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3人の追跡隊の出発


 ヲンムンが、わかってないのを、魔法士の3人が、馬鹿にしたような目で一瞬見るのだが、メイカリアの手前、すぐに表情を戻すと、ヲンムンに、状況の説明をする。


 3人の話を聞いて、メイカリアは、安心した様子を見せる。


 そんなメイカリアを見て、メイミン曹長が話を続ける。


「おそらく、彼らは、どこかで、ツノネズミリスに対する訓練を行うのであれば、範囲攻撃魔法を行える広い場所が必要となります。」


 そのメイミン曹長の話を聞いて、コリンは思い当たるものがあったようだ。


「それなら、12年前にツノネズミリスの被害にあったと言われている場所が途中にあるわ。 ツカ辺境伯領の手前? ツカ辺境伯領の東の外れだったかしら、そこに、広大な土地で、ツノネズミリスの被害に遭ってから放棄されております。 あそこだったら、範囲攻撃魔法を使っても近所に人も居ませんから、誰にも気が付かれず訓練をすることが可能かと思います。」


 メイミン曹長の話を聞いて、コリンが、考えられる場所に思い当たったので、その事を口にした。


 メイカリアは、徐々にジューネスティーン達が、何を考えているのか、薄皮を剥がすようにして見えてきたと思ったのだ。


「なるほど、ツカラ平原か。 ワツ曹長。」


 そう言って、慌てて、ワツ曹長が2人いることに気がつくと、姓名ではなく名前で呼ぶ。


「メイミン曹長の言う通りかもしれない。 街道から少し入ったところだ。 街道の手前は、緩い丘になっているから、丘の先に行ってしまえば、簡単に見ることができない。 そうですね。 彼らは、最大4日間その場所で、ツノネズミリスに対する訓練をする可能性があります。」


 最後にコリンが話をまとめると、メイカリアに視線を向けた。


「分かった。 おそらく、明日には、その場所に入るだろう。 そうなると、明後日には訓練が始まる事になるな。 そこへは、ツカ辺境伯領の駐留軍から先行偵察に人を派遣しておこう。 最優先で、その場所に入れるようにしておく。」


「ありがとうございます。 キツ中佐。」


 お互いに、一番早く、ジューネスティーン達の行動を監視することが、可能になれば、秘密を暴くことができると、この部屋の女子4人には感じていたのだ。


(帝都から、ツカラ平原を目指すより、ツカ辺境伯領の駐留軍から派遣した方が、早く偵察にあたることができる。 少しでも早くジューネスティーン達の行動を把握できれば、彼らの秘密を知る事が可能になる。)


 今回の討伐依頼なら、今までの帝都周辺の単体との戦い程度では、ジューネスティーン達の能力の把握にはならなかった。


 しかし、Dランクのツノネズミリスといえど、1万匹を相手にした場合は、東の森の魔物1匹と戦うより、はるかに難しい。


 数の多い魔物と戦うのは、人数の少ない冒険者パーティーにとっては、非常に難しい戦闘になるのだ。


「いや、セイツ少尉と、ワツ曹長達が優秀だから、話が早くて助かるよ。 だが、どちらもワツ曹長なのだな。 さっきは、思わず名前で呼んでしまってすまなかった。」


 そう言って、2人のワツ曹長達を見る。


「いえ、滅相もありません。 私達は、ファミリーネームではなく、名前を使って下さって構いません。 私はアンミン、妹は、メイミンと呼んでください。」


「そうか。 なら、次からアンミン曹長、メイミン曹長と呼ばせてもらうよ。」


 メイカリアは、ヲンムンを派遣するには心配があったのだが、コリンとメイミンを派遣することで、かなり安心したので、双子の通信兵の呼び方を気にする余裕もできたようだ。


「では、ジューネスティーン達が向かうであろう、ツカラ平原に3人で向かって欲しい。 そこで、メイミン曹長は、先行偵察からの情報と、その後のジューネスティーン達の行動をアンミン曹長に伝える。 あとは、セイツ少尉は、彼らの魔法について詳細を確認。 ヲンムン軍曹は、いつも通りに彼らの全容を確認してくれ。」


 メイカリアの話が終わると、コリン、アンミン、メイミンが、敬礼するので、ヲンムンも慌てて敬礼をした。


「それでは、早速、出発します。」


 コリンがメイカリアに答えると、メイミンも当然だと感じたようだが、ヲンムンだけが面食らっていた。


「失礼します。」


 そう言うと、コリンは部屋を退出しようとすると、アンミンが、コリンとメイミンの2人に敬礼をする。


「ご武運を! 」


 そう言って送り出すと、その後を慌てて、ヲンムンが追いかけて行った。




 3人が厩舎に向かう途中で、ヲンムンは、コリンに話しかける。


「おい、ちょっと、何で今から出発なんだ。 もう、暗くなるから、明日の朝でも構わないんじゃ無いのか? 」


 その言葉にコリンは、気に食わなかったのだろう。


 ムッとしたような顔で、ヲンムンに向くと、横からヲンムンを諌めるように声がした。


「サイツ軍曹! 今の話し方は、セイツ少尉に対して失礼です。 あなたは、この3人の中で階級が一番下なのですから、士官に対して口を慎んでいただきたい。」


 コリンが話し出す前に、メイミンがヲンムンに注意をする。


 その言葉の中に、自分もお前より上の階級だと認識できるように話すことで、自分の立場も確定させようとしたのだ。




 ヲンムンは、情報部ということもあって、てっきり自分にイニシアチブが有るものだと思っていたようだが、コリンとメイミンにしてみたら、さっきの執務室での話もそうだが、ヲンムンに任せておいて、任務は全うできないと判断したのだ。


 それで、コリンは自分がイニシアチブを握る必要があると考え、メイミンとしてもヲンムンに任せられないと判断して、コリンを立てるような方法を取ったのだ。


 軍の組織であれば、階級が物を言うので、2人にしてみれば丁度よかったのだろう。




 コリンは、少しがっかりしたような表情で、ヲンムンを見る。


「サイツ軍曹、今すぐ立てば、日が暮れる頃には、隣の宿場町に入れる。 約30kmだが、それだけの距離が稼げるのだよ。 今は、少しでもジューネスティーン達に追いつく必要がある。 少しでも先に進んでおきたいのだ。」


「それと、明日は、周りが白みかけたら出発です。 日が出てからでは遅いですから、そのつもりで行動してください。」


 ヲンムンはコリンとメイミンに捲し立てられる。


 そして2人に睨まれると、慌てて敬礼する。


「失礼しました。 セイツ少尉。 メイミン曹長。」


 ヲンムンが、そう答えると、メイミンは、ムッとしたような表情をヲンムンに向ける。


「今は、アンミンは居ない。 だから、私はワツ曹長で構わない。」


 メイミンは、ヲンムンに名前呼びされたくなかったのだろう。


 大した実力もないから、30歳を過ぎて士官に上がれてないのだろうと認識しているのだろう。


 出世の見込みの無い、自分より下の階級の男には興味がないといった態度でヲンムンに接している。


「失礼しました。 ワツ曹長。 以後気をつけます。」


 ヲンムンは、2人の豹変ぶりに驚くが、階級が上の者に軍の敷地内で呼び方について、反論をする気は無かったようだ。


 そのヲンムンの表情を見たコリンは、先を急ぐ事にする。


「では、準備もできて事だ。 直ぐに出発しよう。」


 そう言うと厩舎へ急ぐ。


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