魔法が使えるようになったユーリカリア達の話を聞くルイゼリーン
ルイゼリーンは、ユーリカリア達の話から、魔法というワードが聞こえてきたことに違和感を覚えたのだ。
ユーリカリア達のメンバーの中で、魔法が使えるのは、ウィルリーンだけだったのだ。
そのウィルリーンの魔法は、他の追随を許さないほど、凄い威力を出せると聞いていたが、流石に、ツノネズミリスの大群とは、苦しいと言っていた。
そこまでは、ルイゼリーンも納得できたのだ。
しかし、カウンターの前で、ユーリカリア達の話を聞いていたルイゼリーンは、話についていけなかった事がある。
ルイゼリーンは、今の話の中に、自分の知らない内容がある事に気がついた。
(えっ! 今、全員に魔法について聞いてたわよ。 しかも、全員、自分の魔法の能力を把握していたみたいだけど、範囲攻撃が使える? なんで? ユーリカリアさんのパーティーは、ウィルリーンさんだけしか、魔法は使えないはずじゃないの? )
ユーリカリア達のパーティーで魔法が使えるのは、ウィルリーンだけだという認識でいたのだが、今の話を聞くと、全員が魔法を使える前提で話をしているのだ。
何だか、自分の知らないユーリカリア達が、目の前にいるように思えたのだろう、ルイゼリーンは、顔を引き攣らせつつ、作り笑いをして誤魔化そうとしている。
「あのー、ユーリカリアさん。 ちょっと、確認させてもらってよろしいですか? 」
ルイゼリーンは、恐る恐る、ユーリカリアに話しかける。
「ん? どうかしたのか? 」
ユーリカリアは、平然とルイゼリーンに答える。
「今の話を聞くと、ウィルリーンさん以外も、魔法が使える様に聞こえたのですけど、・・・。」
ルイゼリーンは、恐る恐る、ユーリカリア達の魔法について聞いてきたのだが、ユーリカリアは、何も気にする様子もなく、その質問に答える。
「ああ、全員が、何種類かの魔法が使える様になった。 水魔法と土魔法は全員が使える。 私とシェルリーンは、火魔法がまだ使えないが、他は、全員が使える様になった。 ああ、後、風魔法も全員が使えるぞ。」
ルイゼリーンは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
そのルイゼリーンの表情を見て、ユーリカリアは、ルイゼリーンに魔法が使える様になった事を話して無かった事に気がついた。
「ああ、そういえば、言ってなかったな。」
魔法が使えなかった人が、突然、魔法が使える様になるなんて話をルイゼリーンは、聞いた事が無いのだと、言うより、一般常識の範囲で、魔法が使えない人は一生魔法は使えない。
時々、ギルドの高等学校で、魔法の講義を聞いて使えるようになった生徒がいたと聞いたことがあるのだが、ごく稀な例で、10年に1人程度の割合で発生するだけなので、子供の時の適性試験の見落とし程度で済まされていたのだ。
通常なら、子供の頃の魔法適性検査で、魔法適性が無いとされた人は、その後も魔法が使える様になったなんて話は聞いた事が無いのだ。
なんで、ユーリカリア達が、魔法を使える様になったのか、ギルドの職員として聞かなければならない。
「あのー、何で、そんなに簡単に使える様になってしまったんですか? 」
ユーリカリア達にしてみれば、魔法が使えてラッキー程度にしか考えてなかったので、事の重大性に気がついてないのだ。
ただ、ルイゼリーンとすれば、ギルドの職員でもあり、ギルドの情報部にも所属しており、魔法についても、歴史や、適正の有無について、詳しく聞かされているので、ユーリカリア達のように呑気に聞いているわけにはいかない。
かなり、ソワソワしながら、ユーリカリア達に魔法が使える理由を聞いていた。
「ああ、ジュネスに教えてもらったら、できる様になった。」
しかし、ユーリカリアが、あっけらかんと答えると、後ろにいる魔法を使えなかった4人も、うんうんと頷いている。
それを見て、ルイゼリーンは、顔を引き攣らせる。
(あーっ、あの人達が原因だったんですね。 何で、魔法を使えない人に魔法を教えられるだか。 ん? これって、もし、他に知られたら、大変な事になるんじゃ! )
ルイゼリーンは、今度は、青い顔をすると、カウンターに乗り出して、ユーリカリアの手を取る。
「あの、すみません。 今の話ですけど、他には、内緒にしておいて下さい。」
凄みのある顔で、ユーリカリアに迫ってきていたので、ユーリカリアもその迫力に圧倒されて、頷くだけしかできないが、ルイゼリーンは、ユーリカリアが納得した反応を示したので、後ろの4人を睨む。
「あなた方も今の話は、他ではしないでください! 」
ルイゼリーンが、一人一人の顔を睨むので、残りの4人も頷いた。
誰もが、ルイゼリーンの初めて見る凄みのある顔に圧倒されて、声が出ないので、頷くだけで答えたのだ。
すると、今度は、ウィルリーンに向く。
「あなたもです。」
ウィルリーンもルイゼリーンに圧倒されてしまった様だ。




