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アメルーミラの成果

 

 アメルーミラは、ギルドに戻ると、徐々にではあるが、冒険者が増えてきたようだ。


 昼間の様な閑散とした雰囲気は無くなってきていた。


 入り口に入ると、広間に、所狭しと、冒険者が、コアの交換やら、依頼達成の報告をする為に、順番待ちで賑わっていた。


 カウンターにも、冒険者が数名、受付嬢と話をしたり、コアのやり取りを行なっている。


 アメルーミラは、周りの冒険者を避けるように、エルフ耳の、ルイゼリーンのカウンターに行く。


 他の受付嬢のカウンターは、どこも冒険者が居たが、ルイゼリーンのカウンターには誰も居なかった。




 ギルドの受付嬢は、担当する冒険者が決まっている。


 帝国の冒険者は、人属が多いので、大半のギルドの受付嬢は、その人属の冒険者の対応をしているが、エルフのルイゼリーンは、人属の冒険者を担当する事が殆どない。


 それは、エルフと言う事で、人属の冒険者が敬遠する事もあるが、受付嬢の派閥にエルフということで、除外されている為、受付嬢からも人属の冒険者の担当を渡さないようにされている。


 その為、担当する冒険者の数が少ないので、ルイゼリーンのカウンターの前には誰も居なかったのだ。


「これお願いします。」


 アメルーミラは、集めてきた魔物のコアを6個カウンターの上に置く。


 ルイゼリーンは、コアを見てから、アメルーミラを見ると、右手に長い杖を持っていて、その先にはゴムが付いていることから、自分が教えたスリングショットを自作して、魔物を仕留めたのだと思ったのだろう。


 笑顔で答えるのだが、その表情には、どこか困ったように、笑顔が少し引き攣っている様に見える。


 だが、アメルーミラには、そんな事は分からなかった様子で、少し嬉しそうにしている。


「早速、スリングショットを作ったんですね。 杖にスリングショットを付ける発想は無かったのですけど、それは御自分で考えたのですか。」


 アメルーミラは、少し焦りながら答える。


「あっ、これは、偶然です。 たまたま、杖の様な枝しか手に入らなかったので、これに付けてみました。 武器も何も無かったので、棍棒として使えましたし、歩くときの杖にもなったので助かりました。」


 その話を聞きながら、コアの鑑定を行っていたルイゼリーンは、話の内容を逐一聞き逃すことの無い様に聞いていた。


(偶然なのか。 でも、万能な武器を手作りしてから、中級冒険者でもない新人が、初心者のアメルーミラが、これだけの数の魔物を倒したのは、ちょっと、驚きね。 やはり、才能は有ったようね。)


 心の中とは裏腹に、ルイゼリーンは、アメルーミラに応える。


「そうですか、それは、良かったですね。」


(この子は何なの。 あれだけの説明で、あんな武器を作ってしまうなんて。 それよりも、魔物のコアを6個も持ってきたわ。 今日、冒険者登録したのだから、この子はF3ランクなのよ。 それに帝都周辺の魔物のランクを考えたら、F2に上がるのにそう時間はかからないわ。 ちょっと、先が末恐ろしくもあるわね。)


 ルイゼリーンは、考え事をしながら、買い取るコアの値踏みと、その結果をアメルーミラのギルドカードを使って、データベースに登録を行なっていく。


 コアの値踏みが終わって、支払う金額を提示する。


「それで、換金なのですが、このコアは人気が無いので、取引価格が低いのですがよろしいですか。 魔物によっても取引価格が異なるので、ご了承ください。」


 そう言って、中銅貨1枚と銅貨2枚をカウンターの上に出す。


 その金額を見て、アメルーミラは、笑顔になる。


「ありがとうございます。 教えていただいたスリングショットのおかげで、こんなに稼ぐことができました。 これも、・・・。」


 そこまで言うと、アメルーミラは、ルイゼリーンの名前を忘れていることに気がつく。


 命の恩人とまでは言えないが、冒険者として、自信を持たせてもらえた相手の名前を覚えて無かった事に、自分の愚かさを呪ったようだ。


 そんな、アメルーミラを見て、ルイゼリーンは、笑顔を向ける。


「ルイゼリーンよ。 みんなは、ルイーゼって呼ぶわ。 だから、これからは、私のことは、ルイーゼと呼んで。」


 アメルーミラは、少し恥ずかしそうに、頬を赤くする。


「ありがとうございました。 ルイーゼさん。 それと、スリングショットを教えてもらった情報料なのですけど。」


「ああ、私は、あなたの担当受付ですから、そう言ったものは不要なのよ。 あなたが稼げる様になって、ランクが上がってくれれば、それが私の実績として反映されるのよ。 だから、あなたが頑張って魔物を倒してくれれば、私はギルドから給与に上乗せされて貰えるのよ。 だから、情報料なんて不要よ。」


「そうなのですか。」


「ええ、私たち受付嬢は、冒険者の為にあるのだし、あなたが、どんどん稼げる様になれば、それだけ私にも給与の上乗せ額が増える仕組みだから、スリングショット程度の話で情報料なんて不要よ。 それよりも、怪我や命の危険な事だけはしないでね。 確実にコツコツと増やす事が重要なのよ。 大きな仕事をしても、それで怪我をされてしまったら、あなたは稼ぐ事が出来ないでしょうけど、私にも担当する冒険者が減ってしまうと、それだけ、私の収入も減ってしまうのよ。 だから、無理はせず、確実に魔物を倒すことを考えておいてね。」


「はい。 ありがとうございます。」


 アメルーミラは、お礼を言うと、カウンターから去っていく。


 ギルドの玄関のドアを開けようとして、もう一度カウンターを見て、ルイゼリーンに目が合うと、お辞儀をしてギルドを出ていった。


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