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ユーリルイスの考え


 西街道に入ると、ジューネスティーンは、地竜に速度を上げさせた。


 そんな中、ユーリカリアは、自分達の魔法訓練がどうなるのか、心配になっていた。


 街道に入って、これからは道沿いに走るだけとなったので、ユーリカリアは、気になっていた事を、シュレイノリアに聞くことにした。


「なあ、途中で魔法の訓練となると、何処を使うんだ? 」


 シュレイノリアは、一瞬、ビクッとしたが、すぐに答えた。


「広い場所。」


 ユーリカリアの質問にシュレイノリアは、漠然と答える。


「広い場所って、実際には何処になる? 」


「決めてない。 と、言うより、西の街道沿いの狩場は良く分かってない。 適当に決める。」


 ギルドで、あれだけの啖呵を切って、出発時に、色々と言ってた割に、具体的な話になると、シュレイノリアの話は、ボロが出るようになった。


「随分といい加減だな。 だったら、300km程先の所に、広大な荒野がある。 あの辺りなら、地平線が見えそうな程広いから、大きな魔法を使っても被害は無いと思う。」


 ユーリカリアは、シュレイノリアの話を深く考えることなく、シュレイノリアの条件にあいそうな場所を伝える。


「分かった。 そこにしよう。」


 ユーリカリアの提案に、シュレイノリアは、あっさりと肯定した。


 その2人の話を間で聞いていたジューネスティーンは、シュレイノリアの事がなんとなく分かったようだ。


(こいつ、ミーティングの時の計算を間違えて2時間で20km移動と計算間違いしたのを、誤魔化したな。)


 シュレイノリアの表情と、今のやり取りが、計画的でないこともあったので、おそらく、出発時点まで、その事に気がついてなかったのだろう。


 それを誤魔化すためにシュレイノリアは、途中で魔法の訓練を大掛かりに行うと言ったのだろう。


(まあ、なんとか、話の辻褄があってはいるけど、多分、間違えた事を誤魔化すためだったんだろう。 でも、それを指摘するのは、ユーリカリアとの事もあるから、今は、黙っていよう。)


 ジューネスティーンは、シュレイノリアの表情を確認しつつ、黙っていようと思うのだった。




 ジューネスティーン達が出発した後、日も登って、帝都で朝食を食べさせる店が始まり、帝都もその1日が始まる。


 自宅で食事をしない人達は、そういった朝早くから食事を撮らせてくれる店を利用してから、仕事に向かう。


 ユーリルイスも、ギルドへ向かう途中の店に入って、軽い朝食を取った後にギルドへ向かう。


 従業員用の入口を入り、一度、受付カウンターを見てから、執務室に向かうのがいつもの日課だ。


 受付に顔を出すと、ルイゼリーンが、ユーリルイスに、資料と羊皮紙の報告書を渡してきた。


「ツカ辺境伯領に発生したツノネズミリス討伐についての、一昨日の、ミーテイングの内容と、帝国軍へ出す報告書です。 よろしければ、サインをお願いします。」


「ああ、ありがとう。 上で目を通すよ。」


 ユーリルイスは、ルイゼリーンから受け取ると、そのまま、執務室へ向かう。




 執務室で、帝国軍への報告書の内容を、ユーリルイスが確認をしていた。


 ミーティングの際の議事録を確認しつつ、軍への報告書の内容を確認いている。


(ほーっ、7日間でツカ辺境伯領に入れるのか。 やはり、早いな。 ん? )


 議事録には、時速20kmで、2時間走って1時間休み、それを4回行うとある。


(これだと、1日160km移動できるって事じゃないのか? なら、4日目の昼にはツカ辺境伯領に入れるって事じゃないのか? )


 そう思って、軍に提出する書類を確認するが、到着は、7日目とある。


 通常なら、早くても12・3日、一般的には、15日と考えている日程を、7日間でも、早い日程なのだ。


 報告書の内容には、移動速度についても記載が載ってない。


 ただ、7日目に到着とあるだけだ。


(ジュネス達の出発は、今日の早朝だったか。 もう、出発した後なら、ジュネス達に確認はできないか。)


 ユーリルイスは、考えると、立ち上がって、執務室を出てルイゼリーンを呼ぼうと思って、ドアに手を掛けると、そのままの状態で、もう一度考え出すと、報告書の内容をもう一度読み返す。


 報告書には、7日後にツカ辺境伯領に到着するとあるだけだった。


(だったら、これで軍に報告をあげても問題ないのか。)


 そう思うと、ドアから執務机に戻って椅子に腰掛ける。


(あいつらの事だ。 それに議事録には、ユーリカリア達に途中で範囲攻撃魔法を覚えさせるとある。 ジュネス達から教えられて、あのパーティーも全員が魔法を使えるようになったって事なら、特定の範囲攻撃魔法も覚えさせることも可能なのかもしれないな。)


 ジューネスティーン達と接触させたユーリカリア達に魔法が使えるようになったと、ルイゼリーンから報告をもらっている。


 ただ、どんな魔法が使えるのか、使えるといっても攻撃に使えるような魔法なのかは、報告にはなかったのだ。




 本来なら、直ぐにギルドで検証する必要があったのだろうが、今まで、魔法適性が無かった人が、魔法を使えるようになった場合の対処方法について、考えられてないのだ。


 過去に事例の無い事なので、このようなケースは、これから、対処方法を検討してマニュアル化する必要があるのだが、ツノネズミリスの大量発生に対応することになっているので、そちらの依頼を優先させたのだ。


 ただ、ギルド本部に、この内容の報告が行けば、対処方法に問題が有ったと、指摘を受けるかもしれないのだが、ジューネスティーンのパーティー全員が、魔法を使える事は聞いているのだが、本当に、最初から、6人全員が魔法を使えていたとは思えないのだ。


 在学中に6人のパーティーを組んだと聞いているが、もし、6人全員が魔法適性があるなら、このような偏った編成が起こるとは思えないのだ。


 パーティーに魔法職が入るだけで、戦闘力は大いに上がるのだから、魔法色は、必ずメンバーの取り合いとなるはずなのだが、このパーティーにはそれが無かったというので、彼らのパーティーは、後天的に魔法適性を得たと考えられるのだ。


 もし、魔法適性を後天的に得た事を、ギルド本部に知られたとしても、自分だけの責任とはならない。


 それを指摘されたとしても、最初に見逃したのは、南の王国にあるギルド高等学校になるのだと考えれば、ユーリルイスの責任追求は無いと考えて良いのだ。


(ユーリカリア達の魔法が使えた件については、戻ってきた時に、詳しい話を聞いて、報告をあげれば良いか。 いや、魔法適正の無かった5人が、魔法が使えるようになった事を報告して、直ぐにツノネズミリスの討伐に向かわせたので、詳細は後から報告の方が本部の心証は良いのか。 ルイーゼに、現在分かっている範囲でまとめさせて、報告を上げておくか。 場合によっては、こっちの手間が省けるかもしれない。)


 ユーリルイスは、帝国軍に送る報告書にサインをすると、報告書に蝋で封印する。


 そして、立ち上がると、執務室を出て、1階の受付に行く。


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