表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1093/1356

ヲンムンからの呼び出し

 

 アメルーミラは、ジューネスティーンに取ってもらった部屋に入る。


 部屋は、シングルルームで、ベットと机が有るだけの物だった。


 トイレは付いているが、ジューネスティーン達の部屋の様にバスルームは付いてない。


 それでも、ベットはフカフカで座り心地も良く、久しぶりに柔らかいベットで眠る事ができることに満足している。




 すると、胸に急に痛みが走る。


 頭の奥でヲンムンが呼んでいる声が聞こえた様な気がしたのだ。


 アメルーミラは、慌ててドアを開けて一階に向かうと、徐徐に胸の痛みも和らいでくる。


 ロビーのカウンターには、ルイセルが座っていたので話しかける。


「少し食べ過ぎたみたいです。 外の風に当たってきます。」


 そう言って、部屋の鍵をカウンターの上に置く。


「かしこまりました。 もう暗いですから、お気を付けください。」


 鍵の偽造を防ぐ為に、外に出る際は必ず渡してもらう様に言われている。




 玄関を出て左右を見渡すと後ろから右腕を掴まれる。


 慌てて右後ろを見るとヲンムンだと確認できた。


 ヲンムンは、アメルーミラが自分の顔を確認するのを見ると、口に人差し指を当てて声を出すなと示す。


 アメルーミラが自分だと確認できたと分かると顎をしゃくり、こっちに来いと示す。


 金糸雀亭の角を曲がった所に行く。


「状況は? 」


「さっき、一緒に食事をしました。」


「それでメンバーに入れたのか? 」


「メンバーにはなれないと、いっ。」


 途中でヲンムンはアメルーミラの襟首を掴む。


「でっ、でも、準メンバーになる為の試験をしてくれるって。」


 ヲンムンは、襟首を持った手を離す。


「言ってました。」


 掴まれた胸元をアメルーミラは抑えている。


「そうか、なら、荷物持でも何でも構わないから、一緒に行動出来る様にしておけ。 お前が自由を得られるかどうかは、お前次第だ。」


 まだ、痛いのかアメルーミラは首の辺りを両手で押さえている。


「それと、奴等の持っている物を調べるんだ。 部屋の中に色々と置いてあるはずだから、置いてある物について調べるんだ。」


 そう言われて、最初に入った部屋の事を思い出して、部屋には特に何も無かった事を思い出す。


 なのにヲンムンは荷物を調べろと言う。


 何も無い荷物をどうやって調べれば良いのかと考えていると、それを見たヲンムンが、不思議そうに聞く。


「どうした。 何かあったか? 」


「い、いえ、彼らの部屋の中には、武器とか防具とかは何も置いてなかったんです。」


 それを聞いてヲンムンは、何でそんな事になるのだと思う。


「それは本当か? 」


 ヲンムンはアメルーミラに迫って来る。


 アメルーミラは先程の様に襟首を掴まれない様に両手で襟元を隠しながら、顔はヲンムンを見ながら、体だけを横を向かせる。


「最初に接触した時に、彼らの部屋に入れたんです。 奥の部屋の全部には入れませんでしたが、リビングの様な所には何も有りませんでしたし、女子が使っているだろう部屋にも何も武器や防具の様な物は置いてありませんでした。」


 奴隷契約をしているので、ヲンムンの前で、アメルーミラは嘘は言えない。


 もし、嘘を答えると奴隷紋の契約によってアメルーミラに痛みが走るはずなのだが、それが無いと言う事は事実を言っている事になるのだ。


「どう言う事だ、かなり大掛かりなフルプレートアーマーを装備していると言ってたのだが、どうなっている。 あの部屋の間取りは手に入れてある。 リビングと3部屋のはずで、収納もそれ程大きな物は無かったはずだ。 奥の部屋も備え付けのベットが有るから、それ程大きな物を入れられないはず。」


 ヲンムンは呟く様に言うので、アメルーミラには良く聞き取れない。


「奴等の馬車の中にもそれらしい物は無かった。 部屋のリビングに置くだろうと思っていたのだが、・・・。」


 考え込むヲンムン、それを覗き込む様に見るアメルーミラ。


 すると、ヲンムンは確認する様に聞く。


「部屋には、フルプレートアーマーの様な物は置いてなかったんだな。」


 アメルーミラは怯えながら答える。


「はっ、はい、そういった物も大きな荷物も有りませんでした。」


「・・・。」


 東の森の魔物を倒したのは、軍の本部から聞いているので、その情報に間違いは無いはずだが、アメルーミラは見てないと言うので、ヲンムンは疑問そうな表情を隠す事ができないでいる。


(そうなると帝国の何処かに隠せる施設を有している可能性があるのか。 こちらの監視の目を掻い潜って何処かに行っているのか。 だが、もし、帝国にそういった施設を持っているなら、何らかの形で引っ掛かってもおかしくは無い。)


 ヲンムンは考えながらアメルーミラを見ると、今日、古着屋で購入した服と異なっている事に気付く。


「そういえば、今日、俺が買った服と違うものを着ているが、それはどうしたんだ。」


 アメルーミラは、どう答えれば良いのかと考えた様だが、正直に応える。


「買っていただいた服が汚れていたので、彼等の部屋でシャワーを浴びた時に、洗われてしまいました。 それで、メンバーの方の物を借りてます。」


 アメルーミラは、ヲンムンの視線が気になり、一歩後ろに下がる。


(まさか、服の中も確認するつもりなの? でも、言われたら、断れないわ。)


 アメルーミラは、全部を確認させられるのかと思い、中に履いているアリアリーシャの下着の事を思い出した。


 しかし、そこまで、ヲンムンは、要求するつもりは無かったようだ。


「そうか。」


 ヲンムンは、アメルーミラの服装を確認するだけで終わらせた。


 アメルーミラは、ホッとしたような表情を、僅かに見せたが、ヲンムンは、それに気が付いてなかった。


(普通の街歩き用の服か。 だが、ちょっと派手そうな色だな。 あの時に買った服なのか。)


 暗い事も有り詳しくは確認できないが、それ程、変わったところは見当たらない。


 アメルーミラの着ている服は、帝国では一般的な衣装で、特に変わったところも無さそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ