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空腹を満たすアメルーミラ


 ジューネスティーン達とアメルーミラの7人は、部屋を出て、1階の食堂に行く。


 食堂に入ると、ミューミラが席に案内してくれた。


「いらっしゃいませ、今日は、1人増えたと聞きましたので、少し広い席をご用意させて頂きました。 ご案内致します。」


 そう言って、ジューネスティーン達を案内してくれた。


 ミューミラは、猫系の亜人でこの店に奴隷として雇われている中で一番年上になる。


 他にもリアミーシャとアズミーシャというどちらもウサギ系の亜人奴隷もここで働いている。


 ただし、奴隷と言っても店の主人達、ルイセル、インセント、アイセルの3人にしてみれば、自分達と同格に扱っている。


 人手の問題を帝国では、亜人奴隷を使う事で賄っているのだが、金糸雀亭の奴隷は奴隷紋を付与されてはいるが、亜人攫いに合わない様に奴隷紋を付与しているので、食事も住む部屋も扱いは普通の人と同じで、話し方も一般の人属の様に接している。


 その事も含めてジュエルイアンとも交流を持つ事になり、新市街の建設の際に、ジュエルイアンの口利きで新市街の一画に宿屋を構える事になった。




 席まで案内してくれると、ジューネスティーンはミューミラに、お礼を言う。


「ありがとう、気を利かせてもらって助かるよ。」


 言葉を掛けながら席に座ると、ミューミラは答えてくれた。


「いえ、こちらこそ、これが私のお仕事ですから。 お食事は直ぐに運んで宜しいですか。」


「ああ、なるべく急ぎで頼む。 腹ペコなんでね。」


 腹ペコなのは、アメルーミラなのだが、ジューネスティーンは、自分が腹ペコの様にミューミラに言った。


 ミューミラもルイセルから聞いているので、追加の1人が、かなりの空腹なのだと聞いているのだが、表情に出さずに、対応する。


「かしこまりました。」


 そういうと、お辞儀をして厨房の方に去っていく。


 ミューミラが去っていくのを眺めながら、アメルーミラに話しかける。


「アメルーミラさん、色々と、聞きたいことが有るけど、まずは、食事を済ませてからにしよう。」


 厨房に戻ったミューミラは、直ぐにワゴンを押して、ジューネスティーン達のテーブルに来て、盛り付けられている、お皿を置こうとすると、アメルーミラのお腹が鳴る。


 アメルーミラのお腹の音が鳴ったのを聞いて、ミューミラが料理のお皿を置く前に、一緒に持ってきたコップをアメルーミラの前に差し出す。


 コップには温めの白湯が入っている。


「お腹空いているんでしょ。 白湯ですので、これを飲んで少しお腹を落ち着かせて下さい。 急に食事をするのではなく、体に食事が入りますよと、サインを出すために少し飲んでおいてください。」


 そう言って、笑顔でコップを差し出す。


 アメルーミラは、ジューネスティーンの方を見る。


「空きっ腹に直接料理を入れるより良いと思うから、先に飲んでおいた方が良いよ。」


 そういうとジューネスティーンも、テーブルに置いてある水差しから、コップに水を注いで飲み始める。


 自分一人だけ、先に口を付けるのに気が引けていたアメルーミラも、ジューネスティーンが、コップに口を付けたことで安心して白湯に口を付ける。


 空腹の胃に染み渡る心地がして、和やかな顔になるアメルーミラを見て、アンジュリーンがぼやく。


「全く、もお、この男は、それをさり気なくやるから。」


 全員に料理が回ったので、ジューネスティーンが声をかける。


「それじゃあ、頂くことにしよう。」


 そう言うとメンバーが料理に手をつける。




 アメルーミラは、直ぐに食べたいのだが、何だか申し訳ないという気持ちと、後で食事代を請求されないかという気持ちがあって、直ぐには料理に手を出せないでいる。


 それを見たジューネスティーンが、アメルーミラを安心させるために声をかける。


「何も心配する事は無い。 もし心配するなら、食べた後に考えよう。 今は、その空腹を押さえてあげた方が良いよ。」


 そう言われて、アメルーミラもスプーンを取ると、出てきた肉と野菜のシチューを食べ始める。


 シチューはよく煮込まれているらしく、中に入っている肉は少しスプーンで突付くと身が崩れてしまうほどであった。


 一口食べて、あまりの美味しさに、スプーンを運ぶ速さが早くなる。


 それを見たアリアリーシャが、アンジュリーンに囁く。


「ここに来るまで、本当に何も食べてなかったみたいですねぇ。」


「きっと、食べたと言っても、大したものは食べられなかったのかもしれないわ。」


 2人は小声で話していたので、周りには、聞こえてなかった。




 アメルーミラの皿は、直ぐに終わってしまったので、ジューネスティーンが、ミューミラを呼ぶとミューミラは、一つのお皿をトレーに持ってきて、アメルーミラの皿と交換する。


 ジューネスティーンは、ミューミラを呼ぶ。


「済まないが、満足するまで食べさせてあげてくれ。 それと、なるべく消化の良さそうなものを中心にして、別の料理も出してくれても構わない。」


 小声で伝えると、ミューミラは、笑顔で答える。


「わかりました。」


 ジューネスティーンに呼応するように、小声で答えると厨房に行く。


 アメルーミラは、空腹を満たすために、唯ひたすらスプーンを動かして料理を胃の中に流し込んでいくので、ジューネスティーンとミューミらの話に気が付いていない。


 一心不乱に食事をしている様である。


 2つ目の皿が終わると、待ち構えていた様にミューミラが次の皿を用意してくれた。


「同じ料理だと味気ないかと思いまして、こちらを用意致しました。」


 そう言って出されたのは、粥だった。


 粥と言っても一緒に野菜や卵、細かくされた肉を混ぜている。


 塩味が程よく効いているのだが、粥を煮る時に、何かの茹で汁を使っているのか、芳醇な味わいを見せている。


 近くに居たアリアリーシャが、匂いを嗅いで何とも言えない顔をしているが、アメルーミラは気付かずに食べている。


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