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帝国軍への報告書の確認とギルドへの報告書


 ギルドのツ・バール支部のギルドマスターである、ユーリルイスは、ジューネスティーン達とユーリカリア達のツノネズミリスの討伐依頼について、クライアントである帝国軍に提出する報告書にサインをした。


 その書類を持って、1階に降りてきた。


 1階のドアを開くと、ルイゼリーンは、奥の机で事務処理をしていた。


「ルイゼリーン。」


 ドアのところから、ルイゼリーンを呼ぶと、ルイゼリーンは、声の方向にユーリルイスが、ドアノブを持ったままの状態でルイゼリーンを見ていた。


 ルイゼリーンは、机の上の書類を簡単に整理すると、立ち上がってユーリルイスの方に行く。


「すまないが、ちょっと相談があるんだ。 執務室に来てくれないか。」


「分りました。 では、直ぐに伺いますので、机の資料だけ片付けさせてください。」


「ああ、構わない。 じゃあ、終わったら、上に来てくれ。」


 そう言って、ユーリルイスは、執務室に戻る。


 ルイゼリーンは、机の書類を整理する。


 その姿を他の受付嬢達が恨めしそうに見ているのだが、そんな他の受付嬢の事は、全く気にせずに作業を終わらせていた。


 作業が終わると、ルイゼリーンは、ユーリルイスの執務室に行く。




 ドアをノックすると、ユーリルイスが、返事をしたので入室する。


 ユーリルイスは、執務机ではなく、ソファーに腰を下ろしていた。


「御用でしょうか。」


 ルイゼリーンが声をかけると、ユーリルイスは、ルイゼリーンに席を勧めてきたので、指示された長椅子に腰を下ろす。


 ルイゼリーンが座ると、ユーリルイスは、直ぐに話しかけた。


「帝国軍への報告書に有った、ツカ辺境伯領への到着なのだが、7日後で良いのだな。」


「ええ、彼らはそう言ってましたから、問題ないかと思います。」


「そうか。 あの馬車は相当早いようだな。」


「ええ、ユーリカリア達が驚いていましたから、かなり早いものと思われます。」


「なあ、あの議事録の内容だと、最短4日でツカ辺境伯領に行けることにならないか。」


 ルイゼリーンは、その事にユーリルイスも気が付いたと思ったようだ。


 少し、顔の表情を緩めると、ルイゼリーンは答える。


「はい、後で議事録を読み返してみて、私もそう思いました。 ですが、シュレが7日と言いましたから、そのまま、報告書には、そう書きました。 それに、4日で到着可能な馬車と報告書を帝国に送る訳には行かないと思いましたので、その辺りは、そのままです。」


 ルイゼリーンの話を聞いて、ユーリルイスも納得したような表情を見せる。


「それもそうだな。」


 ルイゼリーンは、ユーリルイスも納得してくれたと分かると、話を続ける。


「ジュネス達の能力が高い事を、帝国軍に認めさせる必要はありますが、それは、必要以上に高いと、判断させられるような情報を、渡す必要は無いと考えました。」


「それもそうだ。 帝国軍には、上手く使える程度の冒険者だと思う程度にさせないとな。 必死になって取り込まれるような事になっても困るからな。」


「はい。」


 ユーリルイスも、帝国軍へ出す報告書の内容について納得してくれた。




 ツカ辺境伯領まで、506kmの道のりを7日間で走破した例は、過去にもある。


 その時は、地竜や馬を乗り継いで走らせたり、魔法士がヒールで馬や地竜といった乗り物に掛けつつ等、何らかの方法で7日間以内で移動した事例も有る。


 特に、戦時下になった際は、リレー形式で情報の伝達を行なって、昼夜を通じて走らせるので、3日間で移動した例もある。


 そうなれば、報告書の7日間なら、少し早いな程度で済むが、一般的な馬車で3日間で移動したとなると、その報告書が、何処まで重要な物になるかわからない事になる。


 ジューネスティーン達は、一度、馬車の高速移動によって、馬で追いかけていた監視役を振り切っているので、ジューネスティーン達の馬車は早い事は、帝国軍の耳にも入っているはずだが、その性能の全容をギルド側が明らかにする必要はないのだ。




 ユーリルイスは、帝国軍へ提出する報告書をもう一度読み返してから、話し始める。


「帝国軍への報告書は、中間報告ならあれで良いだろう。 多分、帝国軍はジュネス達の馬車の移動速度も確認したかったと思っているかもしれないが、今からでは、間に合わないだろうな。」


「ええ、この報告に関しては、期限ギリギリに帝国軍に渡せれば良いと思ってます。」


「そうだな。 今日中に帝国軍に渡れば良いのか。」


「はい。 ジュネス達は、もう、出発しておりますので、問題ないかと思います。」


 帝国軍への報告書の提出は、今日の夕方までに行うことになっている。


 早朝にジューネスティーン達が出発して、帝国軍には、夕方に報告書が届くと、その頃にはジューネスティーン達の馬車は、160km近く先に行っていることになる。


 帝国軍がどんなに頑張っても、帝都からジューネスティーン達を追いかける事は不可能となるのだ。




 ユーリルイスは、帝国軍への報告書の話は、これで良いと思ったので、次の話に入る事にした。


「そうだ。 それと、ユーリカリア達の魔法について、報告書をまとめておいて欲しい。 中間報告という形になるので、ルイーゼが把握している範囲で構わないから、ユーリカリア達パーティーが、ジュネス達によって魔法が使えるようになった事を本部にあげる報告書として作ってくれないか。 正式な報告書は、ユーリカリア達が戻ってきた後に調べて報告書にまとめて貰えば構わない。」


 ユーリルイスの話にルイゼリーンは、少し考えてから答える。


「つまり、ユーリカリア達が、ジュネス達から魔法を教わって、使えるようになった事を報告できれば良いわけですね。」


「そうだ。 詳細は、ツノネズミリスの討伐後に行うとすれば良い。 それに、その報告が本部に渡れば、調べる内容について何か言ってくるかもしれないし、誰かを派遣するかもしれない。」


「そうですね。 本部から誰かが派遣されれば、こっちの手間も省けますね。」


 ユーリルイスは、話が早いと思ったのだろう、ニヤリとしてから答えた。


「そういう事だ。」


「わかりました。 直ぐに報告書にまとめます。」


「よろしく頼む。」


 ルイゼリーンは、お辞儀をすると、執務室を出ていった。


(ギルド本部としたら、ツノネズミリスの討伐より、ユーリカリア達の魔法が使えるようになった方が、需要案件になるだろうな。)


 ユーリルイスは、ルイゼリーンに指示した内容を考えつつ、ソファーから立ち上がって自分の執務机に移動した。


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