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3人の追跡隊

 

 ヲンムンと2人の魔法士は、街道を走る。


 本来であれば、情報部所属のヲンムンなので、自分にイニシアチブが、ある程度持たされると思ったのだが、同行する2人の官位が高いこともあり、かなり、下に見られてしまっていた。


(くそ! この女ども、中佐の前と全く違うじゃないか。 準備の時は、移動の準備で、話ができなかったから分からなかったが、この2人、かなり、性格が悪いじゃないか。 楽しめるかと思ったが、これじゃあ、ついていくだけでやっとじゃないか。)


 本来であれば、ジューネスティーンを監視していたヲンムンに、イニシアチブがあって、ヲンムンの意見を聞いて、2人が同意して行動するようになるだろうと思っていたのだ。


 ただ、今までの会議における、意見がヲンムンの意見には、全く、みるものがないと、2人に判断されてしまっていたのだ。


 使えそうもないヲンムンに意見を言わせて、作戦が失敗に終わることを恐れた、2人のウェーブは、セイツ少尉の官位が、上なのを利用して、ヲンムンを使うことにしたのだ。


 忌々しそうにヲンムンは、前を走る2人の背中を見ていると、前を走るメイミンが、ヲンムンを振り返って声をかけてきた。


「おい、軍曹! 遅れているぞ。 お前のお陰で、到着が夜になってしまうぞ! 」


 ヲンムンは、イラッとした顔をする。


「はい、メイッ、いえ、ワツ曹長。」


 ヲンムンは、メイミン曹長と言いそうになって、慌てて、ワツ曹長と言い直すと、地竜を少し急がせて、2人の後ろに近づく。


 ヲンムンが、遅れを取り戻すと、セイツ少尉が、ジロリとヲンムンを睨んだ。


「少しは自覚しろ。 これは、情報部の仕事なんだ。 本来は、お前1人で行うはずなのに、私たちを巻き込んだのだ。 それなりの仕事はして欲しいものだ。」


 その言葉に、流石にヲンムンも、イラついた様子を見せるが、階級が上のセイツ少尉には、反論ができずにいた。


「はっ! 」


 ヲンムンは、仕方なく、思ったようだが、文句を言われまいと、セイツ少尉に聞こえるように答えた。




 メイミン曹長にしても、帝国軍の魔導部隊に所属しているのだから、軍内部ではエリートに位置する。


 そのエリートを情報部の為に使われているのは、ヲンムンが無能だからと、言葉の裏に隠れるように、メイミン曹長は言ったのだ。


「メイミン曹長、その位にしておけ、サイツ軍曹には、今まで見てきた事を途中で教えてもらうだけで良い。 あとは、私とメイミン曹長で何とかするしかない。」


 その言葉にヲンムンは、更にイラついた。


(この女達、俺は、おまけみたいじゃないか。)


 そう思うのだが、メイカリアの前での会話は、自分の考えていることの先を、2人は話していたのだ。


 こうやって、ギリギリでも、時間を有効に使おうとしている事からも、自分より階級が上になっただけの理由はあったのだと、ヲンムンも理解はできるのだが、納得はできてないのだ。


 自分より、若い女の士官の指揮の下で、実行部隊として、仕事をする事に、納得できないでいるのだ。




 ヲンムン達は、帝都から32km先のビズトマで、その日の夜は過ごす事になる。


 ただ、着いたのは、太陽も沈んで、西の空が、僅かに赤い程度となり、あたりも、だいぶ暗くなっていた。


 街の入口の門は閉ざされており、宿直の門番に、身分を証明し、それと事情を説明して街の中に入る。


 街に宿を見つけると、メイミンが、直ぐに地竜から降りると手綱をヲンムンに渡す。


「持ってなさい。」


 不機嫌そうにそう言うと、宿の中に消える。


 その姿を見ていたコリンも、ため息を吐く。


「もう少し、早く着けると思ったのだが、少し遅くなってしまった。」


 コリンは、ヲンムンのお陰で遅れてしまったと、嫌味のつもりでつぶやいた。


「そうですか。 完全に暗くなる前にビズトマに入れたのですから、良かったではないですか。」


 ヲンムンは、コリンの言葉に答える。


 だが、コリンとしてみれば、夕日が西に沈む前にはビズトマに入れると思っていたのだが、ヲンムンが遅れ気味だった事で、思っていたスピードより、少しゆっくり走ったのだ。


 それを嫌味として言ったのだが、ヲンムンには通じなかったのだ。




 嫌味というのは、能力の近い者には、最大限の侮辱となるのだが、能力の離れた者、意味が理解できない者には、侮辱のように取られることは無く、むしろ、叱られなくて良かったと思うものである。


 コリンは、そのヲンムンの態度から、ヲンムンの能力を確認したのだ。


 ただ、同じ事をメイミンに言ったとしたら、メイミンは、屈辱を受けたような顔をしてヲンムンを睨みつけた事だろうが、ヲンムンは、その表情を見ても、何の事か理解できずにいただろう。




 メイミンが戻ってくると、コリンに伝える。


「帝国軍のツケで泊まらせてくれます。 それと奥に厩舎が有りますので、そちらに地竜を連れて行って欲しいとの事でした。 私と軍曹で地竜を連れて行きますので、少尉は、中で寛いでいてください。」


「そうか。 助かる。」


 そう言うとコリンは、地竜から降りて手綱をメイミンに渡す。


 メイミンは敬礼すると、コリンは、宿に入る。


 それをヲンムンは、ボーッと眺めていた。


「貴様は、本当に情報部に所属する帝国兵なのか。 こんな部下を持たされたキツ中佐は、何とも不憫でならないな。」


 メイミンは、吐き捨てるように言うと、コリンの地竜の手綱を引いて、宿の脇から裏の厩舎に回る。


 今の話を聞いて、ヲンムンはムッとするのだが、エリートの魔導部隊という事もあって黙って、2匹の地竜の手綱を持ってメイミンの後を追う。




 厩舎で地竜を渡すと、メイミンが、収納魔法を展開して、地竜の餌を出すと、その餌を手に取り、厩舎の世話係に渡す。


「この3匹の地竜は、この餌を与えて欲しい。 ツカ辺境伯領まで、急ぎの用事なので、消化の良い餌を用意してあるのだ。 この餌意外は、水以外与えないで欲しい。 それと、ゆっくりできるように休ませてやってほしい。」


 そう世話係に伝えると、メイミンは、宿に入っていく。


 ヲンムンも、地竜を世話係に渡すと、メイミンの後を追った。


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