アメルーミラの買い物とプレゼント
一方、女子組は、下着の選択が終わり、上着の選択に入っていた。
3人に色々と言われながらと言うより、2人に色々と言われながらだったので、時間が掛かったようだ。
特に、アリアリーシャの下着の趣味の主張に対して、アンジュリーンが弁護するという構図だったようだ。
アリアリーシャの勧める下着の大胆さに、恥ずかしがるアメルーミラを見て、更に食い込みそうな、どうやって隠すのか分からないような下着を勧めていた。
最初は、アンジュリーンも、同じ亜人ならと思って、黙って見ていたようだが、何枚目かの下着に流石にそれは無いと感じたのだ。
割って入って、アリアリーシャを宥めたのだが、それが良くなかったようで、揉めてしまったようだ。
ただ、結果として、アメルーミラが自分自身で選ぶ事になって、なんとか落ち着いたようだが、アリアリーシャには、少し不満があったようだった。
普段用の上着については予算的に問題が有るとの事で、2着だけを購入した。
一つは、ズボンで狩にも使えそうなものを上のシャツと選んで、もう一つは、普段着用のワンピースのスカートだった。
黒地のスカートに、空色のエプロンが縫い付けてあり、後ろは、同じ色の太めのリボンで、寸法を調整できるようになっており、そしてウエストも紐で詰めることが出来るようになっていた。
胸元は、黒の下地が大きく開いているのだが、白のブラウスの生地が、胸元と肩から二の腕をゆったりと覆うように縫い付けてある。
ブラウスを別に用意するものではなく、一体になった物を選んでいた。
その後ろで、リーシェルリアは、ジューネスティーン達を見てニコニコしている。
その目は、同じ物を買わせてないのだから大丈夫だと言っている。
「気に入った服が選べたみたいだね。」
ジューネスティーンは、アメルーミラの顔が満足そうだったのを見て、そう言うと、アメルーミラは、少し顔を赤めて答える。
「ええ、とても良い服が選べました。 自分で選んで買うなんて、今まで無かったから、買い物が、こんなに楽しいなんて思いませんでした。」
アメルーミラは、初めて、自分の服を、自分で選んで買った事が、とても嬉しかったようだ。
アメルーミラは、父親と暮らしていた家では、家の周りか、山の中で罠を使った狩で、動物を狩っていた。
父親は、自分の作った木工製品を売りに、時々、街に出ていたが、彼女が、買い物に街に行く事は無かったようだ。
今日、初めて、自分で稼いだお金で、自分の為の買い物をしたのだ。
その為、とてもドキドキしていたのだ。
嬉しそうに、自分が、買ったものを抱えているのを、ジューネスティーンは、見ると、レィオーンパードに視線を送る。
レィオーンパードは、オドオドとして、アメルーミラに渡すプレゼントの事を、言い出せずにいると、アンジュリーンが、アメルーミラに話しかける。
「ねえ、楽しかったでしょ。 買い物は、心を癒してくれるでしょ。 それに、値段が高くて買えなかった服を見て、今度は、あの服を買おうと思って、その金額を稼ごうって思わなかった? 」
アメルーミラは、アンジュリーンに言われて、納得した様子をする。
「ええ、思いました。 予算オーバーで買えなかった服を買うために、働こうって気持ちが湧いてきて、とっても素敵な時間でした。」
「そうでしょ。 女の子にとって買い物は心の癒しなの。 それより、そこにあるワンピースは、さっき、あなたが見てたのじゃないの。」
そう言って、テーブルの脇に立てて置かれた、3着のワンピースをアンジュリーンが指摘する。
「あれぇ、この緑のワンピースは、さっき、あなたが試着してから、諦めたのだわね。 他のもみんなそうだわねえ。」
白々しくアンジュリーンが言うと、レィオーンパードは、顔を真っ赤にして、額に冷や汗が出ていた。
そのレィオーンパードを見て、アンジュリーンは、悦にいった表情をする。
「試着するだけだと思って、着てみただけだったのです。 その緑のワンピースは、シックだけどとても魅力的だったので、次に機会があったら買いたいと思ってったのです。 それと、そのオレンジ色と緑のコントラストがとても素敵だと思ったんですけど、私が着たら、周りの人が変な目で見るんじゃないかって思って諦めたんです。」
それを聞いて、アンジュリーンは、アメルーミラの肩に手を置く。
「とても似合ってたのに、だから、勿体ないなって言ったのに、選ばなかったのよ、この娘。」
そう言って、レィオーンパードをジト目で見てみると、レィオーンパードは、顔を赤くしているので、それを面白そうに、アンジュリーンは見ている。
そんなアンジュリーンの話を聞いているレィオーンパードは、テーブルを凝視しており、その心中は、どうやって、アメルーミラにプレゼントの話を伝えたら良いのかと考えており、心臓が飛び出すのではないかと思う程、ドキドキという鼓動の音を感じているのだ。
また、顔も真っ赤になり、額には冷や汗が出て、時々、その汗が流れている。
「でも、なんで、さっき試着した服がここにあるのですか? 」
アメルーミラは、不思議そうに見ている。
すると、アリアリーシャが、レィオーンパードを見て、アンジュリーンが、店に入るとき、遅れて入ってきた時の事を思い出す。
(そういえば、アンジュは、店に入る前に、男子3人と外で何か話していたわね。 そこに、ルーミラが諦めた3着があるし、アンジュのあの表情は、絶対に、何か企んでいる顔だわ。 ・・・。 レオンの表情、カミューもジュネスも、チラチラとレオンを見ているってことは、・・・。)
アリアリーシャも、ニヤリとする。
店に入る前に、アンジュリーンが、何を男子3人と話していたのかを察すると、レィオーンパードに追い討ちを掛ける。
「あれー、レィオーンパードがぁ、何かぁ、言いたそうにぃしてますぅ。 何かなぁ。」
顔は、いたずらっ子のような顔をして、椅子に座っているレィオーンパードの顔を覗き込む。
心の準備ができてないレィオーンパードが、顔を真っ赤にしていたのだが、アリアリーシャの一言で吹っ切ったように立ち上がると、一気に話し出す。
「こ、これ、ぼっ、僕達から君へのプレゼントです。 受け取ってください。」
立ち上がると同時に、下を向いて捲し立てるように言った。
恥ずかしさから、アメルーミラの顔を見れないのだ。
それを聞いて、アメルーミラも固まってしまって、信じられないという顔をしている。
沈黙が続く。
その沈黙が、失敗してしまったのではと、レィオーンパードの頭をよぎり、恐る恐る、目を上に上げていき、ゆっくりと、アメルーミラの顔を覗こうとする。
アメルーミラは、自分で購入した服を左手で胸に抱えているのがわかる。
レィオーンパードは、さらに、恐る恐る視線をあげると、右手は口を押さえているのが分かり、目は大きく見開かれ、若干、涙目になっているように思えた。
アメルーミラの涙目を、レィオーンパードは、見て不安になる。
プレゼントは、失敗だったのかと、頭を過ぎるのだ。




