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ツ・リンケン・クンエイ


 ジューネスティーンが帝都を出発した後、帝国軍本部では、対応に追われていた。


 情報部のキツ・リンセイ・メイカリア中佐が中心となって、今後の対応について、対策を練っていたのだ。


 メイカリアが、対応策に思案していると、執務室に司令官のツ・リンケン・クンエイが執務室に入った事を告げられた。


 メイカリアは、秘書に指示してツ・リンケン・クンエイへの面会の依頼を出すと、すぐに呼ばれたので、ツ・リンケン・クンエイの執務室に向かう。




 ツ・リンケン・クンエイの執務室にメイカリアは入室すると、すぐにクンエイに声を掛けられた。


「あの新人冒険者達に出し抜かれたみたいだな。」


「はっ! 申し訳ありません。」


 メイカリアは、ジューネスティーン達に出し抜かれたことを咎められたのかと思い、緊張した声で、クンエイに答えた。


 だが、クンエイには、咎めるような気配は無かった。


「ああ、怒っている訳ではない。 付けている監視位、出し抜く程度はしてくれなければ、大した能力も無いって事だからな。 むしろ、それだけの能力を持つ冒険者を、どうやって味方に付けるかと考えられる。 その方が、面白いじゃないか。」


 クンエイは、ジューネスティーン達に、それなりに能力が有ると判断したようだ。


 一方、メイカリアとしてみれば、今のクンエイの一言で、ジューネスティーン達の監視をまかれてしまったことに関して不問にされたことになるので、内心安堵する事になり、表情は、少し緩んだ。


 しかし、今後の対応について、確実な手を打たなければ、自分の能力について検討されてしまう事になるので、対応策を伝えなければならない。


 よって、メイカリアは、クンエイに、作戦案について相談するのだった。


 また、クンエイも自分が出勤してきたと同時、にメイカリアの面会の申し入れを聞いているので、これだけの報告だけで、面会を申し出たとは思っていないのだ。


 お互いに、それぞれの立場による考え方が、錯綜していた。




 クンエイは、メイカリアの次の対応案について待っていると、メイカリアは、対応案について話を始める。


「閣下に今後の対応案について、了解を得たいのです。」


 クンエイは、メイカリアが、次の対応を考えていた事に満足すると、内容を確認する。


「話を聞こう。 続けたまえ。」


 クンエイは、メイカリアが、思った通り、対応策を持ってきた事に満足したようだ。




 メイカリアの話は、ジューネスティーン達の追跡に、ヲンムンが使っている奴隷が、ジューネスティーン達のパーティーに潜り込ませているので、その奴隷紋の追跡を行いたいとの事だった。


 その為には、魔法に精通した魔法士が必要となる。


 帝国軍の魔法士部隊から、奴隷紋の追跡を行える人物を貸して欲しいと言うことだった。


 奴隷の魔法紋を追跡する事で、ジューネスティーン達の居場所を探るのだ。




 魔法士を借りる以外にも、メイカリアは、クンエイに報告する事を怠らない。


 自分のミスを隠したり、または、自分をよく見せようとするようなことはせず、事実だけを述べる。


「現在のところ、当方は、ギルドに対して後手に回ってしまっております。 彼らの能力を確認するために付けた監視役も、時々、巻かれてしまう事もあり、彼らの装備についても、分からずにおります。 調査の課題について、確認する為にも、お貸しいただけないかと愚考致しました。」


 クンエイは、メイカリアの案について検討する。


「キツ中佐。 一つ聞きたいのだが、ツカ辺境伯領までの街道に、帝国の衛士が治安維持の為に配置されているが、彼らから、通過していくのを、その治安維持を行なっている衛士達から確認を行う事で、彼らの動きは確認できるのではないか? 」


「はい。 確かにその方法であれば、ジューネスティーン達が、いつ、その町を通過した事は分かると思います。 しかし、報告の中に、馬でも追いつかない馬車を彼らは持っているとありました。 そう考えると、通過する時間は、かなり早いと考えます。 魔法による追跡で彼らの位置を把握しておいた方が、それに今回のツノネズミリスの討伐についてですが、発生数が以前より多いと聞いておりますので、途中で、何らかの対策をする可能性もあります。 ですから、彼らの位置は、確実に掴んでおいた方が良いと考えます。」


 クンエイは、メイカリアが、可能性の話までしてきたことで、魔法士を使った追跡案に対して妥協する気配が無いと判断したようだ。




 また、現在のところ、彼らの装備については、詳しい話が出てきてない。


 特に、ジューネスティーンが、学生時代に使っていた装備について、帝都に来てから使った形跡が無いことが、クンエイには気になるところだったのだろう。


 ギルドの高等学校の武道大会ともなると、各国の重鎮も人材を探しに顔を見せることがある。


 特に、大ツ・バール帝国は、ギルドの高等学校の卒業生の中から、引き抜ける人材がいればと考えていたので、かなり、生徒の詳しい能力を把握していた。


 そんな中、1年の後期から卒業まで、武道大会を制しているジューネスティーンの名前は、大ツ・バール帝国でもチェックされていた。




 そして、ジューネスティーンが、高等学校の武道大会で使っていた装備を、何で、帝国に持ってきてないのかもクンエイには気になっているのだ。


「仕方が無いな。 じゃあ、魔法士部隊には、私の方から、人を手配するように伝えておく。」


 メイカリアは、クンエイが承認してくれた事で、ホッとする。


「ありがとうございます。 それと魔法士の連絡要員を1組お借りしたいのです。」


 クンエイは、後出しで連絡要員を追加してきたメイカリアを、一瞬、見る。


 メイカリアは、しまったと思ったのだろう、緊張している様子を表に出していた。


 そんなメイカリアを見ると、直ぐに答えた。


「ああ、それも含めて手配しておくよ。」


「ありがとうございます。 それでは、早速、対応するようにいたします。」


「宜しく頼む。」


 メイカリアは、敬礼をすると、クンエイの執務室を退出する。




 メイカリアを見送ると、クンエイは、1年前に見た、ギルド高等学校の武闘大会の事を思い出す。


「やはり、あの時みたパワードスーツの持ち主の能力は、本物だったようだな。」


 通常のフルメタルアーマーでは出せない力を発揮して、優勝したジューネスティーンの戦いを思い出したのだ。


 クンエイは、一言、呟くと、執務室の奥のドアを抜けて、別室に行く。


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