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シュレとジュネスとウイルリーン


 手前の壁からは、アンジュリーンが顔を出す。


「もう、大丈夫よ。」


 そう言うと、アンジュリーンの横から見慣れたメンバー達の顔が現れた。


 奥の壁からは、ジューネスティーンと男子2人も顔を出した。




 その顔を見て、フィルルカーシャが、ホッとしていると、シュレイノリアが話しかけてきた。


「お前の実力は、どうだ? 」


「でも、今のは、シュレさんが手伝ってくれたからではないですか? 」


「私は、手順を進める中で補助をしただけだ。 今の手順で魔法を実行できれば、同じ事を何度でも可能になる。」


 水素を発火点まで圧縮して爆発させたのだ。


 周りに転がっていたものが、綺麗に無くなっているのを見ると、爆発の凄まじさは理解できる。


 フィルルカーシャは、自分が行った魔法の威力に驚いている。




 ただ、そんな感傷に浸っているフィルルカーシャに、何やら走ってっくる足音が聞こえた。


 その足音を心地良く聞いていると、横からジューネスティーンの声が聞こえてきた。


「シュゥ〜レェ〜。」


 鬼の形相のジューネスティーンが、シュレイノリアを睨んでいた。


 フィルルカーシャは、初めて見るジューネスティーンの怒った顔が新鮮に思えたようだ。


「今のは、何だったのかなぁ〜。」


 そのジューネスティーンの表情とは裏腹に、シュレイノリアの表情は穏やかだった。


「ああ、水を電気分解して発生した気体を一気に圧縮させただけだ。」


 シュレイノリアが、あっけらかんと答えるのを見て、ジューネスティーンは、そんな事は分かっていると言った顔をしている。


「それは、分かっている。 そうなったら、爆発するよね。 当たり前だよね。」


 それを聞いてもシュレイノリアは、キョトンとした表情でジューネスティーンを見る。


「ああ、水素が燃えたのだ、そう言う事もある。」


「いや、そう言うこともあるじゃないでしょ。 そうなるに決まってるでしょ。」


 シュレイノリアは、納得したような顔をする。


「そうなったら、どうだと言うんだ? 」


 シュレイノリアは、開き直ってしまったようだ。


 それを見て、ジューネスティーンもイラついたのだろう。


「お前は、周りにどんな影響が出るか、考えてなかったのか! 一歩間違ってたら、大怪我じゃ済まなかった可能性があっただろう。 もっと、周りに気を配って、変な被害に遭わないように、お前が配慮しなければ、誰がするって言うんだ! 」


 シュレイノリアは、ジューネスティーンの説明で、状況が少し分かったようだ。


 そんなシュレイノリアは、少ししょげたような顔をして答える。


「それは、ジュネスの役目だ。 現にお前達が近づいてきた時に、魔法を行った。 私が暴走してもお前が止めてくれると信頼してたから、行ったんだ。」


 ジューネスティーンは、何とも言えない顔をする。


 シュレイノリアの信頼という言葉で、怒っていた気持ちが、落ち着いてしまったようだ。




 そんな話をしていると、ユーリカリア達もジューネスティーンに合流してきた。


「シュレ、今のは何だったんだ? あの魔法は、フィルルカーシャがやったのか? 」


 ユーリカリアが、質問してきた。


「そうだ。 フィルルカーシャの魔法だ。」


「今の魔法は、私にも使う事ができるのでしょうか? 」


 控え目なヴィラレットが、先輩達を差し置いて聞いてきた。


「ああ、原理さえ覚えてしまえば簡単に使える。」


「凄い魔法だった。 でも、あの魔法は、危険ではないでしょうか。」


 慎重な意見をフェイルカミラが、言ってくるので、ジューネスティーンは、シュレイノリアに対する注意の言葉が無くなってしまっていたのを誤魔化すようにフェイルカミラに答える。


「はい、おっしゃる通りだと思います。 今の魔法は、人前では使わない方が良いでしょう。」


「そうですね。 あれだけの爆発力を、1人の冒険者が持っているとなると、変なところから目をつけられそうですね。」


 フェイルカミラが納得する様子を見せる。


「ウィルリーン。 今の魔法の原理は、理解できたか? 」


 ユーリカリアは、今まで黙っていたウィルリーンに声をかけた。


「イヤ、水が何であんな爆発を起こしたのか、全く理解できない。 水蒸気が爆発したなんて聞いた事がない。 今のは本当に魔法なのかと、疑ってしまった位だ。」


 それを聞いて、ジューネスティーンが、説明を始める。


「そうですね。 水は、温度を掛けて蒸発させても、水は水です。 今のは、水を電気分解して、水素と酸素に分解したのですよ。 ほら、水球に2本の鉄の棒が刺さったじゃないですか、あれは、地中の鉄とか、金属を錬成魔法で集めて棒にしたんですよ。 それと、2本の棒から泡が発生していましたけど、あの棒が電極となって水の中に電気を流したので、水に刺さっていた棒から泡が出たのです。 その泡が、水を分解してできた、酸素と水素なんですよ。」


 ウィルリーンは、今の説明が理解は出来てない様子だが、水を分解したとかは、以前にも聞いた自然科学の一環だと理解は出来たようだ。


「なるほど、水を分解すると、気体になって、その気体は、今のように爆発するように燃えるという事なのだな。 燃えるというより爆発するような気体なんて、こんな物を作り出せるのか。」


 ウィルリーンは、原理を理解するのではなく、そういう物なのだと、認識するだけにとどめたようだ。


 あまりに膨大な知識を必要とする自然科学なのなら、今は、そういう現象が起こるのだとだけ理解して、何でそんな事になるのかまでは、追求することをやめているように思えた。


 理解を深めるには、最初から順序立てて説明を求める必要があるのだが、今は、そんな事を考えるより、丸暗記の要領で、発生した現象だけを覚えておくつもりのようだ。


「多分、大丈夫だ。 後で小さいサイズで試してみる。」


「ああ、そうしてくれ。」


 ユーリカリアもウィルリーンも、今回の訓練で吸収出来るものは全て吸収してしまおうと思っているようだ。


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