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買出しを見送ったシュレイノリアとアメルーミラ


 帝都は、各区画毎に石造りの塀と堀が有る。


 帝国は、当初は、北の王国の庇護下にあったのだが、北の王国の力が弱まると、近隣諸国からの脅威に晒された。


 ツ・バール国時代に、北の王国の力が弱まり、周辺国より、ツ・バール国の穀倉地帯の確保のために侵略を許したことがある。


 当時は、国力も弱く、東の森の警備隊も全てを帝都に入れて、帝都の防衛に当たったのだ。


 国を上げての防衛戦と、補給線の長さを逆手にとって、補給路でのゲリラ戦による補給部隊の遮断によって、何度かの侵略も退けていた。


 その時に効果を発揮したのが、帝都内部の門前町の建物の構造が、防衛に大きく貢献した。


 1階は、あかりとりの窓があるが、外からは、大人の頭が抜けないほど細い縦長の窓が、床から天井までに伸びており、1階の入り口は、堅牢な金属の扉で閉められてしまうと、外からは開かない構造になっている。


 その扉を壊そうとするが、ほとんど歯が立たず、その扉を開けることはできなかった。


 2階も雨戸の代わりに金属の扉となっており、簡単に開けられなかった。


 突撃部隊は、表門を襲撃して、突破しても、次の門にたどり着いても、その門の両脇の建物には、入ることができず、結果として、建物の中から攻撃され、建物の上からも攻撃を受けるだけとなり、一つの門を抜けて、次の門にたどり着いても、そこで撃退されていたのだ。


 そのため、何度か、帝都への侵攻はあったのだが、その都度、撃退されしまったので、ツ・バール国の都は、普通に攻めても落とせない、城塞都市として、周辺国に知られるようになった。




 過去の侵略の結果として、帝都の各区画の手前に設けられた塀と堀は、そのまま残され、強固な城塞都市として成り立っていた。


 その後、帝都内部の区画の移動には、その時に作られた門を通過するしか方法は無い。


 各区画には、東西南北の各1箇所の門が、それぞれの区画へ入る通路である。


 ただ、第9区画においては、北に第2区画と第5区画へ入るために北には、現在、二つの門がある。


 第9区画の開発が進めば、東側の第6区画と第7区画の南にも広がるので、第9区画が完成すれば、第9区画は、北へ向かう門が、5つ、用意されることになる。




 ユーリカリア達は、中央の正門の方から、第2区画に行き、そのあたりで食料を調達しようと思ったようだ。


 そして、ジューネスティーン達は、西側の第5区画への通用門を利用して、第5区画で、地竜の飼馬を購入することにしたのだ。


 ユーリカリア達と分かれたジューネスティーンは、金糸雀亭に戻ると、シュレイノリアとアメルーミラを置いて、西側の第5区画の通用門に行く。




 シュレイノリアとアメルーミラは、ジューネスティーン達を見送ると、厩舎の方に行く。


 すると、金糸雀亭で、厩舎の管理をしているイドディーンに声をかける。


「うちの地竜の顔を見にきた。」


「ああ、シュレさん。 さっき、この子も食事を終わらせたところです。」


「そうか、なら結構。」


 そう言うとシュレイノリアは、後ろにいるアメルーミラを指さす。


「ルーミラを地竜に乗せてあげたい。」


 アメルーミラは、後ろでおどおどしている。


 そんなアメルーミラを見て、イドディーンは答える。


「じゃあ、地竜に鞍をつけた方が良いでしょうね。 ちょっと待っててください。 確か、地竜用の鞍が倉庫にあったと思いますから、取ってきます。」


 イドディーンは、厩舎の脇の倉庫に行った。


 その間、シュレイノリアは、地竜の顔を手で触ったり喉を撫でたりしている。


 地竜は、そのシュレイノリアの手を気持ち良さそうにして、時々、違うところを撫でて欲しいと言うように首を動かしていた。


 それを後ろにいるアメルーミラは、オドオドしながら見ていると、シュレイノリアは、アメルーミラに、こっちに来いというように手を振る。


 しかし、アメルーミラは、初めて見る地竜に、戸惑っている。


「何してる。 この地竜と、お前は、仲良くならなければならない。 スキンシップは重要だ。」


 アメルーミラは、戸惑っている。


「怖くはない。 この子は、優しい子だ。 お前も優しく接してあげれば、この子も答えてくれる。」


 シュレイノリアに言われて、アメルーミラは、恐る恐る地竜に近づく。


「さあ、この子の喉のあたりを撫でてやると、この子は喜ぶ。」


 アメルーミラは、言われるがまま、恐る恐る右手を伸ばす。


 地竜の首まで10cmになると、地竜がアメルーミラの右手をパクりと口の中に入れる。


「フンギェ! 」


 アメルーミラは、青い顔をしてびっくりして変な声を出すと、慌てて右手を口から引き抜こうとするが、地竜は、その動きに合わせて首を動かす。


「ほお、気に入られたみたいだな。」


「ヒャァァァ! 」


 シュレイノリアは、ニコリとしているが、アメルーミラは、恐ろしいと思ったのだろう、地竜が手を離してくれないのでどうしていいのか、左右に手を振ると地竜もそれに合わせて首を振ってくる。


 倉庫から戻ってきたイドディーンが、アメルーミラの姿を見て、笑いながら声をかけてくる。


「気に入られたみたいですね。 右手、痛くないでしょ。 甘噛みされているだけだから、気にせずにそのままにしておいて、あなたの匂いや汗を覚えているんですよ。 だから、右手は動かさないで地竜の好きにさせておいたら、そのうちに離してくれます。」


 アメルーミラを安心させるように、イドディーンは言うと、持ってきた蔵を地竜に付け始めた。




 イドディーンの話を聞いて、アメルーミラも少し安心したのか、右手を動かすのをやめると、地竜も一度、瞬きをすると、地竜は、口の中で、アメルーミラの右手を舌で舐めまわし始めたようだ。


 今度は、アメルーミラの顔が赤くなる。


「い、いや、ちょっと、くすぐったいです。 いっ、えっ! ちょっと、だめ。」


 なんだか、アメルーミラは恥ずかしそうにしている。


「この子も、お前を気に入ってくれたようだ。 珍しい、レオンの時は、最初、尻尾で飛ばされてたんだ。 それを考えれば、お前は、可愛がられているようだ。」


 シュレイノリアは、直ぐに地竜がアメルーミラを受け入れてくれたことで、後の作業が楽になると感じた様子だ。


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