ライフリングとジャイロ回転
アメルーミラをレィオーンパードに任せると、ジューネスティーンは、さっき閃いたアイデアを考察を始める。
弾丸の重心が中央に無ければその方向に曲がるし、表面の滑らかさが違っても、銃弾の飛ぶ時の空気抵抗の影響で曲がると話した事で、銃の弾丸について閃いたのだ。
ニードルガンを作ったのは、口径と同じ弾丸を撃ち出した時、上下左右に曲がってしまい、的に当てることができなかったからだ。
ジェスティエンの銃は、そんなことは無かったのだが、自分が自作した銃では、全く、的に当たる気がしなかったのだ。
その、的に当たらないことを対応するため、数多くの針を束ねた弾丸を用意して撃ち出すことにしたのだ。
一つの弾丸ではなく、複数の弾丸であれば、弾丸の当たる部分は、面となり広範囲に針が刺さる。
近距離であれば、威力は高いが、遠距離は針が広がりすぎてしまい、思った様な効果は無かったのだ。
アメルーミラのスリングショットの石の話をした事で、ジューネスティーンには、アイデアが閃いたのだ。
(銃弾の様な物を、完全な精度で作るなら命中精度は上がるかもしれない。 でも、どの位の精度が必要になるのか。 それに銃口内で擦れた部分によっては、どっちに曲がるか判らない。)
重心の精度、表面の精度と考えていくと、銃弾に使う素材を型で作ったとしても削り出しで作っても素材によっては、不純物の混合度合いが完全に均等とは限らないし、表面の滑らかさなんて目で見ただけでは分からない。
銃弾の飛ぶスピードを考えれば、かなり高い精度が要求される。
重心の位置が弾丸の中心からズレるのは、量産したとしても弾丸の重心は、一つ一つ微妙に違ってくる。
表面の滑らかさなんてどの程度の精度が要求されるか。
使い捨てになる様な弾丸にそんな制度を要求したら、一発の弾丸にどれだけの費用が掛かるか知れたものではないのだ。
射程距離が長ければ長い程、重心のズレや表面の精度の影響が出る。
それも弾の一発ごとに変わってくると言う事になる訳だから、次に撃つ時、前回の着弾地点よりズラしたとしても、次の銃弾が前回の弾と同じ重心のズレや表面の精度になる事は、確率的に限りなくゼロに近い事になる。
弾丸を量産したとしても、完全に弾のセンターに同じ精度で作る事はできないし、同じ表面になる事はあり得ない、仮にそれが出来たとしてもセンターからずれた弾になていたら銃に弾を込める時に弾の角度の調整を行ってから弾を込める必要が出てくるので、そんな事は不可能だという事で、打ち出す数を増やす為に細い針を束ねて弾丸の代わりにしたのだ。
それでニードルガンを作ったのだが、命中精度がいつも同じにする事が出来るなら、撃ち出す弾丸は一つでも問題無いことになるのだ。
弾の重心が、どの弾でもいつも同じになる事が出来れば、弾の重心の精度を追求する必要はなくなる。
先程の、スリングショットの小石がブレる時の話をしている時に、弾が進行方向に向かって90°の方向に向かって回転していたら、その回転が、180°になった時に弾の重心は撃ち出した時とは反対方向に向かうことになるので相殺される。
(そうだ。 ジャイロ回転させるのか。)
弾丸は、弾の重心の方向に向かうだろうし、表面の空気摩擦によっても弾道に変化が起こる。
それが、回転していたら、弾は螺旋を描くかもしれないが進行方向が大きく変わることは無くなることになるのだ。
弾が撃ち出した時に回転していたら、多少はブレるが回転している事で命中精度は高くなる。
回転してない弾なら同じ方向に流れていくが、弾の進行方向に対して左右どちらの方向でも、進行方向に90°の角度で、回転が加われば重心のズレによる弾の曲がりは、180°回転した時に相殺されるので、ズレは解消され、真っ直ぐに飛ぶので命中精度は高くなる。
弾は回転しているので重心や表面の影響で、厳密には僅かに螺旋を描いて進む事になる。
そうなると、弾の影響は重力による落下と、空気抵抗による減速のみになる。
重力により地面に引っ張られる事だけなら、弾の速度から着弾までの時間による影響だけを考える事になる。
重力加速度が9.8m/秒/秒と考え、銃弾の速度を300m/秒と考えると、30m先の距離に居る標的に当てるには、0.1秒掛かる。
そうなると、弾の落下は、(1/2)×9.8×0.1×0.1となるから、4.9cm落下する事になる。
標的は魔物となるので、人サイズの魔物なら調整は可能になる。
(それ以外にも空気抵抗とか影響するものはあるが、この程度の距離を対象にするなら無視しても良いだろう。)
ジューネスティーンは、弾丸のジャイロ回転をさせた事による、直進性について可能性があると考えていた。




