アリアリーシャとレィオーンパードの戦闘
ジューネスティーンが1匹を仕留めると同時に、アリアリーシャとレィオーンパードは、2人で1匹の魔物を引き寄せる事に成功した。
2人を1匹の魔物が追いかけるようになると、追いかけられる2人は二手に別れると、魔物は、結局、アリアリーシャを追いかける形となる。
それを見たレィオーンパードは、アリアリーシャを追う魔物を追いかけ出し、後ろから魔物に迫る。
レィオーンパードは、加速して魔物との距離を詰める。
(やっぱり、にいちゃんのように一発で仕留められそもないな。)
レィオーンパードは、自分の持つ剣の長さと、致命傷を与えられそうな、胸・首・頭の位置を考えると、1回の攻撃で魔物を倒せそうにないと判断したのだ。
レィオーンパードは、パワードスーツの通信回線を開く。
「姉さん。 魔物の足を一旦止める。 左後脚を狙う!」
( ! )
それを聞いてアリアリーシャは、パワードスーツの中で困った表情を浮かべる。
(ちょっとぉ、アンタが左足だと、私は右足じゃないの。 私は、左利きなのよ。 少しは考えて欲しいわね! )
アリアリーシャの思いに気がつく事なく、レィオーンパードは、自分の言った通りに魔物の後ろから、腰の辺りを狙って、今まで以上のスピードで迫る。
魔物に攻撃を加えると、腰に大きな傷を与えた事で足を止める事に成功すると、2人でヒットアンドウエイで徐々に魔物の攻撃力を削いでいく事になる。
左腰に深傷を負った魔物は、左後脚を引きずるようになり、一気に速度が落ちると、魔物の動きがとまる。
その魔物の前を、レィオーンパードが魔物の気を引くように逃げると、今度は、魔物に追われたアリアリーシャが、グルリと右周りに旋回すると、右手で持った剣で、魔物の右腰に攻撃を加えて、後ろ足完全に使えなくさせる。
利き手と逆になるのだが、魔物の動きが止まっていた事で、利き腕でない右腕でも魔物に刃を入れることができた。
魔物は、右腰にまた深傷を負うと、深傷を負わせたアリアリーシャに睨みを効かせるように後ろを振り返る。
後脚が両方とも深傷を負った魔物は、完全に動きが止まった事と、後ろに回避していったアリアリーシャを睨んでいることから、レィオーンパードは、一気に180°方向を変えると、魔物に迫る。
魔物は、首を右に回して、アリアリーシャを見ているので、左の首が伸びきって、前方にいるレィオーンパードから丸見えになる。
レィオーンパードは、ホバーボードを浮かせ気味にして走らせると、体を低くして、ホバーボードと並行に剣を構えられる程に体を低くした。
すれ違いざまに、魔物の左頸動脈を狙うのだ。
だが、魔物も微かに風を切る音に反応したのか、レィオーンパードが迫ってくると、正面を向きながら頭を地面につけるようにしたので、レィオーンパードは、魔物の上を通過する形になる。
直前の魔物の行動に、狙っていた左の頸動脈への攻撃が無理だと分かると、切先を下に向けて、魔物の背中に刃を入れる。
直前の修正なので、骨を切るまでにはいかなかったが、背中に大きな傷を入れることに成功する。
レィオーンパードは、魔物を通過すると、今度は、左へ回避行動を取ると、魔物を中心に回るように移動するので、当然、魔物の視界に入ってくる。
魔物は、レィオーンパードの攻撃で背中を大きく抉られたが、まだ、大きな牙も両前足は健在である。
まだ、攻撃手段はあることからか、魔物は威嚇するようにレィオーンパードを見る。
その魔物の威嚇をレィオーンパードは、魔物の挑発と受け取ったのか剣を構えて魔物に向かっていく。
魔物の斜め右前方から一直線に、魔物の目を狙うように刃を向けて、ホバーボードを走らせる。
あと1mと迫ったところで、魔物の首の左側に後ろから刃が入ると、その刃は、首の後ろに引かれ、首の後ろ側まで、綺麗に刃の跡が残る。
レィオーンパードとは、反対方向から来たアリアリーシャが魔物の上を通過する際に魔物の首に刃を入れたのだ。
魔物はその攻撃に怯むと、レィオーンパードは、魔物の鼻先を横切るように通過するのだが、その際に魔物の右頸動脈と喉を切り裂いた。
通常なら魔物の鼻先を通り過ぎるのだから、牙や前足の爪の餌食になるところだが、一瞬先にアリアリーシャが致命的な攻撃を加えていたことで、レィオーンパードの攻撃も成功した。
ただ、レィオーンパードが囮となって迫っていたから、アリアリーシャの攻撃も成功したと言える。
2人の連携によって、魔物は左右の頸動脈を切られてしまうと、最後に立ち上がろうとあがくのだが、力尽きて地面に伏せるように頭を落とす。
魔物は、黒いモヤが炎のように舞い上がるのだが、夜の闇にかき消されて遠目では判断できないが、2人は手応えから致命傷は与えられたと判断すると、次の攻撃に備える。
魔物は、シュレイノリアのアイスランスで倒した1匹、ジューネスティーンが迂回して突入した時に居合斬りで倒した1匹、そしてレィオーンパードとアリアリーシャの連携で倒した1匹となり、残りは2匹となる。
残った魔物もジューネスティーンの一撃で1匹が簡単に倒された事で警戒を強めたようだ。
このクラスの魔物にしてみれば、5匹も集まれば、10人程度の冒険者なら、ただの餌だと思ったのだ。
しかも、平地のど真ん中にテントを張った程度で野営しているのだから、餌が向こうからやってきて、食べて下さいと言っているように思ったのだろう。
だが、人に被害は無く、魔物は、3匹を葬られてしまったのだ。
明らかに戦闘力が違いすぎるのだが、魔物がそう考えたのかは分からないが、ジューネスティーンと対峙していたのだが、もう1匹も倒されて、2匹を3方から囲むようにパワードスーツが迫っている。
1匹の魔物は、ジューネスティーンが、一歩一歩、歩いて迫るので、身構えて距離を詰めようとするジューネスティーンの間合いを計るようにしていると、上空に魔法紋が浮かび上がる。
魔法紋から、ラクビーボール型のアイスランスが現れると、直ぐに消えてジューネスティーンを威嚇して飛び出そうとした魔物の頭を粉砕した。
その魔物は、そのままうずくまり、体から黒いモヤが炎のように舞い上がる。
残りの魔物は1匹となる。
ジューネスティーン、アリアリーシャ、レィオーンパードの3人は、徐々に包囲の輪を狭めていく。
間を抜ける事も可能だろうが、3人の包囲の間を抜けようとすれば、一瞬で、ホバークラフト機能で間を通過する際に距離を詰める事が可能なのだ。
魔物もそれを3人の雰囲気から読み取ったのか、徐々に迫るパワードスーツに睨みを効かせるように後ずさっている。
ユーリカリア達も残り1匹となった事で、様子を伺っている。
そんな中、魔物は、起死回生のための一手を打ってくる。
魔物は、警戒していたパワードスーツの攻撃より、テントの方にいる10人の方が攻撃力が低いと判断したのだろう、テントの方に向かって走り出した。




