アメルーミラを見るジューネスティーン
アンジュリーンが指摘した、シュレイノリアの件については、2人は、1日違いで転移してきた事もあり、昔から一緒に過ごしてきたので、お互いをよく理解していたこともあった。
ジューネスティーンは、長年、シュレイノリアと付き合っていた事もあり、シュレイノリアの考え方、喋り方にも精通していたことが、功を奏したといえる。
そんなアンジュリーンの指摘を聞いて、ジューネスティーンは答える。
「それは、人の良し悪しを、見つけ易い悪い部分しか、見れてなかった教授達だろ。 ああいった人は、自分のところに居ても目が出ない生徒だと思うだけで終わる。 でも、良いところを見つける事ができる人に付くと伸びるんだ。 そういった人たちには理解できないんだろうな。」
ジューネスティーンの、そういった人達とは、高等学校の教授陣のことを、言ったのだろうと、アンジュリーンには分かったようだ。
「そういえば、授業が終わると、今の教授の授業について、あんたに聞きにくる生徒が多かったわね。 教授に聞きに行けば良いのに。」
「ああ、そんな事もあったな。 聞きに来る人に聞いたら、あの教授、何を言っているのか分からないから聞きにくるって言ってた。 それで、授業の内容を解説したんだ。 俺の教授受けが悪かったのって、そういう人達がいたからだろ。 教授達にしてみれば、俺は目の上のタンコブみたいだったんだろうね。 教授の教え方が悪いと言っているのと同じだからね。」
「そこまで分かっていて、何もしなかったのね。」
それが分かっているなら、何で対策してこなかったのかと、アンジュリーンは思うのだ。
「どうする事もできないだろう。 俺が教授に、こういう風に教えるんだって教えるのか。」
アンジュリーンも、それを聞いて、納得した様子を表情に出した。
「でも、テストの平均点は、その年だけは上がっているはずだから、その教授陣にも貢献できたと思うよ。」
「まあ、その教授もシュレイノリアみたいなものだったわね。 それより、あの娘の良い所はどこなの。」
昔話は、もう良いかと思ったアンジュリーンは、アメルーミラの話に戻した。
「さっき、レィオーンパードの動きについて簡単に説明をしたら、その内容とレィオーンパードの動きのポイントを理解できた。 一般的な初心者なら、聞くだけで終わるが、自分なりに理解した事を、彼女は、話してきた。」
アンジュリーンは、さっきまでのジューネスティーンとアメルーミラのやりとりを、遠巻きに見ていた時のことを思い出していたのだろう、それが表情に出ていた。
「これは、頭の中で、どういった動きをすれば、あの動きが成立するか理解できている証拠になる。 それに、直ぐ、魔物に向かうのではなく、ああやって何も無いところで動きの練習をしているだろ。 あれはレィオーンパードの動きを真似ているのだろうし、同じ動きができるようにと思ってやっているのだろう。 それと、時々、何か話しているのは、イメージ通りに動けてないから質問している。 レィオーンパードが、体を使って説明しているのだから、自分に足りないものを確認しながら、剣の使い方を、自分なりに考えながら自分のものにしているんだろう。」
離れていても、その動作でどんな事をしているのかを、ジューネスティーンは自分で考えている。
人の動作には、必ずその人の意思が伝わってくる。
すぐ側で話を聞いてなくても、前後の動作で何を話していたのかは、予測が可能になる。
遠くで見ていても何をしているのかは理解可能なのだ。
レィオーンパードの動作を真似ているアメルーミラの動作は、イメージトレーニングとなる。
失敗が許されない本番に合わせて、リハーサルをする。
だが、その場所を簡単に借りれない場所ならどうなるか。
そう考えるとイメージトレーニングは重要なファクターである。
例えば、毎回違うサーキットを走るレーサーの事を考えると、速い人は、どのサーキットでも早く走れる。
早く走るには、そのサーキットを何度も走って練習すれば良いだろうが、毎日納得が行くまで練習走行ができるわけでは無い。
それを可能にするのは、コースを走るイメージトレーニングを、何もない所で脳内だけで行う。
それをレース直前の練習走行でイメージと実際に走った時の感覚の調整を行う。
トップを行くのは、そういった事を何度も繰り返し行う事で、イメージを膨らますことで、実際に走行した時と同じようなるのだ。
アメルーミラの動きを見ると、先程のレィオーンパードの動きをイメージして、その時の動きを再現しようとしている。
「へー、あんたそんなところを見てるのね。」
「それと、人の成長っていうのは、坂道を登るんじゃないんだ。 階段のように成長していくんだよ。 さっき自分と話して居た時、分からなかった事が説明を受けて理解が進む。 その時に付随した内容も理解できてくるんだ。 だから、人が何か一つを理解すると、それに付随している内容の、2・3個が追加で覚えられる。 それを覚えると、今度は、停滞が始まる。 その停滞期は、何をやっても理解できなかったりするので、そこで諦めてしまう事も有るんだ。 今の練習がその時になると思う。 足りてないものが何なのかが分からずなのか、不足している何かを補う事ができないので、それを探している状態だから、成長はほとんど無い。 それが続けば、何かのきっかけで、また覚えるんだよ。」
「つまり、一つ理解が進むと、その時にそれ以外の事も理解できてしまうから一気に伸びるけど、それが終わると、新たな疑問や問題が出てくるので成長は止まる。 だから階段のように成長するって事なのね。」
「そういう事だ。 だから指導する側は、その停滞期をいかに短くする事ができるかで良し悪しが出る。 上手い人なら短期間で次の成長を促す事ができるが、下手な教え方だと一向に成長が来ない事になる。 まあ、教える側も、内容を事細かく理解できているかだがな。」
「へー、その教える側の理解が出来ているかって、どうすればわかるの? 自分が教示してもらうなら、早い方が有難いから、見分け方が有るなら教えてくれない。」
アンジュリーンは、ジューネスティーンの人の見分け方について、気になったようだ。




