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Aランクパーティー限定の依頼

 

 ユーリカリアは、いつもの様にギルドに向かう。


 ギルドで、何か良さそうな依頼が有れば、それを受けるか、無ければ、いつもの狩場で魔物のコアを集める事になる。


 ユーリカリアは、ギルドの扉をくぐり、カウンターに向かいつつ、ルイゼリーンの表情を見て、少し沈んだ様な表情を気にしつつ、ルイゼリーンに声を掛ける。


「おはよう。 何か私達に出来そうな依頼はあるかい? 」


 ユーリカリアの言葉に、ルイゼリーンは、ちょっと困った様な顔で答えてきた。


「おはようございます。 実は、お願いしたい案件があるのですけど、ちょっと困った依頼なんですよ。 できれば、少し話を聞いてもらえますか? 」


 改まった様子のルイゼリーンを見た、ユーリカリアは、その表情が気になった。


「ああ、私達に出来そうな依頼なら受けるよ。」


 そう言うと、ルイゼリーンは、少し安心した様だが、完全では無い。


 少し引き攣ったような笑いを浮かべながら、内容を話し出す。


「実は、ツカ辺境伯領でツノネズミリスが大量発生した様なのです。 緊急の依頼なのですが、1パーティーだと、少し苦しいのかと思うのです。 それで、どうしようかと困ってたんです。」


(帝国のAランクは、全部断られていると話したら、やっぱり、ユーリカリアさんも断るわよね。)


 ルイゼリーンは、ユーリカリアの表情を見つつ、自分がユーリカリアの立場だったらと考えつつ、話をしていたのだ。


 一方、ユーリカリアは、ルイゼリーンが困った様な表情をしていたのが、ツノネズミリスのせいだと分かったようだ。


 ツノネズミリスは、サイズこそ、中型犬程度なのだが、大量に発生する事と、群れて移動する。


 その群れは、組織的な攻撃はしてこないのだが、一度に数十匹を相手にする事になるので、ウィルリーンの様な範囲攻撃魔法が出来る魔法士に頼る事になる。


 しかし、ユーリカリアもツノネズミリスと聞いて、二の足を踏んでいる。


「厄介な魔物が発生したのだな。」


 そう言うと、ユーリカリアは、ウィルリーンを見る。


「なあ、このツノネズミリスの依頼だが、どうだろうか。」


 ユーリカリア自身も魔法は使える様になったのだが、まだ、攻撃魔法として使えるところまではいってない。


 魔法については、ウィルリーンが、面倒を見て、徐々に、底上げを行なっているのだが、覚えて間も無いメンバー達の魔法は、範囲攻撃を連発できる様なというより、魔法が撃てる程度で、威力も命中精度も、運が良ければ当たるだろう程度なのだ。


 ただ、ツノネズミリスの様な大量発生する魔物ならば、魔法を放てば、狙った魔物に当たらなくても、周辺の魔物に当たるだろうが、命中精度の無い魔法は、リスクが高い。


「ツノネズミリスが、何匹なのかによるけど、範囲魔法となると、ちょっと苦しいかな。 フィルルカーシャのアイスランスも、基本は単体攻撃に特化して覚えたから、ツノネズミリスには、ちょっと不向きです。 炎も、あまり大きなものには、まだ出来てないから、10匹程度なら、対応できるとは思いますけど、ツノネズミリスとなると、魔法が追いつかないでしょうね。」


 後ろでユーリカリアの話を聞いていたウィルリーンが、メンバーの魔法に対する評価を、ユーリカリアに伝える。


 ウィルリーンの話は、ユーリカリアも同意見だったようだ。


 しかし、ユーリカリアは、念のため、メンバー全員の意見を聞くことにしたのだろう、後ろにいる4人を、ユーリカリアは見ると聞いてみた。


「なあ、お前達はどうだ? 」


 実際に当人の意見を聞いて、ウィルリーンの評価と比較することにしたのだ。


「私は、10匹程度なら、何とか対応できるかと思います。」


 フェイルカミラが、直ぐに答えるのだが、数万匹のうちの10匹では、立て続けに魔法を連発しても、焼け石に水なので、ユーリカリアも、その意見に納得すると、中でも魔法の上達の早かったフィルルカーシャを見る。


「えっ、私は、砲弾型アイスランスに特化して覚えているんだから、私の受け持ちは、1匹ずつだよ。 連発させる事だって、やっと始めたばかりなんだから、次が撃てるまでのインターバル時間が、どれだけかかるか分からないわよ。 範囲攻撃魔法は、アイスランスに自信が持てたらと思っていたのだから、まだ、実戦に使える様な魔法になってないわよ。」


 フィルルカーシャは、シュレイノリアの、砲弾型アイスランスを取得しようとしているので、単体攻撃に特化していた。


 そのため、範囲攻撃を覚えるのは、まだ、先の話だと思っていたのだ。


 周りが黙ってしまったその雰囲気に耐えられなくなり、フィルルカーシャは、その雰囲気を何とかしようとする。


「それだったら、ヴィラレット、お前はどうなのよ。」


「ええーっ、私だって、まだ、そんな範囲攻撃できる様な魔法なんて覚えてないですよ。 炎魔法はできますけど、私だって、多分10匹程度の魔物に当てられる程度の大きさにしかならないと思います。」


 フィルルカーシャに話を振られて、ビックリした様に答えると、最後に残ったシェルリーンを全員が見る。


 焦るシェルリーンが、慌てて答える。


「みんな、わかっているはずです。 私だって、そんなに変わりませんよ。 みんな、覚え始めたばかりなんですから、そんなに大掛かりな範囲魔法が使えるわけないじゃないですかぁ。」


 シェルリーンに言われて、もっともだと全員が納得する。


「だよなぁ。 そうなると、ウィルリーン、お前の魔法が頼りって事だよな。」


 それを聞いて、ウィルリーンも流石に引いた。


「ちょっと、私1人の魔法で対処するつもりなの? それはいくら何でも無謀です。 襲ってくるツノネズミリスって、数千匹単位でしょ。 さすが、何百発も範囲魔法を連発させるのは、私でもちょっと難しいわよ。」


 ビビり気味に、ウィルリーンも説明したのを聞いて、ユーリカリアも納得する様な表情を見せた。


「やっぱり、そうなるよな。」


 全員の意見が出揃ったところで、ツノネズミリスの討伐依頼について、ユーリカリア達のパーティーでも、討伐が厳しい依頼だと確認できたので、ルイゼリーンに、断ろうかとユーリカリアがカウンターに向く。


「やっぱり、無理な相談ですよねぇ。」


 ルイゼリーンは、やっぱり、無理かと思いつつ、今の話を聞いていた。


 ギルドの冒険者では対応出来ないと諦めかけていたのだが、ルイゼリーンは、今のユーリカリア達が話していた内容について、何か聞き逃してはいけないワードが入っていたような気がするのだった。


 ツノネズミリスの事で、頭を悩ませていたので、見落としていたのだが、何気に聞いていた中に、魔法というワードが、全員から聞こえたような気がしたのだ。


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