ユーリカリア達の魔法訓練
ツカラ平原に入ったジューネスティーンとユーリカリア達のパーティーは、翌日(出発3日後)から範囲攻撃魔法の訓練を行っていた。
魔法に関する基礎知識は、ジューネスティーンを通じて、ユーリカリア達に伝わっているので、範囲攻撃魔法になるように指導をするだけだった。
そのため、原理だけを教えるだけで済む。
ただ、火魔法については、ユーリカリアとシェルリーンが、まだ、使えなかったことと、この数日で覚えられるかという不安も有ったので、2人には別の魔法で対応してもらうことにする。
火魔法を使える4人には、使ってもらう魔法の説明をする。
ツノネズミリスは、地上を走る魔物で、体長60cm程の大きさである。
攻撃力は弱いので、単体では、Dランクの魔物に分類されている。
単体ならば新人冒険者でも倒す事が可能なのだが、発生すると数千匹単位となってしまい、冒険者のような個人では、次から次へと攻撃してくるツノネズミリスを倒しきれずに、戦線を維持できなくなるのだ。
一般的には、軍のような組織的な対応を行う魔物なのだが、今回は冒険者に依頼された。
冒険者が、その大量のツノネズミリスに対抗するには、範囲攻撃魔法で一気に倒す必要がある。
その為、ジューネスティーン達は、全員の範囲攻撃魔法の精度を上げ、確実にツノネズミリスを葬る為に、このツカラ平原で魔法の訓練の後に、ツカ辺境伯領に入ることにしたのだ。
ツノネズミリスは、地を走る魔物で、飛び上がっても1m程度という事から、地面に広範囲に炎を作る魔法が有効なので、その方法を4人に説明する。
基本的には、燃える気体、水素・メタン・硫化水素といった、空気中に含まれる僅かな成分を集めて炎を発生させるのだが、炎を扱うことと、大量のツノネズミリスに対抗する為、可能な限り自分たちから離れた場所に炎を発生させたいのだ。
撃ち漏らして直接攻撃を行うようになったとしても、十数匹程度にする事で自分達の被害を最小限にどどめる為の処置である。
燃える気体は、可能な限り地面に集める事、広範囲に地面に集めた気体を発火させて、一気に燃え上がらせて撃退する。
ただ、数万匹のツノネズミリスとなると、1回の攻撃で倒せる数が、直径20mの炎で倒せる数は、魔物の大きさを考えれば、30匹前後になるので、1万匹なら、333回の攻撃が必要となる。
数万匹となれば、最低でも3000回を攻撃できる数を準備する必要があるので、1人250回は魔法を撃つことが求められるのだ。
その為、初日には、魔法のレクチャーを午前中に行い、使い方を覚えてもらうと、午後には、限界まで魔法を使う事を求められた。
ただ、ユーリカリアとシェルリーンについては、火魔法ではなく、雷魔法を使ってもらうことにする。
ノルマは、1人300回の魔法を放つことが求められた。
「これから魔法の耐久戦の訓練を行うので、1人300回、今の魔法を放ってもらいます。 夕方まで6時間ありますので、1時間あたり50回なら、1分に1回放てれば可能な回数ですから、みなさんなら、3時間もすれば300回は可能だと思います。」
その言葉に、ユーリカリア達は、ウンザリした顔をするのだが、自分達の命に関わることなので、渋々、ジューネスティーンの言葉に従った。
ただ、ジューネスティーン達は、その訓練でも、20分ほどで終わらせてしまうと、それぞれが、ユーリカリア達に付いて訓練を見守っていた。
その格の違いを目の当たりにしつつ、ユーリカリア達は魔法を連続で放つのだが、6人とも100回を超えた時点から魔法の威力が弱まったり、次の魔法発動までの時間がかかってしまった。
流石に、ウィルリーンは、30分ほどでノルマを達成したのだが、表情を見ると、かなり、疲れた様子をしていることから、ここまで、連続して魔法を放ったことは、なかったのだろうと思われる。
ユーリカリアと他のメンバー達は、魔法が覚えたてだった事もあり、手間取ったのだ。
だが、ユーリカリア達メンバーも、1時間を過ぎてくると、ノルマを達成させ始めた。
最初にノルマを達成させたのは、フィルルカーシャだった。
終わるとグッタリした様子で地面にへたり込んでしまった。
徐々にノルマを達成させると、結果的に全員が2時間以内でノルマを達成させてしまった。
終わったところで、休憩をすることにしたが、その時、ジューネスティーンは、シュレイノリアと相談する。
ユーリカリア達の能力の高さが思った以上だったので、もう少し課題のレベルを上げた方が良いとなったのだ。
当初は、ユーリカリア達に魔法を使わせるとは言っていたが、ルイゼリーンの手前、ユーリカリア達を出汁に、引き受けることになってもいけないと思い、ユーリカリア達にも、魔法を使わせると言ったのだが、今の状況を見て、ユーリカリア達にも、しっかり魔法攻撃のメンバーになってもらおうと考えているのだ。
ユーリカリア達のメンバーは、休憩前には、げっそりしていたが、休憩時にアメルーミラが、全員に軽いおやつを用意してくれたので、食べたり、お茶を飲んだりして落ち着いたようだ。
そんな、休憩中の6人を見ていた、ジューネスティーンとシュレイノリアは、ユーリカリア達の回復が早い事を考えれば、もっと課題のレベルを上げて、3日間で使い物になるようにと、ジューネスティーンとシュレイノリアは考えていたのだ。
後半は、同じ回数をもう一度行うことになるが、次の魔法を撃つまでの、インターバルの時間を短くさせることを意識させた。
その訓練をさせると、全員が1時間以内で課題をクリアーできた。
終わった後の疲れ切った表情を見ると、本格的な魔法を使い始めたので、イメージをする為に脳に大きな負担を強いている事が分かる。
その使われたエネルギー補給の為に、アメルーミラに準備させている、おやつを全員に渡させる。
軽くおやつを食べさせるのは、回復の様子を見て、まだいけるのかどうかをジューネスティーンとシュレイノリアは確認していたのだ。
その結果を見て、ユーリカリア達に、もう一度、同じ訓練を行わせた。
さすがに、今度は、嫌そうな顔をされたが、それでも、上位ランカー達だったこともあり、課題をこなし、前よりも早く終わらせられることができた。
そのユーリカリア達の対応力に、ジューネスティーンも舌を巻いたようだった。




