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フォルボグとサレンカレン


 サレンカレンとしては、フォルボグに何としてもこの依頼を達成してもらい、ルイゼリーンに奪われ続けたトップの座を奪い返したいと思っていたので、フォルボグに確実に引き受けさせる為に、少し恥じらうような顔で話しかける。


「あのー、実は、ツカ辺境伯領で、ツノネズミリスの大量発生が起こっているのです。 その討伐にAランクパーティーが指名されているんです。 帝国でAランクと言えば、真っ先にフォルボグさんのパーティーだと思ったので、私が、先に別のAランクパーティーに依頼が行かないようにしておいたのです。 この大金貨10枚は、何としてもフォルボグさんに達成してもらおうと思ったんです。」


 だが、フォルボグは、少し考えてしまったようだ。


 サレンカレンは、大金貨10枚となれば、直ぐに引き受けると思ったのだが、当てが外れた。


「ツノネズミリスかぁ。」


 そう言ってフォルボグは、考え込んでいる。


 ツノネズミリスは、Dランクの魔物であるのだから、Aランクのパーティーなら、多少、数が多くても、問題無いと、サレンカレンは思っていたのだ。


 サレンカレンは、ツノネズミリスの本当の恐ろしさを知らなかったのだ。




 サレンカレンは、ツ・バール支部の設立と同時に受付嬢として雇われている。


 その前までは、貴族の家の下働きとして働いていたのだ。


 それが、そこの貴族の目に止まってしまい、夜な夜な貴族の相手をさせられていたのだが、ある夜に主人であるその家の主が外泊した時に、今度は、その息子が自分の寝室に忍び込んできたのだ。


 その息子の相手もするようになると、気がついた時には、その貴族の家の男子全員と関係を持ってしまったのだ。


 それが、息子の嫁に知られて、調べていると、義父も義弟たちも関係を持っている事が分かり、その嫁は、義母に相談したのだ。


 義母は、その貴族の家の男達が全て、関係を持った事で追い出すのだが、秘密裏に小さいが庶民が持てる程度の家を持たせたのだ。


 そして、その時、ギルドのツ・バール支部設立と同時にギルドへ潜り込ませたのだ。


 ただ、貴族の家では、追い出される際に家族全員に関係を知られる事となり、その後は、あてがわれた家で関係を続けていくことになった。




 貴族側からすれば、ちょうど良い息抜き程度の相手なのだが、ギルドに入れた事で、ギルド内の情報を集める名目で追い出しているのだ。


 受付嬢程度の集められる情報は、高が知れているのだが、彼女にしてみれば、秘密裏に潜入して主人達の為に働いているのだと思っているので、やり甲斐があるようだ。


 時々、訪れては、ベットの上でギルドの話をする。


 訪れた貴族達は、その話を聞いて、相槌を打ってくれる。


 それが、サレンカレンには、自分の仕事だと思ったようだが、貴族達としては、そんな話は如何でもよく、その場の自分の欲望を満たすだけなのだ。


 ただ、サレンカレンとしてみれば、貴族の家の為に自分は働いているのだと、感じているので、時々、訪れる貴族達にギルド内での話をしているのだった。




 サレンカレンは、訪れた貴族達にするような仕草で、フォルボグに接したのだ。


 それに、大金貨10枚の依頼となれば、フォルボグなら絶対に断らないと思ったのだが様子が違う。


「あれは、大量発生するからなぁ。」


 考え込んでいるフォルボグを不思議に思うサレンカレンだが、何とか引き受けさせようとする。


「Dランクの魔物が、数十匹なら、何とでもなるんじゃないですか? 」


 もう少しで、フォルボグが引き受けるだろうとサレンカレンは考えていた。


 それならもう一押しかと、サレンカレンは、思ったようだ。




 サレンカレンは、ツノネズミリスを軽く考えていたのだ。


 なんで、フォルボグが引き受けないで、悩んでいるのか気になっていたところ、フォルボグの後ろから、カルラモリアが話しかけてきた。


「あんた。 そんな依頼なんて引き受けちゃダメだからね。 考える必要なんて無いだろう。」


 サレンカレンは、思いも寄らない話に少し戸惑う。


 そんなサレンカレンをカルラモリアは、ジロリと睨むとフォルボグに話しかける。


「ツノネズミリスなんて、少なくても1000匹は居るんだ。 あんなの、相手にしたら、魔法を使えない私たちなんて、奴らの餌だよ。 それに大量発生となったら、1万匹程度は考えないと。 そんなの、私ら冒険者の仕事じゃなくて、軍隊の仕事だよ。」


 フォルボグは、仕方が無いような顔で納得する。


「ああ、そうだな。」


「全く! 大金貨10枚に目が眩んだんだろ。 金額に目が眩んで、奴隷を全員入れ替えた時の事を忘れたんじゃないの? 依頼は達成できず、その後、新たに買った奴隷にどれだけ掛かったと思っているんだい。 さっさと断ってしまいな! 」


「そうだったな。」


 するとカルラモリアは、サレンカレンに向く。


「あんたも、受付嬢なら、ツノネズミリスについて勉強しておきな。 あんな冒険者泣かせの魔物は、ギルドより、軍に任せる依頼だよ。」


 そう言うと、カルラモリアは、フォルボグに視線を向ける。


 その目には、ツノネズミリスの依頼は断れと訴えていた。


 フォルボグは、仕方なさそうにすると、サレンカレンに向く。


「すまないが、ツノネズミリスの依頼は、俺のところでは受けられない。」


「かしこまりました。」


 そう言うと、サレンカレンは、フォルボグの魔物のコアを処理する。


 支払いが完了するまで、2人は無言でいた。




 サレンカレンは、フォルボグ以外のAランクパーティーに話をするが、断られた。


 残るパーティーは、ルイゼリーンの担当するユーリカリアのパーティーのみとなる。


 ただ、断られた時に言われた時に、メンバーが話していた事が気になっていた。


「そんな、ツノネズミリスなんて魔物を倒せるパーティーなんて、南の王国のジェスティエンだけだろう。 さっさと、あいつらに依頼を回した方がいいんじゃないか? 」


「いや、帝国にもツノネズミリスを倒せそうなパーティーは居る。」


 その話を聞いて、サレンカレンは、光が見えたと思ったのだが、名前を聞いて直ぐに打ち消された。


 それは、ジューネスティーン達だったのだ。


 だが、彼らのパーティーは、Aランクではないので、依頼を受けることは出来ないし、それにジューネスティーンの担当は、ルイゼリーンなのだ。


 どうしても、ルイゼリーンに回ってしまうことになったのだ。


 結局、ルイゼリーンの成果となるのかとサレンカレンは思ったのだが、全てのパーティーから断られた依頼がユーリカリアに達成できるのかと考えたのだ。


 達成される事が前提で考えていたサレンカレンなのだが、依頼の失敗に対するペナルティーについて考えれば、ルイゼリーンの実績が減ってしまう事になる。


 だったら、達成不可能な依頼をルイゼリーンに押し付けて、依頼失敗に終わらせても、自分がトップに返り咲けると思ったのだ。


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