが、魔法に対して詳しくないのだと思ったようだ。
「ああ、魔素っていうのは、魔物を倒した時に体から出てくる黒いモヤみたいなのが、魔素なのよ。 あれって、炎みたいにゆらゆら揺れて消えていくじゃない。 あれが、大気中とかに有るけど、あまりに小さい物質なので、目に見えないらしいのよ。」
「ふーん。」
アメルーミラは、感心するようにして、魔物を倒したときの事を思い出していたのだ。
「確かに、魔物からは、体から黒いモヤみたいなのが、死んだ後に出てきましたね。 あれが魔法と繋がるんですか。」
「そうらしいわ。」
ヴィラレットも聞き齧りなので、はっきりと肯定する事ができなかったのだが、アメルーミラには、感心したように納得していた。
「じゃあ、自分のカップの中に水を貯める方法だけど、空気の中には、僅かに水分が含まれているのよ。 お湯を沸かしたときに湯気が出たり、寒い時に息が白くなる。 あれが空気中に含まれる水分なのよ。」
アメルーミラは、そう言われて、納得したような顔をする。
「その空気中に含まれている水分を集めるようにイメージすると、イメージと魔素が結合して水を集めてくれるんだって言ってたわ。」
「へーっ、そんな目に見えない水分を集めてたんですね。」
アメルーミラは、冬の寒い時の自分の息、お湯を沸かしていた時に出てきていた湯気を思い出していた。
(空気の中に少しだけ水分が含まれているのか。 でも、水は、重いから湖や川になって流れているわね。 でも、不思議よね。 湯気は、出てくると上に上がっていくわ。 ああ、だから、空気中に小さな粒となって混ざっているのね。)
ヴィラレットの説明を聞いてアメルーミラは、大気中に水分が含まれる水分がある事なんて考えたこともなかったので感心した様子で聞いた話を考察していた。
言われたことが、自分の中で理解できて、魔法についても何となくだが、アメルーミラにも分かり始めたので、アメルーミラは、次の事を教えてもらおうとヴィラレットに声をかける。
「それで、水魔法は、どうやって発動させるのですか? 呪文とか、何か魔法の杖とか、何か魔法を使う道具とかって無いのですか? 」
アメルーミラは、次の事を聞こうと思い、ヴィラレットを見る。
だが、ヴィラレットの表情は、何かいけない物を見てしまったような顔をしているのだ。
アメルーミラには、何でヴィラレットがそんな表情をするのだろうと、不思議に思うと、ヴィラレットは、答えてくれた。
「ねえ、冷たく無いの? 」
ヴィラレットの質問の意味がアメルーミラには、理解できないでいる。
だが、ヴィラレットの視線は、アメルーミラの顔ではなく、下を見ていた。
アメルーミラは、その視線が何を意味しているのか、疑問に思うのだが、何だか太もものあたりが、冷たく感じたので、アメルーミラも下を向くと、手に持っていたカップから水が溢れて、溢れた水が、太ももにかかっていて、ズボンを濡らしていたのだ。
「ふっミャーっ! 」
それに驚いたアメルーミラが、訳の分からない奇声を上げ、持っていたカップを上に放り上げてしまう。
流石に、一番後ろに座っていた2人を気にせず、それぞれの席で、自分達の話に没頭していたのだが、一番後ろの席から聞こえた、その声に全員が振り返る。




