後方支援担当 アメルーミラ
アメルーミラは、今回の遠征には、完全に裏方に回ることになった。
自分の行うことは、地竜の世話と、食事の世話、そして、ジューネスティーン達とユーリカリア達が安心して戦えるようにとのことだった。
だが、最初は、できれば、ジューネスティーン達と一緒に戦えるようになりたいと思っていたのだ。
(私も、ユーリカリアさん達と一緒に別の魔法も覚えたかったわ。)
そう思えるようになったのは、旅の途中で水魔法を使えるようになった事が、アメルーミラにも、自分に魔法が使えると分かったことから、そう思えるようになったと言えるのだ。
ただ、今までの魔法の訓練を見ていて、あれだけの魔法が自分に使えるのか、不安になった事で、裏方で良かったとも思ったのだ。
アメルーミラが水魔法を使える用になったのは、馬車に揺られていた時に、ヴィラレットが話しかけてくれたのがきっかけだった。
「初めまして、私は、ヴィラレット。 私は、ユーリカリアさんのパーティーに入れてもらって間も無いのよ。 だから、あのパーティーの人達についていくので一杯一杯なの。 あなたも最近、ジュネスさん達のパーティーに入ったんでしょ。」
年齢も同じ16歳で、アメルーミラは、猫系の亜人で、ヴィラレットは、チーター系の亜人だった事もあり、科目的に近い事もあって、気さくに話しかけてくれた。
ヴィラレットとしたら、メンバーに入れてもらえたのはよかったのだが、入った後に周りのメンバー達との実力差を見せつけられてしまって、自分の弱さに気がついた事が、アメルーミラにも有るだろうと思ったので、声をかけてくれたのだ。
「はい。 私はアメルーミラと言います。 皆さんは、ルーミラと呼びますから、ルーミラで構いません。」
「あら、もう、愛称で呼んでもらえているのね。 よかったわね。」
ヴィラレットは、アメルーミラに笑顔を向ける。
ただ、アメルーミラには、その笑顔が眩しく感じたのだ。
「でも、あなたは、魔法の才能も持っているわけだから、私とは違います。 私は、魔法なんて使えませんし、あの人たちの実力を考えたら、本当に何も出来ないって実感させられました。 皆さんは、冒険者としての才能を持っておられるから、一緒に魔法の練習もできるのでしょう。 本当に才能を持つ人は羨ましいと思います。」
それを聞いてヴィラレットは、何を言っているのかという顔をする。
「ねえ。 私が魔法を使えるようになったのって、ジュネスさんから教えてもらったからなのよ。 それも少し前の話。 あなたが、まだ、ジュネスさん達のメンバーになる少し前の事よ。」
それを聞いてアメルーミラは、驚くとヴィラレットを食い入るようにみる。
「それって、子供の頃に確認される国の魔法適性のある子供を検査するときに、魔法適性無しと判断されたって事ですか? 」
「え、ええ、そうだったのよ。」
ヴィラレットは、アメルーミラが食い入るように見ながら、話してきたので、その表情に驚きつつ答えた。
アメルーミラは、ヴィラレットも魔法が使えなかったのだが、ジューネスティーンに教えてもらったら、魔法が使えるようになったのなら、自分もジューネスティーンに教えてもらえれば、魔法が使えるようになる可能性が有ると思えたのだ。
この先、どれだけジューネスティーンと一緒に居られるかは分からないのだ。
(魔法が使えない人にも魔法が使えるようになるなら、私も使えるようになるかも。)
その可能性が見えた事で、ヴィラレットに食ってかかってしまったのだった。
アメルーミラは、ヴィラレットが、驚いて引いてしまっている様子を見て、自分の態度を反省したようだ。
アメルーミラにしてみれば、ヴィラレットも先輩冒険者なのだから、それなりに、弁えて接しなければいけない相手だと気がつくと、しょげたような様子をする。
ヴィラレットは、アメルーミラが、しょげた様子を見せてしまったので、魔法が使えるようになった時の事を思い出しながら話し出した。
「そうよね。 私は、自分で魔法が使えるなんて、全く信じてなかったのだけど、言われた通りにしていたら、直ぐに水魔法が使えるようになったのよ。」
アメルーミラは、ヴィラレットに食ってかかったことを反省していたのだが、ヴィラレットは、そんな事は気にせずに普通に話しかけてくれた。
「へーっ、そうだったんですか。 もう少し前に私もこのパーティーに入れたら、私も魔法が使えるようになれたかもしれなかったのですね。」
アメルーミラは、少し残念そうにするので、ヴィラレットは、それを見て同情する。
「ああ、でも、ジュネスさんは、魔法は誰でも使える物なんだって言ってたわよ。 魔法紋を描いたものが発動するなら、誰でも使えるらしいわよ。」
それを聞いて、アメルーミラは、表情を変える。
残念そうにしていた顔が、希望に満ちた顔に変わって、ヴィラレットを見る。
(きっと、私も、あの魔法を教えてもらった時は、こんな顔をしていたんだろうな。)
アメルーミラの表情がコロコロ変わるのを見て、魔法を覚えられた時のことをヴィラレットは思い出したようだ。
ヴィラレットが黄昏ていると、アメルーミラが、声をかけてきた。
「あのー、ヴィラレットさん。 そんなに簡単に魔法って覚えられるものなのでしょうか? 」
少した黄昏ていたヴィラレットに、アメルーミラは、目を輝かせて聞いてきたので、少し引いてしまった。
「ああ、多分、かなり簡単なのかもしれない。 私なんか、ジュネスさんの話を聞いていたら出来てしまったっから、ジュネスさんに教えて貰えば、直ぐに使えるようになると思うよ。」
そう言うと、ヴィラレットは、話すぎたかと思って、水魔法で、自分のカップに水を貯めて飲み始めた。
それを食い入るようにアメルーミラが見ていた。
カップの水を飲んでいると、アメルーミラの視線に気がつく。
その目は輝き、上目遣いで、憧れの人を見るようにしているので、ヴィラレットは何だかむず痒い気分になってしまう。
「ねえ、試しに魔法を教わった時の事、教えようか。」
アメルーミラは、さらに目を輝かせると、思わず首を上下した。




