メイカリアの作戦指揮
コリンが、奴隷紋の内容について理解したので、フゥォンカイは、別室に移されると、魔法によって、奴隷の居場所を確認させる。
コリンが、一度ヲンムンを見ると、目を瞑って、口の中で呪文を唱える。
一旦目を開けてから、地図を確認してから、更にヲンムンを見て、また、目を瞑って、口の中で呪文を唱えた。
コリンは、一瞬の間をおいてから、地図の一点を指し示す。
「奴隷が居る場所は、ここです。」
その場所を見て、ヲンムンとメイカリアが息を呑む。
「それは、間違い無いのか? 」
メイカリアは、コリンに確認する。
「はい。 2度追跡魔法を使って確認しました。 今は、この場所に居ます。」
その場所は、帝都から、約90kmの場所になる。
早朝に出発したジューネスティーン達が、昼前には、帝都から90kmも離れた場所まで移動しているのだ。
一般的な馬車が、早朝出発して昼に到着できるとすれば、20km程なのだが、ジューネスティーン達は、半日で90kmを移動してしまったのだ。
流石にメイカリアも、そのスピードに驚いたような顔をすると、ヲンムンを見る。
(以前に有った報告の通りだったのだな。 こいつの報告の通りだったようだが、急いでいても、2日分の距離を、あいつらは、半日で移動してしまっているのか。 これだと尾行は無理のようだな。)
「なるほど、そう言う事なら、あいつらは、3・4日でツカ辺境伯領に着いてしまうな。」
予備知識の無かったコリンとアンミン・メイミンの3人は、信じられないといった顔で、メイカリアの言葉を聞いていた。
その表情を見たメイカリアが、魔法士の女子3人に説明を始める。
「ああ、すまない。 監視対象なのだが、かなり高速で走れる馬車を持っているらしいのだ。 騎馬より速いのでな。 だから、今朝出発して、今示してもらった場所まで移動しているのだよ。」
それを聞いて、3人の魔法士は、半信半疑のままでいる。
「貴殿らが信じるか信じないかは、どうでもいいのだよ。 これは事実なのだ。」
そこまで上官であるメイカリアが言うので、3人は仕方が無いといったように、正しいのだと思うことにしたようだ。
そして、アンミンが、進言する。
「そうなりますと、今から出発しても、ツカ辺境伯領に着くのは、その監視対象が到着してから9・10日後でなければ、こちらは到着できないことになります。」
「そう言うことになるな。」
アンミンの進言に、メイカリアも納得する。
その時間を埋める為の何かが必要となるのだ。
「地竜だったら、馬より早く長距離を移動可能ではないですか? 」
ジューネスティーン達との、時間的な差を埋める事が絶望的だと思っていたところ、メイミンが進言してきた。
全員がメイミンを見るので、メイミンは、話を続ける。
「馬は、確かに早く走れますが、それは、30分程度だけなのです。 1日の移動距離と考えると、人の歩く速度程度なら、かなり長くなりますが、早足だったり、走らせてしまうと、馬は疲れてしまって距離を進ことができないのです。 でも、地竜は、意外に長距離を走らせても平気なのですよ。 ですから、地竜を使えば、7・8日でツカ辺境伯領まで行けますから、かなり短縮できるはずです。」
それを聞いたヲンムンは、ジューネスティーン達に、振り切られた時の事を思い出していた。
(そう言えば、途中までは、もう少しで追い付けそうだと思っていたが、それが、途中で馬が言うことを聞かなくなってしまって、追い掛けられなかったのか。 それにあいつらは地竜を使って! )
「あっ! 」
ヲンムンは、声を上げた。
その声に全員が反応して、ヲンムンを見る。
「あいつら、地竜を使ってました。」
今の話を聞いても、メイカリアは、ジューネスティーンが、なんでそんなに早く移動できるのか気になっていた。
「すまない、メイミン曹長。 地竜が、半日で90kmも移動できる方法はないだろうか? 」
メイカリアは、メイミン曹長が地竜に詳しいような口ぶりだったので、聞いてみた。
「地竜に馬車を引かせていたら、そんなスピードなんて出ません。 出せるとしたら、何も付けてない、野生の地竜だけです。」
「野生の地竜? 」
「はい、野生の地竜なら、何も付けていませんから、その位は移動可能だと思います。」
それを聞いて、メイカリアは、考える。
(野生の地竜のスピードで、ジューネスティーンは、移動しているのか。 馬車を引かせていても、野生の地竜と同じスピードで走らせているのか。)
「すまない、地竜に鞍をつけて、人が乗った状態での移動だと、半日でどれ位なのだ? 」
「はい、およそ半分のスピードだと思って下さい。 ただ、走らせる事で地竜も消耗しますから、途中で水を飲ませたり、体に水をかけてあげて体の熱を冷やしてやったり、消耗したカロリーを与えたりさせますから、その荷物を考えると、もう少し、遅くなるかもしれません。」
メイミン曹長は、実際に地竜を走らせた事があったので、詳しく説明してくれた。
(確かにそうだ。 地竜に与える水や食料を考えると、数日間の移動の際には、かなり大量の飼葉が必要になる。 ・・・? )
今の話を聞いて、メイカリアに疑問が生じた。
「ヲンムン軍曹。 ジューネスティーン達には、収納魔法を持つ魔法士がいたのではないか? 」
その指摘を受けて、ヲンムンも気がついたようだ。
「はい、1人居ます。」
収納魔法の中に飼葉を入れてしまえば、地竜に飼葉を運ばせる必要は無いのだ。
それにジューネスティーン達は、装備や武器は、身に付けている物以外は収納魔法の中に入れているのだから、ほとんど荷物は馬車には乗せて無い。
だから、通常の馬車より遥かに軽い状態で走らせられる。
(だが、馬車の車体重量、乗っている13人分の体重を考えたら、野生の地竜の速度で走るなんて不可能だ。)
メイカリアは、収納魔法だけでは説明できない何かがあると考えたのだ。
「どう言うことなのだ。」
メイカリアには、理解できない何かを探らなければならない。
ヲンムンを通じてジューネスティーン達を監視させているのは、そういった事を調べる為にあるのだ。
(後追いで追跡させる。 サイツ軍曹は、奴隷との主従関係がある。 その追跡をできるのは、コリン少尉か。 やはり、サイツ軍曹、コリン少尉、それと連絡員の1人を派遣することになる。)
そう思いつつ、それぞれの顔をメイカリアは見ていった。
「コリン少尉は、収納魔法が使えるのか? 」
「はい。 私は、一応、使えます。」
「アンミン曹長とメイミン曹長は、どうなのだ? 」
それを聞いて、アンミンが答える。
「私は使えませんが、メイミン曹長なら、大量でなければ使う事が可能です。」
アンミン曹長が答えてくれた。
それを聞くと、メイカリアは、方針が決まった。
「それでは、サイツ軍曹、コリン少尉、メイミン曹長の3人で、ジューネスティーン達を追いかけてほしい。 地竜は、本部の厩舎に言っておくので、好きな地竜を使ってくれ。 それと、コリン少尉とメイミン曹長は、地竜の飼馬を収納魔法の中に収めておいてくれ。 後、ヲンムンの荷物も頼む。 地竜には極力、鞍と人だけになるようにして移動してくれ。」
その命令にヲンムンと3人の魔法士は敬礼をする。
「それでは、早速準備に取り掛かってくれ。」
ヲンムン、コリン少尉、メイミン曹長の3人が移動する。
「ああ、それと、アンミン曹長は、作戦中は、私と一緒に居てくれ。」
そう言うと、会議室をでる。
ただ、ヲルンジョン少尉が1人残された。




