野営
1日目の夜は、宿でそんな話が有ったが、2日目は、移動距離も300kmを超えた事で、当初の予定通り、ユーリカリア達の範囲攻撃魔法の訓練ができそうな場所で野営をすることになった。
ツカ辺境伯領まで、200kmを切った事、到着は、帝都を出てから7日後と連絡をしているのだから、ここで、3日間の特訓のための時間が取れることとなる。
その為、野営をして全員に範囲攻撃魔法を覚えてもらう事になる。
シュレイノリアにしてみれば、ギルドでのミーティングの時に日程を間違えてしまったのだが、半日の訓練だったものが、自分の計算ミスのおかげで、3日間の時間が取れたことに満足した様だ。
だが、さすが、2日間で300km以上の移動をしてしまうと、ユーリカリア達にも7日間の日程だったのに、2日間で半分以上、移動してしまった事で、何で7日間とシュレイノリアが言ったのか気になった様だが、3日間の特訓と聞いて、ツノネズミリスに対応するためには必要な事だろうと納得したようだ。
テントの設置を行うユーリカリア達だったが、シュレイノリアは、張られたテントごと収納魔法から出していた。
唖然とするユーリカリア達だが、テントの設営には、ジューネスティーンを含む男子3人が手伝った事で、早く設営ができたようだ。
その間にアリアリーシャを中心にアンジュリーンとシュレイノリアとアメルーミラが手伝って、夕食の準備を始めていた。
テントの設営が終わると、ユーリカリア達も夕食の準備を手伝い出した。
かまどは、アリアリーシャが錬成魔法で作ってしまったので、食材の加工と調理だけになっていた。
男子3人は、テーブルや椅子を用意すると、アメルーミラが声をかけてきた。
「あのー、夜はどうするのでしょうか? この辺りの魔物ですけど、夜に襲って来るなんて事はないのでしょうか? 」
「夜は、順番で警戒をするんだ。 周りに篝火を焚いて魔物が近付くのを警戒する。 でも、これだけの人数が居るから、3日間の野営でも、見張りは、一度ですみそうだね。」
だが、アメルーミラは、そんな事を気にしている様ではなかった。
ジューネスティーンは、その表情が気になって尋ねてみた。
「何か気になる事でもあるの? 」
「いえ、そういう訳ではないですけど、テントが多いので、監視してても死角になる場所があるなと思ったんです。」
アメルーミラに言われて、確かにテントの向こう側は死角になってしまう。
それは、仕方が無いので、篝火などで明るくして対処していたのだ。
「その死角を何とかする方法が有れば、良いのだけど、いつもは、人の目と耳で対応しているんだ。 もし、ルーミラが何か考えがあるなら、教えてくれないか? 」
アメルーミラは、少し自信が無さそうに答えた。
自分が、旅に慣れているジューネスティーンに意見を言って良いのかと思ったのだろう、控えめに離し始めた。
「そのー。 私の住んでいた所は田舎だったので、魔物と言うより、大型の動物の被害が有ったので、家の周りには、紐に鳴子を付けておいたんです。 侵入してきたら家の周りに張ってある、その紐にひっかかると音が鳴る様にしていたのです。 時々、小さな動物が引っかかったりしましたけど、危険を知らせるには都合が良かったんです。」
ジューネスティーンは、今の話を聞いて心に響くものが有ったようだ。
「すまないが、詳しく聞かせてもらえないか? 」
そう言うと、しゃがみ込んで、地面に簡単に説明の為に絵を描いてもらった。
それは、紐を野営地を囲む様に張って、その紐に触れると鳴子が音を立てるという物だった。
「単純だけど、効果はあるな。」
ジューネスティーンは、考えてると、また、つぶやく。
「必要なものは、紐・板・鳴子の筒・杭程度なら、何とかなるかもしれない。」
すると、シュレイノリアの方を見る。
「シュレ、紐とか収納魔法の中に入ってなかったか? 」
シュレイノリアは、一瞬考えるが、すぐに、ジューネスティーンに答えるではなく、直ぐに収納魔法をジューネスティーンの前に展開すると、魔法紋の中から紐が現れる。
繊維で編んである直径5mmの紐が現れる。
長さもかなりの長さがあるので、何でシュレイノリアがこんな物までシュレイノリアが持っているのか疑問に思った様だ。
「なあ、何で、こんな物まで持っているんだ? 」
「ああ、昔、始まりの村に居た時に畑用に使ったものだ。 収納魔法の中に入れっぱなしにしておいた。」
「ふーん。」
とりあえず、紐の確保ができた。
「カミューとレオン。 ちょっと手伝ってくれないか? 」
今度は、2人を呼ぶ。
2人が来ると、アメルーミラが地面に書いた絵を見せると、簡単に説明をする。
「なあ、2人にこれのパーツを作るのを手伝ってもらいたいんだ。 錬成魔法で作りたいんだが、一緒に作ってくれないか。」
「それは、構わないけど、できればサンプルが欲しいね。 多分、レオンは変な物を作りそうだから、あった方が良いよ。」
カミュルイアンの言葉に、レィオーンパードは、不服そうにカミュルイアンをみる。
「何で、そう言い切れるんだよ。 俺だって、ちゃんと作れるよ。」
「どうだか。 じゃあ、これの厚みはどれだけにするんだ?」
カミュルイアンは、鼻で笑うと、具体的なことを聞いた。
「うーん。 この位。」
レィオーンパードは、そう言って、両手で厚みを10cm程度を示す。
「ほら、お前、紐に付けるのにそんなに大きな物どうするんだ。」
レィオーンパードは、頬を膨らませる。
「じゃあ、サンプルを作っておくよ。」
そうジューネスティーンが言うと、小さなホームベースの様な板を一枚作ると、上部に屋根の様な板を取り付けた。
すると、今度は、細い筒を何本か作り出した。
「あっ、穴が必要か。」
穴を開けると、板の方にも同じ様に穴を開ける。
すると、ジューネスティーンは、穴に紐を通すと筒と板を紐で縫い付けるように止めてしまった。
それを見たアメルーミラが、困った様な顔をする。
「ルーミラ? 」
レィオーンパードが、アメルーミラが困った様な顔をしているので、その顔を見て声をかけたようだ。
「紐は、緩めて、筒を垂れ下げておかないと、板が揺れても筒が揺れてくれないです。 筒が揺れて板に当たった時に音を出すので、適度に揺れる様にしておかないと聞こえないと思います。」
そう言われて、ジューネスティーンは考える。
「ああ、そうだね。」
そう言うと紐を緩めて垂れ下げる様にする。
降ってみると、土から錬成魔法で作ったためか、甲高い音がした。
ジューネスティーンは、納得する。
「じゃあ、こんな感じで、後、板1枚に筒が6個用意してくれるか。 後、1人3セットね。 後、アメルーミラ、俺達が作ったのを紐で止めてくれないか。」
「分かりました。」
そう言うと、4人は、鳴子作りに入った。
鳴子が出来上がると、地面に杭を打つと、紐を杭につけて、鳴子を紐に取り付ける。
「杭の近くに鳴子を付けると、紐が引っ張られるので、ある程度平行になりますから、弛んでいても、引っ張られるので、上手く引っ掛かると思います。」
「そうだね。 でも、この鳴子が不要になることの方がありがたいけどね。」
ジューネスティーンの話にニコリと笑う。
「そうですね。 寝ている時に襲われたら嫌ですね。」
鳴子を設置すると、アリアリーシャが、食事の準備ができたことを告げてきた。
4人も夕食を取るために、メンバーの方に行く。




