ツノネズミリス討伐の見込み
ユーリカリア達とルイゼリーンが、ツノネズミリスの依頼について話をしていると、ギルドの入り口が、開いて、また、新たな冒険者達が訪れた。
7人編成の、若いパーティーは、そのまま、ユーリカリア達の後ろに並ぶと挨拶をしてきた。
「おはようございます。」
ルイゼリーンとユーリカリア達がカウンターで話をしているところに、挨拶をしてくる声がした。
ユーリカリア達は、その声のする方を見ると、ジューネスティーン達がギルドに入ってきたところだった。
ユーリカリアは、ジューネスティーンの顔を見ると、ちょうど良いタイミングだと思ったのだろう、表情がそう語っている。
ウィルリーンとシェルリーンは、カミュルイアンを見て嬉しそうにして、直ぐに両脇を固める様にするので、それを見たアメルーミラが驚いてしっまった。
そんな、アメルーミラを見た、レィオーンパードが、なんでそうなったのかの解説をする。
「カミューは、エルフには珍しい男性だろ。 エルフの都合らしいんだ。 あの2人は、カミューの奥さんなんだよ。 出会うと、いつもあんな感じなんだよ。」
アメルーミラは、人前で腕を体に抱きつけるようにするカップルなど、今まで見た事が無かったのだ。
目の前で初めて見る、そんなカップルを見て驚いたのだが、それが、2人の女子が1人の男子に想いを寄せて、3人とも仲が良い雰囲気を醸し出しているのを見て、更に驚いた様だ。
「そうだったんですね。 私はエルフを見るのが、初めてだったので、気にしてませんでしたが、そうだったのですか。」
「エルフは、男子誕生が少ないらしいから、エルフの女子は、エルフの男子を見ると、みんな、あんな感じらしいよ。 これから先もエルフに出会ったら、あんな感じになるのかもしれないよ。」
「そうなんですか。」
レィオーンパードが、アメルーミラに解説をしてくれた。
ただ、猫の亜人であるアメルーミラには、一夫多妻は、貴族や王族といった人達だけの話だと思っていたようなので、カミュルイアンの両脇に張り付くように、2人のエルフが寄り添っているのを見て、少し違和感を感じたようだ。
アメルーミラが、3人のエルフを見てるので、気になったレィオーンパードは、アメルーミラに話しかける。
「ウィルリーンさんと、シェルリーンさんが所属しているパーティーは、Aランクなんだよ。 あそこに背の低い人が、ドワーフのユーリカリアさん。」
そのレィオーンパードの話を聞いて、アメルーミラも名前は聞いたことがあるのだ。
「ああ、人属が居ない女性だけのAランクパーティーのユーリカリアさんだったのですか。 国に居た時、聞いたことがあります。 この人たちだったんですね。」
アメルーミラは、憧れる様な目をして、ユーリカリア達を一人一人、目に焼き付けるように見入っていた。
ルイゼリーンと仕事の話をしていたユーリカリアは、カミュルイアンを両脇から抱える、エルフの2人をみて、ちょっと不機嫌そうにしている。
そんなエルフ達を面白くなさそうに見つつ、ユーリカリアは、ジューネスティーンに話しかける。
「おお、ちょうど良いところに来たな。 ちょっと、話を聞いてくれないか。」
ジューネスティーンは、ユーリカリアの話が何だかは分からなかったが、相談に乗るくらいならと思ったようだ。
「ええ、構いませんよ。」
ユーリカリアは、ジューネスティーンが答えると、ニヤリとする。
(こいつらが、一緒なら、この討伐も確実に終わらせられる。 それにツノネズミリスは、大災害クラスの討伐になるなら、報酬もかなりの高額が見込める。)
ユーリカリアは、自分の思惑を秘めつつ、ジューネスティーンに話し出す。
「実は、ツノネズミリスの討伐の話があるのだが、一緒に討伐に行ってくれないか。」
ユーリカリアは、ストレートにジューネスティーンに言うと、ジューネスティーンは、ツノネズミリスと聞いて、少し表情を曇らせた。
その2人を見比べていたルイゼリーンは、自分なりに何かを計算する様に見ていた。
(この2パーティーにお願いできれば、シュレの魔法を使う事ができるわ。 ギルド本部に入っている情報では、シュレの魔法の能力は、過去に類を見ない、圧倒的な魔法を使えるとあったし、それに、ジュネスについては、魔法の能力を抑えて使っている形跡が有ると報告にあったわ。 ジュネスにもシュレ程とは言わないまでも、一般的な冒険者以上の魔法が使える可能性が有ると考えていいわ。)
ルイゼリーンは、ギルドから出ているジューネスティーン達のパーティーメンバーの報告書の内容を思い出していた。
(ジュネス達をサブパーティーとして登録して、この依頼に組み込めば、この依頼は確実にこなせる。)
ルイゼリーンは、自分の考えが纏まると、ユーリカリア達の話を中断する様にする。
「あのー、ここでは何ですから、場所を変えてお話ししませんか。 討伐の場所も遠いですし、話が決まれば、計画も検討しなければならないでしょうから、会議室を用意します。」
ルイゼリーンの話を聞いていると、引き受ける事が前提で話を進め出しているのが、周りからは分かる。
そう言って、ルイゼリーンは立ち上がると、2組のパーティーを連れて、奥の会議室に連れて行く。
ただ、周りの受付嬢たちの目は、冷ややかにルイゼリーンを見送っていた。
会議室に入ると、ジューネスティーンがユーリカリアにアメルーミラを紹介する。
「最近、一緒に行動しているアメルーミラです。 準メンバーとしてパーティーに入ってもらいましたけど、直ぐにランクは上がると思います。」
紹介されるので、アメルーミラは、挨拶をする。
「初めまして、アメルーミラと言います。 みんなは、ルーミラと呼んでくれます。」
アメルーミラは、緊張気味だったが、噛まずに受けごたえができたと、少し、ホッとした様子を見せる。
それをジーッとユーリカリアは見ていたのだが、直ぐに、声をかける。
「ほーっ、ジュネスがそう言うのか。 じゃあ、期待できそうだな。」
アメルーミラは、期待できるとユーリカリアから言われて、ビックリした。
「いえ、まだ、駆け出しなんです。 今は、色々、教えてもらっているところです。」
「そうか。 まあ、才能があるかどうかが、左右されるのは、子供の時だけだ。 お前さん位の歳になると、今度は、努力がモノをいってくる。 だから、覚えたことは、何度も練習して、自分の体に叩き込んでおくことだ。」
アメルーミラは、ユーリカリアの意外な言葉に驚く。
大陸でも有名なパーティーのリーダーであるユーリカリアから、自分にアドバイスをしてくれるとは思わなかったので、アメルーミラは、嬉しくなった様子を表情に出ていた。
「ありがとうございます。 今の言葉は、しっかりと胸に刻んでおきます。」
そう言って、アメルーミラは、ユーリカリアにお辞儀をすると、ユーリカリアは、笑顔を向ける。
話を終わらせると、全員、会議室のテーブルに座った。




