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アメルーミラの遠慮

 

 アメルーミラの胸に痛みが走る。


 その痛みに目が覚めて体を起こすと、胸の痛みは消える。


 奴隷紋からの痛みは、体を起こすと消えたので、ヲンムンが「起きろ! 」と、命令したのだろうと、アメルーミラは認識する。


 外を見ると、日が上り始めたところで、あたりも明るくなってきてはいるが、活動するには少し早い。


 ヲンムンは、ジューネスティーン達の監視を行なっているので、早めに動き出す。


 アメルーミラには、奴隷紋が有効なのだと思わせるために、朝には早めに「起きろ! 」と、隣の金の帽子亭から行っている。


 その命令によって、アメルーミラに離れていても自分の命令は有効だということを分からせる様にしているのだ。




 アメルーミラとしても、奴隷紋の痛みで目が覚める。


 起き上がると痛みが消えることで、自分は奴隷なのだと実感するのだ。


 そんな憂鬱な目覚めを、1人の部屋で感じて頭を抱える。


(早く、この奴隷紋から解放されたい。)


 アメルーミラは、そう思いつつ、ベットから出て、昨日、借りたワンピースに体を通す。


 今日は、早めにジューネスティーン達の部屋に行って、昨日、洗った自分の服に着替えてから朝食を取ろうと思い部屋を出る。


 ドアを開けてみると、昨日の様にレィオーンパードは居なかった。


 昨日は2人で話ができたので、かなり不安な気持ちが紛れたのだ。


 アメルーミラは、少し残念な気持ちになる。


 その気持ちに気がつくと、思わず声が出た。


「私ったら、何を期待してたのかしら。」


 そう呟いて、部屋の鍵を閉めると、4階のジューネスティーン達の部屋に向かう。




 今日は、自分の日常品を買う事になっているので、帝都の外には行かないという事だった。


(この仕事が終わった後に解放されたら、この国を出なければ、また、捕まって、奴隷にされてしまうかもしれないわ。 この国を出て、別の国に行く事になるけど、街道を、私1人で歩いて行くなんて不可能なんだから、それまでに旅費を稼いでおかなけれならないわ。 だったら、買い物に使うお金は最小限に止めておかないとね。)


 アメルーミラは、考えながら階段を上がる。




 ジューネスティーン達の部屋の前まで来ると、その部屋のドアが開いて、中から、レィオーンパードが出てきた。


 レィオーンパードは、アメルーミラが、ドアの前に居るのを見て話しかけてきた。


「ちょうど良かった。 今、呼びに行こうと思ってたんだ。 さぁ、入って。」


 そう言って、部屋の中に案内される。




 部屋のリビングには、他のメンバーも起きていて、テーブルやソファーに座って寛いでいた。


 全員、いつもの冒険者用の服ではなく、街中を歩くような服を着ていいる。


 女子3人も、それぞれの個性に沿った服を着ていた。


 3人とも、昨日、使わせているアメルーミラに合わせてスカートを履いている。


 アメルーミラを、確認するとジューネスティーンが尋ねてきた。


「昨日も話したけど、今日は、君の日常品を購入するので狩は無しだ。 食事の後に出かけるけど、欲しいものとかを、考えておいてもらえただろうか? 」


「ええ、大体の物は考えてあります。」


「そう。 じゃあ、食事をした後に出かけよう。」


 そう言うと、ジューネスティーンは、立ち上がって部屋を出ようとする。


「あのー、着替えさせてもらえないでしょうか? 」


 そう言うと、アンジュリーンが、嬉しそうに話しかける。


「そうよね。 じゃあ、お出かけ用の服にしましょうか。 私の服を貸すからシュレイノリア、私の服を出してくれない。」


 それを聞いて、アメルーミラは慌てる。


 自分の考えとは違うことに戸惑ったのだ。


「いえ、自分の服に、着替えさせてもらおうと、思ったのですけど。」


「あら、私のは気に入らなかったのなら。 でも、シュレイノリアの服は微妙だし、姉さんのは、少し小さいと思うのだけど。」


「いえ、アンジュリーンさんの服は、とても素敵だと思います。」


「なら、別に構わないわよ。」


「いえ、申し訳ないので、ちょっと。」


 それを聞いて、アンジュリーンは、納得したような表情をした。


「ああ、そう言う事なら、私は気にしてないわ。 それより、買い物に出かける時に、あなただけ、冒険者のような服だと、変に見られるわよ。 買い物に行くのだから、ある程度、私達にも合わせた服にして欲しいのよ。 今、着ている服程度のものを着てもらわないと、どんな取り合わせのかって、目立つのも困るから、なるべく同じ様なレベルにして欲しいの。」


「あのぉ、女の子は、可愛く着飾るものなのですよ。 外を出歩くのに、地味な冒険者の服より、遊びにいく様な服を着て、街を、みんなで歩いてみませんか。」


 言われることに、なんとなくはわかるのだが、やはり、遠慮が出てしまっていて、俯いて黙ってしまっている。


「アメルーミラは、似合っている。」


 ボソリと、シュレイノリアが言うと、釣られてジューネスティーンが、続けて話しかける。


「その服を着ていると可愛いと思うよ。 それに、アンジュリーンが、使って構わないって言ってるんだから、それでいいんじゃないの。」


 そう言って、カミュルイアンに話を振る。


 何か言えと目で訴えると、カミュルイアンも、渋々、話しかけてきた。


「うん。 そうだね。 オイラも可愛いと思う。」


 それを聞いて、アンジュリーンとアリアリーシャは、レィオーンパードを、じーっと見つめる。


 2人の視線に気がつくと、レィオーンパードは、何事かと思って、おどおどすると、ジューネスティーンを見る。


 ジューネスティーンは、顎をしゃくって、アメルーミラに声をかける様に仕草をする。


 アンジュリーンもアリアリーシャも視線を合わせると、アメルーミラをみて、何か言えと訴えているのがわかる。


「そ、その服、とても似合っているよ。 だから、その服を着て、一緒に買い物に行こう。 アンジュリーンも使って良いって言っているんだから、遠慮せずに借りておこうよ。」


 アメルーミラは俯いた顔が赤くなる。


「ありがとうございます。 とても嬉しいです。 こんなに良くしていただけるなんて、なんてお礼をすれば良いのか・・・。」


 ジューネスティーン達の好意が嬉しく思うのと、その反面で、自分はこの人達の秘密を、ヲンムンに伝えなくてはならないという、後ろめたさを感じて涙が出てしまう。


 その涙をみて、メンバーが狼狽える。


 どうしようかと思っていると、アメルーミラも、自分が涙を流していることに気がつき、慌てて涙を拭いながら話を続ける。


「ごめんなさい。 良くしてもらって、とても嬉しくて、思わず涙が出てしまいました。」


「いいのよ。 それより朝食にいきましょうよ。 こんなところで時間を潰さないで、買い物の時間をとりましょうよ。」


「うん。 そうしよう。」


 そう言うと、立ち上がって、部屋を出ようとする。


 するとアンジュリーンが、レィオーンパードと、すれ違いざまに耳元で囁く。


「あんた、ちゃんとエスコートするのよ。」


 そう言って、ぷいっと顔を背けると、先に歩いて部屋を出ていく。


 ジューネスティーンは、レィオーンパードの肩を叩いて行く。


 何事かとレィオーンパードは、ジューネスティーンとアンジュリーンの態度に不安を覚えるのだった。


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