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南門の外 初めての魔物のコア

 

 アメルーミラは、ヲンムンの指示通り、宿を出ると、そのまま南門に行って、冒険者カードと身分証明証を提示して門の外に出る。


 門を出ると右に進み堀づたいに歩く。


 体に土埃を付ける為に、門の外に出たのだが、門の付近で行っていたら、疑われる可能性があるので、可能な限り門から離れる様に移動するのだ。


 ただ、昼前の時間で、対象者に出会えるのは、夕方になると、それまでの時間をどう過ごせば良いかも気になり出した様だ。


 アメルーミラは、不安そうな顔で歩いている。




 帝国の外壁は、南門の辺りは、石造でしっかりしているが、しばらく進むと、それほど高くは設定されてない。


 戦争のためより、魔物の侵入を防ぐ為なので堀と木製の塀を使って飛び越えられない様に設定されている。


 本来は、全てを石造で完成させる予定なのだが、工事が間に合ってないだけで、予算が整えば石造りの外壁工事を再開する様になっている。


 だが、帝国の近隣諸国との国交は良好なので、いつ戦争になって攻め込まれる様な緊迫した状況では無い。


 そう言った国際情勢から予算を城壁では無く別の方面に使用されているのだ。


 これが、隣国と交戦状況だった場合は、この程度の木製の塀ではなく、頑丈な石造の城壁になっていた事だろう。




 アメルーミラは、塀の西の角に差し掛かったとき、人も見当たらないので、地面の土を洋服につけようかと考えていた。


 そろそろ、土を服に付けてもいいかと思って、堀の脇を歩いていると、横から何かが飛び出してくる音に気がついたのだ。


 しかし、反応が遅れて、慌てて飛び出してきたものの前に、両手を出して庇うだけになってしまった。


 左腕に痛みを感じつつよろけて、堀の中に落ちてしまうが、腕の痛みは消えない。


 堀は深く、足が着く様子も無いが、慌てて左手に取り付いた物を右手で掴む。


 握った感覚から、表面を覆う体毛の様な物を感じる。


 水の中ということと、慌てていた事もあって、右手の力加減も分からず、思いっきりの力で握り締めていた。


 左手の痛みは、直ぐにおさまったので、そのま水面まで泳ぎ堀の淵に左手を掛けた。


 右手の感覚が、体毛の様な感じから、硬い硬質の物に変わったのを感じて、恐る恐る水面に手を出して手を開くと、小さな魔物のコアを握っていた。


 襲ってきたのは、魔物だろうと、コアを見てアメルーミラは気付いた様だ。


 小型の魔物に襲われ、水に入った時に握った力で、魔物を圧殺していたのだ。


 偶然とはいえ、初めての魔物のコアを手に入れたのだ。




 魔物のコアを見て、ギルドで聞いたルイゼリーンの言葉を思い出す。


(魔物のコアはギルドが買い取ってくれる。 自分が手に持つコアはお金になる。 さっきの受付嬢がそう言っていたわ。)


 恐怖もあるが、魔物のコアを手に入れた事で、幾らかのお金が手に入ると思い、魔物のコアをポケットに入れると、両手を堀の淵に掛けて堀からでる。


 空腹と、堀を上るのに力を使ってしまった事で、堀の脇に大の字になって仰向けになって寝転んで荒い息をする。


 あまりに無防備な格好ではあるが、今の、偶然による戦闘と、堀から上がるときの体力消耗、それと空腹がその無防備を許してしまった。




 息を整えていると、ガサガサと音がするので、慌てて、うつ伏せになって耳を澄ます。


 濡れた服に腹部も背中も土が付着する。


 耳を立てて、音に集中する。


(音はまだ遠い。)


 うつ伏せ状態では、魔物を目視出来ない。


(今の様に偶然に魔物を倒す事は無理だわ。 まして、装備も武器も持っていないのだから、魔物を狩るんじゃなくて、魔物に狩られてしまうわ。)


 アメルーミラは悟ると、門の中に逃げた方が良いと考えた様だ。


 周りを確認すると、一番近い門が、今通った南門しか見えないと判断すると、立ち上がって一目散に走る。


 濡れた衣類だけでなく顔にも、髪の毛にも土がついている。


 ただひたすら走ると、南門が見えてきたので、少し速度を落とし、徐徐に歩く。


 滴っていった水も、走り続けた事で、わずかながら乾き、びしょ濡れから湿った程度になった。




 南門に着くと身分証明証のカードと、ギルドカードを見せた。


 その門番は、出る時の門番とは違っていたので、アメルーミラが門の外に出た後に交代したのだろう。


 その門番が怪訝そうな顔でアメルーミラに言う。


「お前、冒険者のくせに、装備も武器も持ってないのか。」


 そう言って訝しむ様にアメルーミラを見る。


 アメルーミラは、疑われていると判断すると、ヲンムンとジューネスティーン達と接触する時の話を思い出し、咄嗟にその話をする。


「帝国に来る途中で盗賊にあって、命辛々逃げてきました。 それで装備や武器を買う為に塀の周りの魔物を狩っていて、堀に落ちてしまいました。」


 そう言って、ポケットからさっき拾った魔物のコアを門番に見せる。


「そうか、なら仕方がないな。 だが、この辺りの魔物は、素手でなんとかできる様な魔物じゃないからな。 気をつけて対応してくれ。 後で、死体の処理をさせられるのはごめんだからな。」


 門番は、若い冒険者には、よくある話だと思うと、行って良いぞという様に手を振るので、アメルーミラは、軽く会釈程度の礼をすると、門を通してもらう。


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