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アメルーミラの狩

 

 ジューネスティーン達がそんな話をしていると、向こうのほうでシャドウをしているアメルーミラもそれなりに動きが良くなってきた。


 レィオーンパードは、それだけの動きができれば、1匹との対峙なら戦えると考え、ジューネスティーンに実戦の許可をもらおうと声をかけてきた。


「そろそろ、実戦に入ってみる。」


 そう言って、手を振る。


 それに、右手を上げて答えるジューネスティーンは答えてくれた。




 レィオーンパードは、アメルーミラに指示を出す。


「じゃあ、実戦を始める。 僕が見つけるから、その魔物に石を撃って、当たらなかったら、今の様な感じで剣で仕止める。 それでいいかな? 」


 少し緊張気味のアメルーミラが肯くと、その緊張感が適度に有ると感じた。


「いい緊張感だね。 リラックスし過ぎず、緊張し過ぎず、それが一番いい仕事をするんだ。」


 キョトンとするアメルーミラ、意外な事を言うと思ったのだろう、少し驚いて、レィオーンパードの顔を見る。


 レィオーンパードは、アメルーミラに見つめられるように見られたので、恥ずかしくなったのか、顔が少し赤くなった。


 レィオーンパードは、照れ隠しをしたいと思ったのだろう、その照れ隠しのために話を続ける。


「あっ、これ兄貴の受け売り、緊張し過ぎると体が硬くなるし、リラックスし過ぎると力が入らないって、最初の頃はよく言われてたんだ。 良い緊張を覚える事が良い仕事をする。 今の緊張感を忘れないようにしてね。」


 そう言われて、アメルーミラは、改めて真剣に試験に向き合う。


 その様子を見て、周りを警戒するように周囲を、レィオーンパードが見渡す。


「見つけた。」


 そう言って見つけた魔物の方向を指差す。


 先ほどの3匹より、少し東側の方に、頭を上げて周囲を見渡している魔物を見つける。


 魔物は先ほどと同じ犬型の魔物だが、少し小さめである。


「それ、私にも分かりました。 あんな風に首を上げてたら私にも見つけられます。」


 そう言われて、レィオーンパードは、顔を赤くするが、すぐに、次の指示を出す。


「そうだね。 じゃあ、スリングショットで。」


 そう言っている間に、アメルーミラは、スリングショットを構えて狙いをつけてた。


(何だか、俺、探すこと無かったかも。)


 レィオーンパードは、そう思いつつ、アメルーミラを見る。




 アメルーミラは、狙いをつけて、右手を離すと、一直線に小石が、魔物に向かって飛んでいく。


 当たると思った瞬間、魔物が頭を下げてしまい、頭の上を小石が通過し、魔物の向こう側で地面に小石が着弾すると同時に、魔物がアメルーミラに向かって突進して来る。


 アメルーミラは、スリングショットを地面に置き、腰の剣に手を掛けて鞘から引き抜く。


 教えられた様に身体を低く構えて向かって来る魔物に対峙する。


 レィオーンパードもアメルーミラのフォローを直ぐに出来る様に、直ぐ後ろで片手で剣の柄を逆手に握って、いつでも抜ける様にする。


 アメルーミラが魔物に剣を入れられなかった場合、その僅かな瞬間で魔物を倒さなければならないので、順手で持って引き抜くより、逆手で持った手でそのまま前に出すのだ。


 もう一方の腕は、アメルーミラを横に飛ばすなり、致命傷になる様な場所に牙や爪が入らない様に動かすため、いつでもアメルーミラに手を掛けられるようにしている。




 向かって来る魔物は、2m程手前まで来ると飛び上がって、アメルーミラの首筋を狙って牙を剥いて爪を出している。


 アメルーミラは、そのタイミングに合わせて、一旦屈み込むと伸び上がる様にして、魔物の攻撃が、自分の首筋へ当たらない様に動きながら、剣を下から上に振り上げると、魔物の首筋に剣が入る。


 その勢いそのまま剣を振り上げた。


 魔物の首が飛び体と頭が、アメルーミラの横を通り抜けて後ろに転がっていく。




 レィオーンパードは、その一連の動きを見ながら、自分の仕事は必要無かったと思ったのだろう、そのまま、魔物の胴体と頭が方物線を描いて地面に落ちるのを、避けながら見る。


 地面に落ちた魔物は、そのまま、黒い炎の様なモヤを出しながら、体が消えていく。


 その魔物を見て、レィオーンパードは、始めて使う剣で、ちゃんとタイミング良く魔物を倒せた事に、少し驚きつつ、アメルーミラに声をかける。


「おっ、お見事。」


 レィオーンパードは、一瞬、呆けてしまったが、慌ててジューネスティーン達の方を見ると、ジューネスティーンは軽く拍手していた。


 レィオーンパードは、良い印象を与えられたと思ったのだろう、少し笑顔になった。


 アメルーミラは、昨日、スリングショットだけで6匹の魔物を倒している。


 その時は、スリングショットを棍棒の代わりに使って倒したのだから、それを棍棒から剣に変わっただけなので、タイミングの取り方を棍棒から剣に変えるだけなので、それ程難しい事ではないのかもしれない。




 アメルーミラは、倒した魔物のコアを拾っている。


 レィオーンパードの所に、戻ってくると笑顔を向けると話だす。


「ありがとう。 教えてくれる人が優秀だと、直ぐに身に着くみたいですね。」


 それを聞いて、レィオーンパードの顔が赤くなりながら答える。


「そっ、それは、君の実力だよ。 どんなに教えても、ダメな人はダメだ。」


 アメルーミラは、一瞬、考えるような表情をする。


「はい。」


 ダメな人はダメだと言った、レィオーンパードの言葉を気になったようだが、直ぐに、気を取り直して答えた。




 レィオーンパードは、素直に喜んでくれたアメルーミラの言葉が嬉しくて、恥ずかしくなってしまったので、正論を言って、自分の気持ちを顔にでない様にしていたのだった。


 それでも、アメルーミラの笑顔が眩しく思うので更に正論を言って誤魔化そうとする。


「でも、今、上手く倒せたからって、次は上手くいくとは限らないからな。 慣れてくると行動が雑になる。 運が良ければ、冷や汗で済むが、下手をすると命を落とす。 今の感覚を良く覚えて無意識で身体が動く位にしなければ、この周り以外の魔物には対峙出来ない。 それと、最初の一撃で倒せるとは限らないから、必ず次の一手も直ぐに出せる様に考えておく事。」


 赤くなった顔を誤魔化す様に、ダメ出しをするレィオーンパードだが、自分を思って言ってくれていると思うとアメルーミラは嬉しくなる。


「はい。 肝に銘じておきます。」


 そんな、素直なアメルーミラの反応に、レィオーンパードは、ハッとなった表情をした。


 笑顔で答えるアメルーミラの顔を見て、頬を赤くしていた。


「じっ、じゃあ、次だ。 今度は、自分で探してみる、よっ、様に。」


「はい、先生。」


 そう言って、クスクスと笑うアメルーミラに、ダメ出しをいう。


「ここは、狩場なんだ、いつ自分が狩られる側に回るか分からないからな。 ちゃんと緊張感をもって対処する様に。」


「そうでしたね。 失礼しました。」


 そう言うと、アメルーミラの雰囲気が、笑顔から、真剣な表情に変わる。


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