表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1162/1356

ギルドの報告の内容とジューネスティーン達の移動速度


 最初からジューネスティーン達が、ツノネズミリスの依頼を引き受けなかった時は、Aランクパーティーによる討伐失敗となり、そのパーティーは、全滅か、ほぼ全滅となってしまうだろうことも帝国軍は、考えていた。


 その場合は、直ぐに、その依頼のAランク限定を解除する。


 帝都の冒険者のAランクパーティーが、全滅した依頼となれば、他のパーティーは依頼を受けなくなる。


 帝都でのAランクパーティーに対する、他の冒険者の信頼度は高いこともあり、冒険者達も、他の冒険者パーティーの実力を、わきまえているので、Aランクパーティーが失敗した依頼を、帝都に居るパーティーが、引き受けるとは思えない。


 Aランクパーティーが、失敗した依頼を、ジューネスティーン以外のパーティーが引き受けるとは思えないのだ。


 また、ユーリカリア達だけで討伐を引き受けた場合については、帝国軍側から、横槍を入れて、合同の討伐に持ち込むように仕向けるつもりでもいたのだ。


 もし、仮にフォルボグのパーティーが引き受けた場合は、ジューネスティーンが、フォルボグのパーティーと合同で引き受けるとは思えないので、そのまま、放置して失敗するのを待つ。


 それ以外のAランクパーティーだったとしても、ジューネスティーンが合同で引き受けるとは思えないので、そのまま、放置して失敗するのを待つ。


 その手筈も整っていたのだが、それは、最初の報告で使う必要が無くなっていたのだ。




 帝国軍としては、遅かれ早かれ、ジューネスティーン達を、このツノネズミリスの討伐に、引っ張り出す事ができると考えていたのだ。


 ただ、遅れてしまった場合は、ツノネズミリスの被害が増えてしまう可能性があるが、帝国軍も東の森の対応で、動きが取れない状況では、ギルドの冒険者を頼るしか方法が無かったのだ。


 しかし、今回は、他のAランクパーティーが全て断った後に、最後にユーリカリア達だけが残った事で、ジューネスティーン達を引き込めたこと帝国軍にとっては行幸だった。


 早めに依頼が、ジューネスティーン達に渡った事で、ツカ辺境伯領の被害も最小限で済む事になる。


 帝国軍としては、早期に依頼がジューネスティーン達に回った所までは、作戦として成功したと言えるのだ。




 ギルドの対応については、帝国軍が、後手に回る方法を取っている。


 本来であれば、ジューネスティーンの出発が、今日の早朝であれば、期限前だったとしても、クライアントである、帝国軍に報告が上がっていてもおかしくはない。


 だが、ギルドは、期限ギリギリに報告を上げてきたのだ。


 監視役であるヲンムンからの報告で出発については把握できた。


 そして、ジューネスティーン達の移動速度についても、大凡、把握できている。


(ここまでは、成功しているのだ。 ユーリカリア達を通じてジューネスティーン達を引き出すことに成功しているのだ。 後は、ジューネスティーン達を、監視をするだけなのだ。)


 メイカリアは、自分に言い聞かせる。




 だが、ジューネスティーンの移動速度を考えると、こちらの監視が到着する頃には、依頼が達成されている可能性が有る。


(到着まで7日か。 今回は、辺境伯領の駐留軍にお願い・・・?)


 ギルドの報告書を、もう一度確認するが、ギルドの報告書には、ジューネスティーン達の到着は、7日後とある。


(どう言う事なんだ? あの速度なら、3日後、遅くとも4日で到着できるはずだが、なんで7日後なのだ? この日程は? ・・・。 何かある。)


 旅の日程に誤差がある事が気になった。


(これなら、討伐を行う一部始終を確認できるかもしれない。 それに、旅の途中で、彼らが何かをしているところを確認できる可能性がある。)


 メイカリアが、ギルドの報告書を見て考えていると、追いかける為に準備をしていた3人が、執務室に戻ってきた。




 3人が、準備ができたと報告をすると、メイカリアは、3人を見た。


「ギルドからツノネズミリス討伐について報告が上がってきた。 ジューネスティーン達は、7日後にツカ辺境伯領に入るとなっている。」


 ヲンムンは、何気に聞いている程度だったが、コリンは怪訝そうな顔をしていた。


「中佐、すみませんが、もう一度、あちらの奴隷の位置を、確認してもよろしいでしょうか?」


 ジューネスティーン達が、移動した距離を確認した時に、半日程で90kmもの距離を移動していたのだ。


 その移動距離を考えたら、7日後に辺境伯領に入るというのはおかしいと、コリンは気がついたのだ。


 その反応をメイカリアは、快く思ったのだろう、口元をわずかに綻ばせていた。


「ああ、そうしてもらうつもりだ。」


 執務室のテーブルの上に地図を広げると、その周りに全員が集まる。




 そんな中、コリンが魔法を発動させる。


「もう、150km先に進んでます。」


「ほーっ、やっぱりそうか、もう、旅程の3分の1近く進んでいるのか。」


 メイカリアは、コリンの話を聞いて、旅程の中に、何か別の計画があると感じたのだ。


「キツ中佐、このスピードで移動できるのに、なんで、ギルドの報告には7日後となるのでしょうか? 3日後には、ツカ辺境伯領に入れると思うのですが・・・。」


 そこまで聞いて、最後まで、話の不自然さに気がつかなかったヲンムンも、話が見えてきたようだ。




 メイカリアは、ヲンムンが、やっと気がついたのかと、情報部に所属するにしては、頭の回転が遅いと思ったようだ。


「そうだ。 ギルドは、7日後に到着とあるのだよ。 だから、この旅程には、4日間の空白の時間があるって事なんだ。」


 それを聞いて、ヲンムンは、名誉挽回とばかりに声を上げた。


「なるほど、その4日間の間に、我々は、日程を詰めることができるという事になるのですね。」


 ヲンムンが、答えると、メイカリアは、少しがっかりしたような顔をし、残りの3人は、少しイラついたような顔をする。


 その周りの雰囲気にヲンムンは、何かいけない事を言ってしまったのか、疑問のような顔をする。


「サイツ軍曹、そういう事ではありません。」


 横に居たアンミンが、ヲンムンを制すると、その後を、妹のメイミンが続ける。


「ジューネスティーン達が、その4日間に、何をするかが重要なのですよ。」


「目的も無く、3日間を7日間にしてこっちに言ってきたという事、この報告が、出発後に届いたということは、我々に知られたく無い何かが、この空白の日数なのですよ。」


「その4日間に、ジューネスティーンとユーリカリアのメンバー達が、ツノネズミリスに対してどんな対策を立てるのかが重要なのです。」


 アンミンとメイミンが交互に、ヲンムンを捲し立てるように言うと、ヲンムンは、顔を引き攣らせている。


「彼らが、どのような戦略を立てるのか、・・・。 いえ、その4日間の余裕を持ったということは、もう戦略は完成して、後は、実行の為の戦術面の強化のための訓練と見て良いでしょう。」


 その後を、コリンが続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ