表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1122/1356

試験結果の報告


 アメルーミラは、借りている服を壁のハンガーに掛けてベットで横になる。


 少しウトウトし始めると、突然胸に痛みが走る。


 ヲンムンの呼び出しである。


 アメルーミラは、慌てて壁のハンガーにかかった服を着ると部屋を出る。


 フロントで部屋の鍵を渡すと、外に出る理由を説明する。


「少し夜風に当たってきます。」


 そう言って、玄関を出る。




 玄関の脇にヲンムンが昨日と同じように居る。


 直ぐに目が会うと、金糸雀亭の脇までヲンムンの後を追いかけるようについて行く。


 脇に入ると、ヲンムンは、直ぐにアメルーミラに話しかけてきた。


「今日も誰かの服を借りているのか。 あの連中は狩の後に風呂にでも入っているのか。」


「ええ、全員、戻った後、直ぐに体を洗ってます。」


「随分と贅沢な暮らしをしているんだな。 あの連中は。」


 ヲンムンは、悔しそうにそう言う。


「それより、今日の状況はどうだったんだ。」


「さっき、食事の時に準メンバーとして同行を許されました。 強い魔物の時は、馬車とかの荷物番ということになります。」


 それを聞いてヲンムンは、とりあえず潜入に成功したことに安堵する。


「そういえば、今日は、色々と魔物を狩ってたじゃないか。 あんなにお前が剣で魔物を倒せるとは思わなかったぞ。 あの技はどこで覚えたんだ。」


 見習い冒険者ではなく、駆け出し冒険者でも通ったと思える程の腕だったのを思い出す。


「剣は、あの時、初めて教えてもらったんです。 それを、言われるがまま試したら、魔物を倒せたんです。」


 アメルーミラは、恐る恐る答えるのだが、ヲンムンは、その答えを聞いて、何を言っているのだと思ったようだ。


「あのなあ、帝国付近の魔物は危険な魔物が多いんだ。 素人が、初めて剣を持って倒せるようなレベルじゃないんだ。 特に、隠れて待ち伏せする魔物が多いのと、魔物の足が速い事から、帝国で、新人冒険者は育つ前に死ぬって言われているんだよ。 帝国で冒険者になろうとする場合は、南の王国とか、近隣の国で経験を積んでから戻って来るんだ。 初めて剣を持って倒せるような魔物じゃない。」


 そう言って、アメルーミラに食ってかかる。


「いえ、嘘は言っておりません。 あの人達に教えられたまま、剣を使ったら魔物を倒せたんです。」


 アメルーミラは、暴力を振るわれるかと思い、一歩引いて答えた。


 その姿を見て、奴隷紋が反応していない事にヲンムンは気がついた。


 嘘を言えば、直ぐに反応して奴隷紋に痛みが走るはずであるが、そんな形跡は見受けられないのだ。


 信じられないが本当のようだと考え、ヲンムンは、表情に出した。


(アメルーミラは嘘を言ってない。)


 そうなると結論は、ジューネスティーン達は、ど素人を1日で一人前にしてしまうのかと頭をよぎるのだった。


「まさかな。 そんな事があるわけ無い。」


 そう呟くと、ヲンムンは、本題に入っていく。


「それより、あいつらのフルメタルアーマーについての情報は無いか? 」


 それを聞くと、アメルーミラは首を横に振って答える。


「何もありまあせん。」


「他には何か無いか? あいつらの話の中で変わったことはなかったか?」


 そう言われて、風呂に入っていた時の事を思い出す。


「そう言えば、収納魔法なのですが、テントを張ったまま出し入れができるみたいです。 そのテントの大きさまでは聞きませんでしたけど。」


 張ったテントを、そのまま出し入れする。


 一般的なテントの大きさを考えても、張ったテントなら2m程度は有る。


 そのテントを収納魔法に、そのまま入れられるのなら、ジューネスティーン達のフルメタルアーマーも収納魔法の中に収納している可能性が高い事になる。


 一般的な収納魔法より、かなり大きな容積を持っている事になる。


(そうなると、部屋の中でフルメタルアーマーをアメルーミラが確認できる可能性は低いのか。)


 ヲンムンは、判断する。


 現状は、彼らに張り付いていても、帝都周辺の魔物と対峙する時は、フルメタルアーマーを使う事は無い。


 アメルーミラが、潜入している間に、フルメタルアーマーを使わせる状況を作る必要がある。


「なる程、状況は理解した。 引き続き調べてくれ。 それと、呼び出しは、夜だけにする。 昼間は、誰に見られるか分からない。 昼間、俺とは絶対に目を合わせないようにしろ。 いいな。」


 アメルーミラは、うなづくが、また、返事をしてないと怒られると思ったようだ。


「はい、言われた通りにします。 明るい時は、ヲンムン様に近寄らないし、目も合わせないようにします。」


 アメルーミラが答えると、ヲンムンは、戻るようにと顎で合図をすると、アメルーミラは、金糸雀亭の玄関に戻っていく。


 ヲンムンは、今日も昨日とは違うワンピースを着ていると思いつつ、アメルーミラの後ろを目で追いかける。


 ヲンムンは、今日の報告書の中に、フルメタルアーマーは収納魔法の中に収納されている可能性がある事と、フルメタルアーマーを使わせる状況を作る必要がると報告しておく事にする。


 自分の仕事は、監視なので、そういった状況を作るのは、自分の仕事ではない。


 あの嫌な上司のヲルンジョンが、どう考えるのか、丸投げする事にするのだ。




 このような状況になった場合、できる担当者や、部下が上司を信頼している場合は、報告だけでは終わらない。


 ジューネスティーン達にパワードスーツを使わざるを得ない方法を、2つ以上提案して選ばせる。


 ここまででも、提案方法としては良い。


 ただ、その提案の際に自分自身で内容を吟味し、最良の策はどれなのかを上司に伝えておく。


 一つ先の仕事を行うのは、出世の為には必要なスキルなのだ。




 企画を作成中には、メリット・デメリットについて吟味しつつ立案する。


 その時に組織に対して一番のメリットの出るものは何なのかは立案者の方がよく分かる。


 また、最低でも2案を提示するのは、1案だけだとその案を客観的に見れない事があり、その内容についてのめり込んでしまって、デメリットが見えなくなってしまう事も有る。


 2案以上作るのは、それぞれの案をシュミレーションして対案から見てもう一方の案がどうなのかが読み取れる。


 立案の際に抜けてしまった問題点をしっかり把握するためにも企画する際は複数の案を作成する。


 良いと思っていた案も別の視点から見たら欠陥があったりするので、複数の案を持つことは成功するためには不可欠である。




 だが、ヲルンジョンに、それだけの価値を見出せないヲンムンは、そこまで行ったとしても、成功の際は自分の手柄、失敗の際には、責任を押し付ける事になると思えば、転属するまで、言われた事だけを、行う事にしようと考えるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ