シュレイノリアの都合
初日の移動が終わると、途中の宿場町で宿を取った。
ジューネスティーンと、シュレイノリアが同室という事で、ウィルリーンとシェルリーンがカミュルイアンと同室にする様に迫ったが、アンジュリーンとアリアリーシャの説得に応じて、カミュルイアンはレィオーンパードど同室になった。
後は、女子同士の2人ずつに分かれて、部屋割りが決まる。
ただ、アンジュリーンとアリアリーシャから、ジューネスティーンとシュレイノリアの関係について聞いた、ユーリカリア達のメンバーには、少し信じがたい関係に驚いていた。
「まあ、魔法攻撃の要の人だからな、睡眠不足でまともに攻撃できないとなると、攻撃力も半減してしまう。」
ユーリカリアは、これからツノネズミリスの討伐の事を思って納得したようだ。
「そうですね。 世の中に、男と女の関係が一つとは限りませんから、そんな関係が有ってもおかしくは無いでしょう。 私達の常識が全てではありません。」
フェイルカミラが、悟ったような口ぶりで言う。
「すみません。 私たちは最初からだったので、あまり気にして無かったのですけど、知らない人からしたら、大変な事ですよね。」
アンジュリーンが申し訳なさそうに言うと、そんなアンジュリーンを見て、フィルルカーシャが、アリアリーシャに話しかけた。
「いいんじゃなの。 シュレは、男の気持ちよさを知らないのなら、それはそれで構わないんじゃない。 でも、あんた達のパーティーは、男女3人なのに浮いた話もなさそうね。」
「ええぇ。 私たちは、同属の亜人もいませんしぃ、恋愛対象にはなれないですぅ。」
フィルルカーシャがアリアリーシャは、どちらもウサギ系の亜人という事で気があったのか、2人もジューネスティーンとシュレイノリアの関係について話していると横から声が掛かった。
「でも、何となくわかる様な気がします。 昔、私は、よく、兄の布団に潜り込んでましたけど、何だか落ち着きますよね。 男の人の温もりが丁度いい感じなんですよ。 シュレさんもそんな感じなのかもしれませんね。」
ヴィラレットが、フィルルカーシャとアリアリーシャの話に入ってきた。
そのヴィラレットの話を聞いた2人、30歳近くなるアリアリーシャと、26歳のフィルルカーシャには、そのヴィラレットの少女じみた感覚に、少し引き気味になる。
フィルルカーシャは、恐る恐る、ヴィラレットに聞く。
「なあ、ヴィラレット。 お前、その兄貴の布団に潜り込んでいたのは、子供の頃の話なんだよな。」
フィルルカーシャは、何かシュレイノリアの感覚と同じものを感じた様子で、ヴィラレットに聞いた。
「ええ、2年前までは、兄の布団に潜り込んでましたよ。 でも、何でだか、お母さんに叱られてしまって、それ以後は、兄の布団には入れてもらえなくなってしまいました。」
それを聞いて、アリアリーシャは、ため息を吐くと、フィルルカーシャも、嫌そうな顔をしている。
「なあ、ヴィラレット、今、お前、いくつだ? 」
そう言われて、ヴィラレットは、キョトンした顔をする。
フィルルカーシャは、ヴィラレットの歳を知っているのに何で聞いてくるのか不思議に思ったのだ。
「えっ! 16歳ですけど。」
フィルルカーシャもため息を吐いた。
ヴィラレットには、2人がため息を吐いたことが、何でなのか分からなかったので、不思議に思ったようだ。
「なあ、お前、14歳まで、自分の兄貴の布団に入って寝てたのか? 」
「ええ、ベットでしたので少し狭かったですけど、体がピッタリ当たって、寒い日は、とても暖かかったですよ。」
アリアリーシャは、ここにもシュレイノリアと同じ感覚の女子が居たのかと思った様だ。
(あーっ、ここにもお子ちゃまがいたのね。 だったら、いっそのこと、ジュネスにこの子も預けた方が良さそうかもしれないわ。 どこにでもこんな子がいるのね。 変な男に引っ掛からなければいいけど。)
がっかりした様なアリアリーシャを見て、フィルルカーシャは、気になった事をヴィラレットに聞いた。
「ヴィラレット、お前、弟か妹はいるのか? 」
「いえ、私は兄と姉は居ますが、妹も弟もいませんよ。」
「そうか。」
(だったら、母親のお腹が大きくなった所は見たことがないわけか。)
フィルルカーシャは、何かに納得した様子になる。
ヤレヤレといった態度をするフィルルカーシャは、少し呆れ気味にヴィラレットに話す。
「そのうち、シェルリーンにでも、子供がどうやってくるられるか聞いておけ。」
「そうですね。 ちょっと疑問だったんですよ。 じゃあ、今から聞いてき。」
「「今はダメ!」」
ヴィラレットの言葉に被せるように、フィルルカーシャとアリアリーシャが否定した。
その姿を見て、ヴィラレットもこれはまずいと思った様だ。
「はい。 この討伐が終わった後にします。」
ヴィラレットが素直に答えてくれたので、フィルルカーシャとアリアリーシャは、ホッとした様だ。
シェルリーンとウィルリーンとすれば、子供を儲ける最大の機会が訪れているのだから、一時たりとも逃したくはないのだろうが、周りは、討伐前にそんな事をした後に激しい戦闘に入ったらまともに授かるわけはないと周りは思っているのだ。
ただ単に、カミュルイアンに自分たちに向いていて欲しいと考えれば、常々、そういった行為をして繋いでおきたいと思っているのかもしれない。
2人のエルフの思惑は、誰も聞こうとしない。
そう簡単に子供ができないエルフ属が何でカミュルイアンに毎回迫っているのか、もっと計画的に確実に受胎できるように計算しないのか、もっと考えれば、それ程頻繁にカミュルイアンの元を訪れなくても良いと指摘をすることは無かった。




