出発 〜ツカ辺境伯領へ〜
ジューネスティーン達とユーリカリア達は、1日半掛けて、食料や飼葉の準備が終わり、ルイゼリーンから受けた依頼の2日後の早朝に、金糸雀亭をジューネスティーンとユーリカリア達の2パーティーは、大ツ・バール帝国の西にあるツカ辺境伯領に向かうことになる。
506kmの長距離移動には、通常であれば、12・3日の時間がかかるのだが、シュレイノリアの魔法紋のおかげで、地竜にかかる負担が無くなり、生身の地竜と同じ速度が出せるようになった。
何も取り付けてない状態、野生の地竜と同じ速度で移動できることから、7日後には、ツカ辺境伯領に到着できると、ギルド内では報告が回っている。
ジューネスティーン達は、昨日、出発の予定を伝えた時に、ルイゼリーンに確認した。
ジューネスティーン達は、7日後までにツカ辺境伯領に入る為、早朝から、出発することになった。
その道中に、シュレイノリアによる、魔法の訓練も含まれている。
ジューネスティーン達は、空いた時間に、ユーリカリア達の魔法を強化して、範囲攻撃魔法を行えるまで引き上げる予定なのだ。
出発の日、周囲は、明るくはなってきたが、日の出までには、まだ、時間が有る。
金の帽子亭のラウンジも、まだ、活動してなかったので、いつものジューネスティーン達を監視する監視役も、まだ、出てきてなかった。
全員が金糸雀亭の前に集まると、シュレイノリアが話始めた。
「ツカ辺境伯領までは、4日の移動だ。 その間、残りの日程は魔法の訓練に当てる。」
全員が、シュレイノリアを見る。
一昨日のミーティングの際には、7日後と言っていたのだ。
「シュレ、なんで、4日の移動になるんですか? 」
ジューネスティーンの質問にシュレイノリアは、ムッとしたような顔をする。
「お前も計算ができてなかったのだな。 私は、時速20kmと言ったのだ。 それを1日8時間走らせたらどうなる。 ツカ辺境伯領までは、506kmと言われている。」
そう言われて、ジューネスティーンは、ミーティングの際のシュレイノリアの話を思い出す。
『うちの、地竜の足なら、時速20kmで走らせられるだろう。 2時間走らせて、1時間休ませる。 これを1日4回繰り返すと、1日の移動距離は、80kmとなる。 6日で480kmなら、残り26kmなら、7日目に一度走らせれば到着できる。 後の時間は、予備として考えれば、7日目には十分に到着可能だ。』
ジューネスティーンは、話の内容を思い出すと、計算が合わない事に気がついたようだ。
「あの時、私は、2時間走らせて1時間休ませると言った。 あの数字に惑わされたのだ。 実際には、1回の移動で40kmとなるのだが、20kmになるように話した。 だから実際には、1日160kmの移動距離となるのだから、フルで走るのは、3日だけだ。」
言われてみると、確かにその通りだ。
まんまと、シュレイノリアの言葉のマジックに騙されたと思うのだが、ジューネスティーンは、シュレイノリアを、じーっと見る。
その中には、どうも、シュレイノリアには何かを隠しているような雰囲気を感じていたようだ。
すると、横から、ユーリカリアが、話しかけてきた。
「なあ、なんでそんな事をしたんだ? ギルドにちゃんと話しておいても構わなかったんじゃないか? 」
ユーリカリアの質問を聞いて、シュレイノリアは、一瞬、ドキッとした様子を見せた。
「魔法の訓練が1日で終わるとは思えない。 特に必要なのは、火魔法が都合が良い。」
そう言われると、ユーリカリアは、自分が火魔法を、まだ、使えてない事を思ったのだろう、少し苦い顔をする。
(私が、火魔法を使えるようになるための時間を設けたってことか。)
ユーリカリアは、納得したような顔をする。
「そう言うことなら、シュレさんが、納得できるような火魔法が使えるとなったら、訓練は途中で切り上げて、早めにツカ辺境伯領に入るってことでしょうか? 」
ウィルリーンが、話に入ってきた。
「そうなる。」
だが、徐々にシュレイノリアの表情に、何か影が有るように、ジューネスティーンは感じたようだ。
出発前に、そんな話を初めてしまったのだが、ジューネスティーンは、話を切り上げることにした。
「まあ、日程については、短くなれば、その分被害も減るわけだ。 じゃあ、そろそろ出発しよう。」
そう言うと、馬車に全員が乗り込む。
御者席には、ジューネスティーンとシュレイノリアとユーリカリアが座ると、残り10人が後ろに入る。
西門は、第9区画から、第5区画を通って、第3区画、第8区画を抜けなければならないので、南門から出るようにしている。
また、早朝ということもあるので、門が閉まっているのを、ギルドからの依頼で、早朝にジューネスティーン達を門の通過を依頼してもらっていた。
その交渉には、ルイゼリーンが、昨日の夕方に手配していた。
それも、帝国軍本部に報告のための連絡員が、帰った後に行っている。
最初は、門番達も、早朝という事で嫌がっていたのだが、帝国軍からの依頼のツカ辺境伯領のツノネズミリスの討伐隊だと聞いて、協力してもらえたのだ。
門番も、ツノネズミリスの討伐のために、早朝に出ると聞いていたので、ジューネスティーン達が門に着くと直ぐに通してくれた。
門を出ると、直ぐに西に向かい、西の街道に入る。




