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ギルド受付嬢の戦い

 

 ルイゼリーンは、いつものように出勤してくると、依頼の確認を行う。


 手続きが済んで冒険者に頼む事が可能になったものを、自分の担当する冒険者に渡せるような依頼が有るか確認の為である。


 緊急性の高い、ツカ辺境伯領のツノネズミリスの依頼が、そろそろ、回ってきても良いはずなのだと思っていたのだが、見当たらないので、変に思っていたのだ。




「ルイゼリーン! 」


 依頼の確認をしていると、サレンカレンがルイゼリーンを呼んだ。


「おはようございます。 サレンカレンさん。」


 サレンカレンは、いつもは、見下したようにルイゼリーンを見て、自分からは直接声を掛けず、誰かを通じて話をする。


 皇族のような身分の高い者達が、世話人を通じて面会に来た人と直接ではなく、間接的に話をする、相手を卑しい人間と卑下するやり方を、毎回行って、身分の差が有ると言いたいのだ。


 それが、今日に限って、直接ルイゼリーンに話しかけてきた。




 ルイゼリーンが、サレンカレンの近くに来ると、ツノネズミリスの依頼を渡す。


「この依頼、受注可能なパーティーに声をかけてたわ。 それで、残りは、あなたのところのユーリカリアのパーティーだけなの。 だから、担当であるあなたからユーリカリア達に確認しておいて! それと、他のパーティーは、全て断られたから、ユーリカリアのパーティーに断られた時は、実行不可能な依頼として処理しておいて! 」


 サレンカレンは、高圧的な態度で言ってきた。


「はぁ。 あっ、はい! 」


 ルイゼリーンは、最初は気のない返事をしたのだが、サレンカレンの性格を考えると、慌てて、ちゃんと返事をする。




 ルイゼリーンにしてみれば、本来の所属が情報部ということもあり、サレンカレンの素性も知っており、時々、家を訪れる貴族の家の男達にとっては、適当な遊び相手程度にしか考えてないことも資料から知っているのだ。


 ただ、彼女自身としては、貴族達に使われているのだという優越感を持っていることもあるので、その辺りをあまり刺激しないようにと思っているのだった。


 貴族側もサレンカレンがもたらす情報に、対して興味を持っているわけでもなく、その情報が、その貴族を通じて軍や帝国の中枢にもたらされたこともないことまで、ギルドの情報部は掴んでいるのだ。


 程よく厄介払いをされて、時々、遊ぶことのできる女程度にしか、相手の貴族は思ってないのだが、彼女はその事で彼らと繋がっていると信じているのだった。




 ただ、ルイゼリーンが現れる前までは、冒険者の見極めなど、人を見る目や、それなりに冒険者を育てることは上手だったこともあり、常に成績も上位に位置している。


 生まれた所が、大ツ・バール帝国でなければ、亜人に対する偏見も無く、ユーリカリア達のような、才能のある亜人冒険者も受け入れられたと思われるのだが、帝国の方針に従った思想を持った事が、亜人を受け入れがたく感じ、敬遠してしまった事が、彼女が成績トップになれない原因でもある。


 サレンカレン自身も、大ツ・バール帝国の教育方針の犠牲者なのだ。




 ルイゼリーンに依頼書と自分の言いたい事を言うと、サレンカレンは、奥に行ってしまった。


 その姿を目で追っていたルイゼリーンは、彼女が見えなくなると、依頼書を確認する。


 内容は、ツカ辺境伯領のツノネズミリスの討伐であり、パーティーランクがAランク以上と指定されている。


 サレンカレンは、残ったAランクパーティーは、ユーリカリアのパーティーだけと言った。


(彼女の性格なら、私の成績にならないように、他のAランクパーティーに話をしたのでしょうね。 でも、ツノネズミリスの討伐と聞いて、全部のパーティーに断られたというところか。 いくらAランクパーティーでも、千匹のDランクの魔物だと、パーティー全員が無事に帰れる保証なんて無いわね。 それに、範囲攻撃魔法を使えないパーティーなら、ツノネズミリスを見たら直ぐに逃げ出すわよ。 ウィルリーンさんの魔法頼りなのか。)


 ルイゼリーンは、困った表情を見せているが、ギリギリのところで、なんとかなるかと思っている様子だ。


(そういえば、ツカ辺境伯領の出張所との定期通信は、今日だったはず。)


 時間を確認すると、定期通信の時間の、少し前だと分かると、ルイゼリーンは、直ぐに行動に移す。




 2階のユーリルイスの執務室のドアをルイゼリーンは、ノックすると、そのまま、ドアを開ける。


「どうした。 君らしくないな。」


 ユーリルイスは、執務机ではなく、ドアの前まで来ていた。


 定期通信のために移動しようと、ドアノブに手をかけようとしていたところだった。


「ああ、すみません。 今日のツカ辺境伯領の定期通信に同席させてもらいたいのです。」


 そう言うと、ツノネズミリスの討伐依頼書をユーリルイスに見せる。


「なんだ、これは、三日前に来ていた依頼じゃないか。 今頃になって、・・・。 ああ、そう言うことか。」


 ユーリルイスは、サレンカレンが何かしたのだろうと察したようだ。


「まあ、いい。 それより、定期通信だな。 一緒に来てくれ。」


 そう言うと、ユーリルイスは、ルイゼリーンを連れて、通信室に向かう。


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