表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1161/1356

帝国軍の思惑

 

 ヲンムン、コリン、メイミンが、出発の準備を整えている。


 日も西に傾き始めるが、まだ、空が赤く染まるには速い。


 そんな頃に、3人の準備が整うかという頃に、ギルドからの報告が届いた。




 メイカリアは、アンミンからギルドからの報告を受け取る。


「ふん。 出発後に報告か。 こちらの指示通りの納期に報告を入れてくるとはな。 ギルドもしっかりしている。」


 その報告書を見て、イラついた表情を見せる。


 報告書の内容には、今日の早朝に出発して、早ければ、7日後にツカ辺境伯領のギルド出張所に入る。


 途中、対応のための訓練を実施するとある。


(これで、我々は、また、後手に回ったのか。 ギルドも、こちらがジューネスティーン達を狙っている事を分かっての対応なのだろうな。)


 ギルドの考えが見え隠れしている中で、帝国軍情報部としてどう対応するのか、メイカリアは、対応に迫られているのだ。




 帝国軍は、ツノネズミリスの討伐をAランクパーティー限定で依頼をした。


 その依頼をAランク限定としたのは、ランク指定が無ければ、Bランク、Cランクの中から、金額目当てか、名声目当てで、ツノネズミリスの恐怖を知らずに引き受ける可能性が高い。


 帝国軍としても、ギルドの抱える冒険者について調査を行なっているので、対応可能なパーティーとなれば、ジューネスティーン達だけとなることは、分かっていたのだ。


 それは、ジューネスティーン達には、シュレイノリアという魔法に長けたメンバーが居ると、ギルドの高等学校を調べて分かっており、また、ジューネスティーン達パーティーは、シュレイノリア以外も魔法が使えるとある。


 シュレイノリアの影に隠れてしまっているが、他のメンバーも、一般の魔法職と同等か、それ以上の能力を有しており、中でもジューネスティーンは、その戦闘スタイルから隠れてしまっているが、シュレイノリアと遜色の無い程の魔法の能力を持っているのでは無いかと報告も上がっていた。


 南の王国にあるギルドの高等学校ということもあり、大ツ・バール帝国としても、堂々と諜報活動をすることが出来なかった事もあり、詳しい情報は得られなかったのだ。




 また、帝都の西にある湖で、ジューネスティーン達が関わっていたと思われる魔法の痕跡があった。


 その痕跡を調べたところ、かなり大掛かりな範囲攻撃魔法が使われたと思われる痕跡が残っていたのだ。


 誰がその魔法を使ったのかまでは、目撃者が居なかった事から、パーティーの誰かとなっているが、高等学校の報告をみれば、シュレイノリアが魔法を使ったと想像がつく。




 そのジューネスティーンのパーティーに確実に依頼が回るようにする。


 帝国軍は、依頼をジューネスティーン達に回るようにする為の思案を巡らせた。


 その為に冒険者だけではなく、ギルド法まで含めて、可能性の高い方法を模索した。


 そして、交流が深いユーリカリア達を使って、複数パーティーが受ける方法を利用して、ジューネスティーン達を誘き出す事を考えたのだ。




 当初は、ジューネスティーンへ指名依頼を出す案が出たのだが、それだと、詳しく調査が出来ない可能性がるとなった。


 そこで考えられたのが、ユーリカリア達の存在だった。


 彼女達を使ってジューネスティーン達を、このツノネズミリスの依頼を引き受けさせる方法を思いついたのだ。


 それを具体的に進めたところ、Aランクパーティーに限定して、ユーリカリア達を使って、サブパーティーとしてジューネスティーン達を含めて、複数のパーティーで対応させる方法だった。


 または、帝都のAランクパーティーが失敗したとなった時、Aランクパーティー限定を外す。


 ユーリカリア達が、失敗した際、その話が、冒険者達に伝われば、帝都で、この依頼を受ける冒険者パーティーは、居なくなる。


 だが、それは、一つのパーティーを除いてとなる。


 ユーリカリア達が、失敗した際は、ジューネスティーン達に、その依頼を引き受ける可能性は高くなる。


 特に、エルフ2人と関係を持つカミュルイアンが、ジューネスティーンのパーティーにいることもあり、弔い合戦として引き受ける可能性が高い。


 もし、ジューネスティーンが引き受けないと思えたら、引き受けさせるように仕向けるか、最悪は、指名依頼を出しても、ジューネスティーン達に引き受けさせればよいのだ。


 指名依頼にしても良いが、それは、最終手段となる。


 可能な限り、帝国がジューネスティーン達に興味を持っていると思わせたくは無いので、表立って指名依頼は行わない事にしたのだ。


 その結果、ツノネズミリス討伐の依頼は、初めから最初の案の通りに進んでくれたので、帝国軍としては、最良の方向に進んでくれたのだ。




 帝国軍が、ユーリカリア達と一緒にしたのにも訳がある。


 ジューネスティーン達のパーティーなら、ツノネズミリスに対応可能と帝国軍としても判断しているのだが、その場合、情報部の監視が、それに対応できるかという問題があった。


 ジューネスティーン達の馬車の移動速度を考えると、それを追いかけることが不可能なのだ。


 その為には、人海戦術を取る必要があるのだが、その為の人数を集めるには、情報部全員によって、対応を迫られる事になる。


 別の案件を無視して、情報部全員で対応する事になるが、そんな事をしてしまうわけにはいかない。


 帝国としては、Aランクパーティーを限定にして、ユーリカリアのパーティーと共同の依頼にさせる事で、ジューネスティーン達に足枷をつける予定だったのだ。




 幸いなことに、Aランクパーティーであるユーリカリアとジューネスティーンは、友好的な関係にあり、かなり、好意を寄せているメンバーもおり、共同で狩をする程になっている。


 その繋がりを利用して、一緒に行動させる。


 今まで、6人での行動だったが、アメルーミラを潜り込ませ、更にユーリカリア達のメンバーを一緒に行動させる。


 そうなる事で、今まで秘密にしていた部分を使うにしても、6人で行動していた時より考える必要に迫られるとなれば、今までのように直ぐに判断はできなくなる。


 迷う事になれば、それなりに時間を使う事になり、そして最高の方法を取らず、最良の方法を取る事になれば、遅れは発生する。


 帝国軍情報部としては、その辺りも含めて、ギルドへツノネズミリス討伐の依頼を出したのだ。




 また、ツノネズミリスの討伐については、範囲攻撃魔法が有効となる。


 シュレイノリアとウィルリーンが、2人で魔法を一緒に使っていた事も報告されている。


 ツノネズミリスのような範囲攻撃魔法を必要とする魔物であれば、魔法職が2人居るとなれば、かなりのアドバンテージとなる。


 帝国軍とすれば、ジューネスティーンを抹殺するのではなく、帝国に取り込む事が目的なのだから、この討伐でジューネスティーン達に危害が及ぶのは面白く無いのだ。


 ジューネスティーン達に討伐を完了させて、その中でジューネスティーン達の戦力分析ができればそれで良いのだ。


 特に、帝国が国土を広げようと考えている、帝国の東側に広がる、東の森の調査。


 単体の東の森の魔物を倒せるジューネスティーンのパーティーの実力を確認し、その依頼を達成できるかどうかを確認できれば良いのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ