一つの依頼を複数のパーティーで引き受ける方法
ルイゼリーンは、凄みのある顔で、パーティーメンバー全員が、魔法を使えることを、6人に口止めをすると、いつもの表情に戻る。
どうも、6人全員が魔法を使えるとなったら、この依頼を引き受けさせる方向で、話を進め出したいようだ。
「それで、この依頼なのですが、ユーリカリアさんのパーティーで、引き受けてもらう事はできないでしょうか? ギルドとしても、帝国軍経由で来ている依頼なので、何とか達成したいのですけど。」
(あんた達、全員が魔法を使える様になったなら、旅の途中で範囲魔法を覚えながら練習していってもらえば、何とかなりそうよね。 ここは、彼女達に何とかしてもらわねば。)
ユーリカリアは、困った様な顔をしている。
自分達のメンバーからも、ツノネズミリスを有効に討伐するための範囲攻撃魔法なのだが、全員の力だけでは、対応できないと結論付けてしまっていたので、その状況で、ツノネズミリスの討伐依頼を引き受ける事はできない。
現時点では、自分達には少し荷が重い依頼なので、二の足を踏んでいるのだ。
すると、ユーリカリアは、何かを思いついた様だ。
「なあ、この依頼なんだが、ジュネス達に頼んだ方が、確実じゃないのか? 」
そう言われて、ルイゼリーンは、困った顔をする。
「ええ、そうなんですけど、それが、依頼元からは、最低でもAランクパティーを指定されているんですよ。 なので、この依頼を出せるのは、ユーリカリアさんの所と、あと、2つしか無いんですけど、・・・。」
ユーリカリアは、その表情を見て、他のパーティーから断られたことを察する。
残りのパーティーの編成を考えたら、魔法を使えるパーティーは無い事から、普通に考えて断られる事は理解できる。
「断られたんだな。」
ルイゼリーンは、ユーリカリアに図星を突かれて苦笑いをする。
「はい。 残ったのは、ユーリカリアさんだけなんです。」
ユーリカリアは、残りのAランクパーティーの顔を頭に思い浮かべて、ツノネズミリスと聞いて、一蹴されたのだろうと思ったようだ。
「なるほどな。」
(依頼は、Aランクを指定してきているので、パーティーランクが低い、ジュネスのパーティーには頼めない。 残ったAランクパーテイーは、私達だけか。 だが、全員が魔法を使えると言っても、ウィルリーン以外は、ツノネズミリスに対応できる能力は無い。 魔法士の数が足りないのか。)
困った様な顔を、ユーリカリアもする。
ルイゼリーンもユーリカリアの表情を見ていると、この依頼を受けてくれるか心配になている。
(やっぱり、無理かな。 ツノネズミリスをパーティー単位で対応する事が、無理なのよね。 仕方がないわね。 これは、ユーリルイスに頼んで、断ってもらうかするしかないか。)
ルイゼリーンが、諦めかけていると、ユーリカリアが、何かを考える様にして問いかけた。
「なあ、ルイーゼ。 これって、1パーティーで受けないといけないのか? 」
諦めかけていたルイゼリーンに、ユーリカリアは聞く。
ただ、その一言によって、ルイゼリーンは、ある事に気がついた。
「あっ! 」
ルイゼリーンは、表情が明るくなってきた。
「この依頼なんだが、私のところがメインパーティーとして受けて、サブパーティーとして、ジュネスのパーティーが入って、合同で受ける形にできないのか? 」
本来であれば、一つの依頼は、一つのパーティーで受けるのだが、達成困難と判断されれば、複数のパーティーで対応する事も可能なのだ。
ただ、完了した後に報酬の取り分で揉めたり、お互いにライバル視する為に、獲物の取り合いになったりと、トラブルの元になる事が多いので、今まで、あまり実行されてない方法だったので、ルイゼリーンも忘れていた様だ。
「そうですね。 ユーリカリアさんのパーティーがメインで、ジューネスティーンさんのパーティーがサブとして受ければ、クライアントのAランク以上の条件もクリアーできますし、シュレイノリアさんの範囲攻撃魔法を使う事も可能になりますね。」
ルイゼリーンの頭の中に、依頼を達成する可能性が見えてきたので、先ほどの不安そうな表情は無くなっていた。
「そうなる。 それと、彼らの使う馬車なのだが、メチャクチャ速いんだ。 通常より、早く現場に行く事も可能なんだよ。」
ルイゼリーンは、早いと言っても、馬車の移動速度は知っている。
そして、早く走らせれば、馬や地竜を休ませる時間が長くなり、移動距離が短くなってしまい、結果として、1日の移動距離が落ちてしまう為、この様な長距離移動の場合は、ゆっくり歩かせるのが鉄則なのだ。
いくら、ジューネスティーン達が使う馬車が早いと言っても、時速4kmが、時速4.5km程度に上がる位だろうとルイゼリーンは、思ったのだ。
「そうは言っても、ツカ辺境伯領ですよ。 帝都から500kmも有るんですよ。 通常なら12・3日は掛かりますよ。」
ユーリカリアは、カウンターに体を寄せて、ルイゼリーンに、目一杯近づくと、ニヤリと笑う。
「あの地竜、ここから、南の山脈の麓まで、1時間程度で走ったんだ。 それ以上の長距離だったらどうだか分からないが、上手くすれば、3日は、短縮できると思うんだ。」
「はぁ。」
ルイゼリーンは、信じがたい話だと思いつつユーリカリアの話を聞く。




