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アメルーミラと武器屋の亜人


 アメルーミラは、言われたギルドの北の通りに入ると、武器屋が並んでいた。


 大半の店は剣を扱っている店だった。


 時々、店の窓から中を覗くと中の店員が、睨むようにアメルーミラを見るので、直ぐに隣の店に移動する。


 アメルーミラは、表から覗いて、スリングショットを扱っていそうな店を探すのだが、なかなか表から見ても、スリングショットが置いてあるかまでは分からない。


 一通り、その通りを進むが、スリングショットを見える場所に置いておく店は、見つからなかった。


 冒険者を相手にするので、窓辺に置いてあるものといえば、高価な剣や弓が、外から見える所に置いてあるだけだった。


 また、店番をしているのは、どこも人属の店員か店主と思われる者ばかりなので、アメルーミラには、敷居が高かった様だ。


 諦めかけていたところ、最後の店の中を見ると、店には、アメルーミラと同じ猫の亜人が店番をしているのが見えたので、その店に入ってみることにする。




 アメルーミラは、恐る恐る、店のドアを開けると、店番が挨拶する。


「いらっしゃいませ。」


 アメルーミラと同じ様に、その店員にも頭の横に三角形の耳が付いている。


 髪の毛の色は茶色と白が、縦に入っている髪を、首の後ろで束ねて背中に垂らしている。


 髪の長さは肩甲骨より少し長め程度である。


「今日は、何を・・・。」


 入ってきたアメルーミラをみて、辺な顔をする。


(冒険者の様ね。 でも、その身なりは、何か訳ありの様だけど、私と同じ猫の亜人だわ。)


 すると、奥から声がしてきた。


「フェーミラ。 お客さんか? 」


 店番のフェーミラは、入ってきたのが、自分と同じ猫の亜人だったことで慌てて返事をする。


「いえ、風で、ドアが揺れた様です。 私ったら、おっちょこちょいだから、風で煽られたドアに、挨拶してしまいました。 ちょっと、ドアの確認をしておきます。」


「そうか。 じゃあ、頼んだぞ。」


 フェーミラは、来たお客が、猫の亜人だった事と、着ている服が泥で汚れていた事で、店主が出てくる事を嫌った様だ。


「ごめんね。 うちの店主が出てきたら、あんた追い出されるかもしれないから、小さな声で話してね。」


 フェーミラは、アメルーミラに断りを入れる。


「いえ、助かりました。 人属の方だと、心配だったので、助かります。」


 アメルーミラは、そのフェーミラの態度に好感を持った様だ。


(やっぱり、うちの店に入ってきたのは、私を見たからの様ね。 話なら聞いてあげられるかしら。)


 フェーミラとしたら、久しぶりの同系統の亜人を見たので、少し話をしてみたかった様だ。


 アメルーミラは、泥で汚れた服を着て、武器も帯びて無いので、上手く喋れてないのだ。


「すみません。 気を使わせてしまって、すみません。 実は、私、冒険者なのですが、帝都に来る前に盗賊に遭って、慌てて逃げてしまったので、装備も何も持って無いんです。 それで、このお金で、買える範囲の武器を探しているのですが。」


 そう言って、持っていた中銅貨2枚を見せる。


 アメルーミラとしては、お金は持っているとアピールするつもりで見せたのだが、フェーミラは、この金額では購入できる中古の武器も無いので、困った様な顔をする。


 だが、アメルーミラの目的は、スリングショット用のゴムなので、直ぐにその事を伝える。


「それで、この金額で購入できる武器は無いと思うので、スリングショット用のゴムを購入したいのですが、こちらのお店で扱っていますか? 」


 フェーミラは、少し悩む。


 この金額が、全財産なのか、予算なのか気になる様だ。


(確かにこれなら、スリングショットのゴムは買えるが、どの品質の物を売れば良いか。 でも、スリングショットも持って無さそうなのに、何で予備のゴムなのかしら。)


 自分と同じ亜人のアメルーミラが、帝都で冒険者をしている事に、羨ましく思うが、妬みは無い。


(まあ、いいわ。 彼女には、何か考えがあって、ゴムだけを買いにきたのでしょうから、一番良いのを選んであげるわ。)


 むしろ、応援したいと考えているのだ。


「それなら、予備のゴムが、中銅貨1枚で売ることが出来ますが、それで大丈夫ですか。」


「少しでも、お金は残しておきたいので、それで何とかします。」


 アメルーミラは、ヲンムンが言った、仕事が終われば自由にしてくれると言っていた言葉を信じているのだろう。


 仕事が終わった時までに、少しでも稼いでおき、帝国以外の国へ移動したいと考えているのだ。


「そうですか。」


(やっぱり、彼女の持ち金は、さっきの中銀貨2枚だけの様ね。 それに、少しでも残したいって事は、お金を稼がなければならない理由がありそうね。)


 フェーミラは、カウンターの奥に置いてある箱を取り出し、その中から50cm程のゴムを1本取り出した。


「多分、これが、一番長持ちすると思います。」


 そう言って、カウンターの上に、スリングショット用のゴムを置く。


「ありがとう。」


 アメルーミラは、そう言って、中銅貨1枚をカウンターに置いて、ゴムを受け取ろうとすると、フェーミラが声をかける。


「これ持っていって。」


 フェーミラは、そう言うと、アメルーミラの手を取って、その手の上に2cm×8cmの皮を乗せる。


 皮の両サイドには小さな穴が空いている。


「これの両脇の穴にゴムを通して、革に石とかを挟む様にするの。 そうするとゴムが切れる迄の寿命が伸びるわ。 硬いものが、ゴムに直接当たると切れやすくなるから、この革で石とかを挟む様にするの。」


「ありがとう。 でも、大丈夫? 」


「多分、大丈夫。」


 そう言って手を離す。


「あのー、余計なお世話かと思受けど、この国は亜人には最悪の国なのよ。 せめて南の王国にでも移った方が安全だと思います。」


 そう言われて、今までの事を思い出し、顔色が曇るが、直ぐに笑顔になって、フェーミラに感謝する。


「ありがとう。 旅費が稼げたら直ぐに移動するつもりだから。」


 そう言って、店を出る。


 フェーミラは、アメルーミラを見送るが、帝都周辺の魔物は、スリングショットの予備のゴムだけで何とかなる様な場所で無いことも知っている。


 ただ、だからといって、店の剣を黙って渡すわけにはいかないのだ。


 それが見つかったら、店主から自分が酷い目に合うのだと思えば、アメルーミラにしてあげられるのは、弾丸を固定する為の革を渡す程度しかできなかったのだ。


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