剣の使い方
ジューネスティーンは、アメルーミラに剣を使わせてみたらどうなるのか気になったのだ。
アメルーミラに、剣を使うように伝えると、レィオーンパードに指示を出す。
「じゃあ、剣の扱い方を見せてあげて。」
そういうと、シュレイノリアに、先程のアトラクトを使ってもらう事にする。
「魔物を呼び寄せてもらえるかな。」
「分かった。」
「レィオーンパードは、手本を見せてあげて。」
そういうと、シュレイノリアが、無詠唱でも良かったのだが、レィオーンパードにタイミングを教えるために声に出す事にする。
「アトラクト。」
そういうと、南の方から、3匹の魔物が向かってくる。
(あれが、魔物を誘き寄せる魔法なのね。 アトラクトと、言うのか。)
アメルーミラは、シュレイノリアの魔法詠唱をきいて、魔物が向かってくるのを見たことで、魔物を誘き寄せる魔法なのだと理解したようだ。
レィオーンパードは、横に居るアメルーミラと離れる為に10歩程前に出る。
魔物とシュレイノリアの直線上に立って、向かってくる魔物に対峙する。
右手に順手で持った短剣を水平にして前にかざす。
3匹の動きをよく見ながら動きを予測するのだ。
今回は、アトラクトで向かってくるのだから、魔物の目標はシュレイノリアになる。
その動きを予測して、レィオーンパードは、自分を通過する際に刃を入れれば良い。
その際に、魔物の不意な動きに注意する。
レィオーンパードは、攻撃に入る前に一通りの攻撃に関するシュミレーションを、頭の中で行っていた。
今回の魔物はシュレイノリアに向かって来るので、最初に走って来る魔物のラインより少し右に位置を取って、体を低くする。
最初の魔物と、すれ違う寸前に、短剣の切先を地面スレスレに持っていて、上に斬り上げると、魔物の首に刃が入る。
魔物の首が飛んで、体はつんのめるようにして、レィオーンパードの後ろを転がっていくが、手応えで首が飛んだと判断したレィオーンパードは、次の魔物に対峙する。
完全にシュレイノリアとのライン上に居るので左足を横にずらして、右足を後ろに引くと右手を下げてそのまま腰を低くして、2匹目のすれ違いざまに短剣を振り上げると、2匹目の魔物の首が飛んでいく。
3匹目は1匹目よりやや左側を走って来るので、今度は、右足を一歩左に出すと同時に体を沈み込ませて、右腕を左腰の辺りに持っていき、そこから右腕を振り上げると、3匹目の首筋に刃が入り、魔物の首を飛ばす。
1秒程の間に、レィオーンパードは、3匹の魔物の首を落とした。
レィオーンパードは、心の中で、決まったと思い、後ろを振り返る。
決まったと思っていたのだが、後ろを見ると、すぐに気持ちが落ち込んだのだ。
それは、シュレイノリアの前にジューネスティーンが剣を構えて、アリアリーシャが、アメルーミラを守るように前に出て短剣を構えていた。
それ以外にも、アンジュリーンとカミュルイアンが、弓を地面に置いて、腰にある剣に手を掛けて、腰を低くして、直ぐに飛び出せるようにしていた。
3匹の魔物をレィオーンパードが倒したのを見ると、全員がため息をついている。
それを見たレィオーンパードが、少しショックを受ける。
「あれ、俺の事、信用してなかったの? 」
レィオーンパードのガッカリした言葉を聞いて、カミュルイアンが、ため息を吐きながら答える。
「なに、当たり前のこと聞いているんだ。」
当然の事を、何で聞くのか判らないという顔をして答える。
「俺の腕って、そんなに下手なのかなぁ。 この程度の魔物を仕留められないわけないだろう。」
そう言うと、横からアンジュリーンが、全くこのアホは何考えているんだと、顔に出しながら言う。
「だって、あんた、カッコいいところ見せようと思ってたでしょ。 動きに無駄なところがあったわよ。 あんなに剣を上に上げてたら、最後の1匹を仕留められないと思ったわ。」
レィオーンパードは、顔を赤くする。
アメルーミラに、カッコいいところを見せようとしたのが、メンバーにバレバレだったと思うと、恥ずかしくなった。
「ばっ、ばかを言わないで欲しい、力が入りすぎただけだろ。 勢い余って腕が伸びただけだ。」
それを聞いて、アンジュリーンが目を細める。
「ふーん。」
(どうせ、あの娘にいいところでもみせようとしたんでしょうに。)
このままだと、全員からアメルーミラにいい所を見せようとした事を茶化されるだろうと思う。
あまり、長くなって、レィオーンパードが、いじけてしまうのも困るので、ジューネスティーンは、話を止める事にする。
「まあ、少し無駄な動きがあったのも事実だけど、今までの魔物に比べたら、大きさも小さかったから、勢いが余ったんだろうね。」
ジューネスティーンが、なんとか着地点を提示するのだが、レィオーンパードは、納得してない様子だった。
「にいちゃん。 なんで、剣抜いているんだ。」
ジト目で、ジューネスティーンを見るレィオーンパードが、ジューネスティーンに聞いてきたのだ。
ジューネスティーン自身も、レィオーンパードが失敗して、取り逃す可能性を感じていたのだ。
「これは、いつも最悪の状況を考えているからな。 全ての攻撃が100%決まるとは限らない。 0.001%以下の可能性で、抜かれてしまってもいけないと思ったから、ガードに入ったんだけど。」
「・・・。 そういう事にしておく。」
(うー、絶対に抜かれると思われたんだ。 じゃなきゃ、にいちゃんが剣を抜いてないだろう。)
そう思うのだが、口に出すのを止めるレィオーンパードだった。




