寝起きのメンバー達
翌日の朝、アメルーミラは、胸の痛みとともに、目が覚める。
起きると、自分の着替えが、アンジュリーン達の部屋にある事に気がつく。
(今日は、この服を着ているわけにもいかないわね。)
アンジュリーンの服を見ると、その服は、明らかに、街歩きに使うような服だったので、銭湯に使えるとは思わなかった。
起き上がると、アンジュリーンに借りた服を着ると、上の階のジューネスティーン達の部屋に上がる。
少し早いかと思ったのだが、ノックをすると、直ぐにアリアリーシャがドアを開けてくれた。
「おはよう。 早いわね。」
「おはようございます。」
オドオドしたアメルーミラの態度を見て、アリアリーシャは、にこりと笑う。
「ここじゃ、何だから、入って。」
「お邪魔します。」
アメルーミラは、恐る恐る、部屋に入っていく。
リビングには、ジューネスティーンと、アンジュリーンが、起きてお茶を飲んでいた。
「おはよう。」
直ぐに、アンジュリーンが、挨拶してくれた。
「おはよう。 昨夜はよく眠れた? 」
ジューネスティーンは、お茶を含んでいたところだったので、アンジュリーンより遅れて挨拶してきた。
「おはようございます。 とてもよく眠れました。」
すると、アリアリーシャが、アメルーミラの手を引いて、リビングのテーブルに連れていくと、アンジュリーンの横に座らせる。
「ちょっと、待ってください。 まだ、3人、起きてこないから、お茶でも飲んで待っててください。」
アリアリーシャは、直ぐにアメルーミラの前に、お茶を用意してくれた。
「ありがとうございます。」
アメルーミラは、恐縮した様子でお礼を言う。
アリアリーシャは、笑顔をアメルーミラに向けると、隣に座って、自分のお茶を飲み始める。
アメルーミラも起きてきたので、残り3人をどうしようかと、起きている3人は思ったようだ。
「ねえ、ジュネス。 ジュネスが起きてきたのなら、シュレも直ぐに起きてきてもいいんじゃないの? 」
「ああ、今日は、珍しく、俺が動いても動かなかった。」
「へーっ、そうなの。」
アンジュリーンは、シュレイノリアが、1人で寝ているなんて、珍しいこともあると思ったようだ。
「目覚めた瞬間に、ジュネスが居ないと言って、魔法を放たなければいいけど。」
アンジュリーンが冗談を言う。
「誰が、寝起きで魔法を放つんだ? 」
寝巻きのまま、シュレイノリアが、ドアを開けて寝室から出てきた。
ちょうど、その時にアンジュリーンの冗談が聞こえたようだ。
「あら、シュレ。 起きたのね。」
「ああ、目が覚めたら、1人だった。」
そう言って、ジューネスティーンの横にいって座ると、体をジューネスティーンに預ける。
アリアリーシャが、シュレイノリアにお茶の入ったカップを渡す。
「シュレ、これでも飲んで、目を覚まして。」
そう言われると、シュレイノリアは、素直にアリアリーシャのお茶を受け取って飲み始めた。
「シュレが、起きてきましたけど、残りの2人は、どうしましょう。」
アリアリーシャが、ジューネスティーンのカップに、お茶を注ぎつつ聞いてきた。
「ああ、そろそろ、起こさないとな。」
「それなら、私に任せるといい。」
お茶を啜りながら、シュレイノリアが答えるが、何をするわけではなく、ただ、お茶を啜っている。
すると、数秒もすると、レィオーンパード達の寝室のドアが開いて、2人が出てくるのだが、2人とも凍えた様子で体を震わせて出てきた。
「ねえ、寝てたら、寒くて、目が覚めた。」
レィオーンパードが、両方を抱くようにして、寝巻きのまま言う。
「何だか、寝てられなかった。」
アンジュリーンとアリアリーシャは、シュレイノリアが、魔法を使って、2人の寝室を寒くさせて、目覚めさせたのだろうと、気が付いたのだろう、シュレイノリアの顔をチラリと見た。
アリアリーシャは、直ぐに立ち上がる。
「2人とも、お茶が用意できているから、それを飲んで少し暖まりましょう。」
そう言って、2人のためのカップを用意する。
「じゃあ、着替えてくる。」
お茶を飲み終わったシュレイノリアは、そう言うと、自分の寝室に消えていく。
レィオーンパードとカミュルイアンは、シュレイノリアの座っていたジューネスティーンの横に2人で座ると、アリアリーシャの淹れてくれたお茶を、抱えるように持って飲み出した。
2人は、お茶を飲んで暖まると、シュレイノリアは、着替えて寝室から出てきた。
レィオーンパードとカミュルイアンが、さっき、自分が座っていた、ジューネスティーンの横を占領しているので、ムッとした様な表情をすると、1人がけの椅子に座る。
ムッとしたまま、シュレイノリアが、1人がけの椅子でお茶を飲み始めた。
アンジュリーンが、そのシュレイノリアの様子が、気になるらしく、横目でチラチラ、シュレイノリアの様子を見ている。
アンジュリーンは、シュレイノリアが、何も言わずにいるので、仕方なさそうな顔をする。
「レオン、カミュー。 もう、体も暖まったでしょ。 着替えてきなさい。」
アンジュリーンが、ボソリと2人に言う。
「うん、じゃあ、もう一杯だけもらったら、着替えてくる。」
「オイラも、これを飲んだら、着替えてくるよ。」
レィオーンパードと、カミュルイアンは、体も、だいぶ暖まってきた様だが、もう少し、暖まりたいようだった。
レィオーンパードは、アリアリーシャが、淹れてくれたお茶を飲み始める。
それを見たアンジュリーンは、チラリとシュレイノリアを見る。
シュレイノリアは、自分の場所を、男子2人に取られた事で、イライラが、徐々に上がっているようだった。
「ねえ、カミューも、レオンも、早くしてね。」
「「うん。」」
2人は、アンジュリーンが、急がせるので、アンジュリーンの様子を見て、納得したようだ。
そのアンジュリーンの視線の先に、シュレイノリアがいて、そのシュレイノリアが、不機嫌そうにしているのを確認した。
レィオーンパードとカミュルイアンは、お互いに顔を見合わせると、今、飲んでいたお茶を、慌てて飲み干す。
「「ご馳走様。」」
2人は、慌てて、席を立って、自分達の寝室へ消えていく。
その2人が寝室に消えると、シュレイノリアは、ジューネスティーンの前を通って、ジューネスティーンの横に行こうと立ち上がる。
ただ、途中で、ジューネスティーンのつま先に引っかかって、ジューネスティーンの膝の上に座るように倒れ込んだ。
「おおーっ! 」
ジューネスティーンは、少し驚いたように声に出す。
ジューネスティーンの正面にいたアンジュリーンは、シュレイノリアが、ジューネスティーンの膝の上に座る姿の一部始終を見ていた。
そのシュレイノリアの姿は、お父さんの膝に小さな子供が座るように、シュレイノリアが座っているのだが、小さな子供というわけではないので、ジューネスティーンの顔が完全に隠れてしまっている。
シュレイノリアは、ジューネスティーンの膝の上に、チョコンと座って、目の前のアンジュリーンを見ていた。
視線に気が付いて、アンジュリーンもシュレイノリアに視線を向ける。
「アンジュ、ありがとう。」
シュレイノリアは、そう言うと、ジューネスティーンの膝の上から、滑るように横に降りて、ジューネスティーンの隣に座る。
ただ、さっきとは違い、ジューネスティーンの横にベッタリと寄り添うように座り、自分のカップを手元に引っ張って持ってくると、何食わぬ顔でお茶を飲み始めた。
その様子を黙って、見ていたアメルーミラは、何だか不思議なものを見たような表情をしていた。




