プレゼントの反応
レィオーンパードは、アメルーミラに、プレゼントの話をするまで、恥ずかしいと思って、ドキドキしていたのだが、今度は、気に入ってもらえなかったと思われるので、不安になってきたのだ。
自分が、プレゼントだと言った後は、メンバーの誰もが声を掛けてこない。
当然、目の前に居るアメルーミラも黙っている。
選んだ服が失敗だったのだと、レィオーンパードは思うので、ダメだったのなら、もう一度、別の服を選び直そうかと思ったようだ。
「あのー、ごめん、気に入らなかったら、別のにするよ。」
少し残念そうに、レィオーンパードが言うと、それを聞いたアメルーミラは慌てて、それを否定する。
「いえ、違うんです。 とても嬉しいんです。 私、こんな事された事がなかったので、どうやって表現したら良いのか分からなくって。」
そう言って、アメルーミラの頬を涙が流れる。
「だって、泣いてるし。」
そう言われて、アメルーミラは、右手で、慌てて、頬を流れる涙を拭いながら、レィオーンパードに答える。
「涙は、悲しい時だけじゃなくて、嬉しい時も流れるんです。」
そう言って、両手で涙を拭おうとして、持っていた服が、落ちそうになるのを、アリアリーシャが、慌てて持ってあげると、アメルーミラは、両手で涙を拭いながら、泣き出してしまった。
それをアンジュリーンが、胸に抱えるようにして抱くが、身長差が10cm程なので、顔を右肩に当てるようにして抱くと、アメルーミラは肩を上下して泣いてしまう。
その様子を、どうしようかと思って、おどおどして、見ているレィオーンパードを、放置しながら、アンジュリーンが、アメルーミラを宥める。
「過去は、変えられないけど、未来は、あなた次第でなんとでもなるの。 欲しい物があったら、あなたは、冒険者として、お金を稼ぐことが出来るの。 今が幸せだと思うなら、この幸せを、これからも味わえるように努力するの。 あなたは、その力を得たのよ。 だから努力次第で、また、同じ時間を作る事が出来るのよ。」
それを聞いて、頷いているのか、泣いているのか、分からないような返事をする。
アンジュリーンが、頭を撫でてあげていると、少し落ち着いた様子になる。
アメルーミラは、アンジュリーンの言葉がとても心に沁みたようだ。
過去の悲惨な体験を、記憶から消し去る事は出来ないが、冒険者になる事で、同じ事をされるような事は、起こらない。
それなら、不幸は幸福な時間を過ごす事で、上書きしていけば良いのだと考えると、アンジュリーンから体を離す。
「ありがとうございます。 こんな幸せな気持ちになれるなんて思わなかったから、本当に嬉しいです。」
そうアンジュリーンに言うと、メンバーのみんなに、お礼をいう。
そんな中、どういった態度をとっていいのかと思っていたレィオーンパードに向くと、レィオーンパードにお礼を言う。
「ありがとうございます。 あなた方のおかげでとても元気が出ました。 こんなに幸せな気持ちになれるなんて思なかったので、本当に幸せです。 ありがとうございました。」
そう言われて、顔を少し赤くするレィオーンパードも、プレゼントを渡すときの、ドキドキと、その後の沈黙による不安な気持ちもおさまってきた。
そしてアメルーミラから、自分へのお礼の言葉を聞いてホッとする。
「あ、ああ、そう思ってくれて、こっちも嬉しいよ。」
「でも、私なんかのために、こんなにして貰えるなんて、とても嬉しいんですけど、高価な物をもらうなんてなんだが悪いわ。」
気持ちが落ち着いてくると、自分がこんなに貰って良いのかと思てきたのだ。
「かまわないさ。 ルーミラの実力なら、もっと上を狙う事も、出来るようになると思う。 経験を積んでいけば、もっと上の魔物だって、狩ることが出来るようになると思うから、そうなれば、次も頑張ろうって気持ちにもなるだろう。 辛い事だって、楽しい事が待っていると思えば頑張れるし、諦めかけた時でも、楽しみが待っているから、もう少し頑張ろうと考えるし、それに早く終わらせて、楽しい時間を過ごそうと思うものなのだよ。 これは、これから先、ルーミラが頑張る気持ちを、持ち続ける為に持っていて欲しい。」
それを聞いたアメルーミラ以外は、レィオーンパードが、珍しく気の利いた事言うと感心する。
だが、アメルーミラは、レィオーンパードの言葉が、とても心に染みていた。
「そうですね。 こんな楽しい時間が待ってるなら、辛い事も忘れられそうですね。」
アメルーミラは、盗賊団での出来事の事を思って、そう言ったのだが、レィオーンパードは、魔物との戦いの事と思ったようで、注意を促す。
「でも、だからといって、実力以上の魔物を狙うのは、やめておく事。 冒険者は、魔物と対峙するけど、それは命のやり取りだから、実力を、遥かに超える魔物とは対峙しないこと。 魔物にとって冒険者は、食料でしかないのだから、向こうも生きる為に襲ってくるんだ。 その辺は、胸に刻んでおくようにね。」
「はい。 でも、今は、この幸せをもっと味わせてください。」
そう言って、テーブルにある3着を眺めながらうっとりする。
ジューネスティーンは、リーシェルリアの元にいく。
「ありがとうございます。 さっき、持ってきてくれた服は、どれも、ルーミラが、選んだ服だったのですね。」
「ええ、その方が彼女も貰ったら嬉しいでしょう。 諦めてた服を、男性からプレゼントされたら、あなた方の株も上がりますし。」
そう言って、笑顔で答える。
「でも、株を上げなければいけなかったのは、お一人だけだったみたいですね。」
そう言って、レィオーンパードを見て、クスクスと笑う。
「それじゃあ、あの服の代金を払います。」
そう言われるとリーシェルリアはビジネスの顔になると、
「かしこまりました。 それでは、あちらでお支払いをお願いします。」
そう言って、カウンターの方を指すので、そっちに移動すると、支払い金額を言われる。
ジューネスティーンは、金額を聞いて少し驚くことになる。
「では、スカートが銀貨1枚と中銅貨3枚、それとブラウスの代金が銅貨8枚になります。」
せいぜい、中銅貨5枚もあれば、お釣りがくると、たかを括っていたのだが、銀貨1枚を超えてしまったのを聞いて驚いている。
その姿を見て、リーシェルリアが、気まずそうにいう。
「すみません。 あの緑と茶色のドレスが高額だったんです。」
そう言われて、自分が選んだ服だけが高額だった事に気がついた。
「そうだったんですか。 何だか生地が、他の物と違っているような気がして、凄くきれいに見えたんで、思わず選んでしまいました。」
「あの生地の違いが分かるのでしたら、かなりの目利きですよ。 微妙な生地の違いなんて、普通、ちょっと見ただけでは分からない物ですから。」
そう言って、ジューネスティーンを褒める。
支払いの段になって、プレゼントを違う物にするなんて事を、言い出す勇気が無いので、ジューネスティーンは、仕方がなく言われた金額を支払う。
ただ、リーシェルリアは、ジューネスティーンの後ろに居るシュレイノリアを見て、少し不思議そうな顔をしている。
そして、シュレイノリアの視線の先にジューネスティーンが居て、ジーッとジューネスティーンに視線を向けているのが気になったようだ。




